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それでもマー君の雄姿を球宴で見れない理由

豊浦彰太郎Baseball Writer

ヤンキースの田中将大は現在のローテーションなら球宴では登板しない可能性が高い。パレードやセレモニーのみの参加になるだろう。これは規定によるもので田中の責任ではないが、なんとも残念だ。個人的には「出場できない選手は球宴に来る必要はない」と思う。

田中は現地28日のレッドソックス戦に先発。好投むなしく3敗目(11勝)となったが堂々の9回完投。デビューからの連続クオリティスタートは16試合に伸びた。現在の勢いなら、今季のサイ・ヤング賞受賞の可能性も十分だし、7月15日にツインズの本拠地ターゲット・フィールドで開催されるオールスター・ゲームに選出されるのはほぼ間違いない。

しかし、前述の通り登板はないだろう。現在のローテーションなら(もちろん故障者の発生や雨天中止などにより変更される可能性はあるが)、田中の球宴前最終登板はチームの前半戦最終の13日のオリオールズ戦となるからだ。MLBの規定では前半最終戦に先発した投手は球宴で登板することはできない。昨年の岩隈久志もそうだった。

私はその規定には反対だ。こういう規定も要因になって1試合のみの球宴のために信じられない数の選手が集まることになる。昨季を例にとると78人!もロースターに名を連ねている。そのうち出場したのは55人のみ(それでも多いが)で、単に見ていただけの選手が17人もいた。その中には岩隈のように規定で登板できない投手や、ダルビッシュ有のように故障で出場しないことを事前に明言した選手が計10人も含まれていた。

実はオールスター・ゲームの視聴率は低下を続けている。01年の11.0%を最後に翌年から10%未満の推移となり、7.5%だった10年以降は6.9%(11年)、6.8%(12年)と3年連続で史上最低を更新した。13年は6.9%だったが、これを「上昇に転じた」と論ずるのは適切ではないだろう。

バド・シーリグ・コミッショナーは今年の5月に「メジャーリーグは黄金時代にある」と語った(過去にも何度か同様のコメントを発している)。たしかに、観客動員も各球団が地元テレビ局と結ぶ放映権料もうなぎのぼりだ。しかし、そのトレンドから球宴は(少なくとも視聴率で判断するなら)取り残されている。それには多くの要因があるが、やはり「権威性の失墜」は見逃せない。そしてその理由の一つが、選出選手数の多さだろう。多くの選手が選出されることにより喚起されている需要もあるとは思うが、価値は希少性とともにある。

その観点からも、怪我でプレーできない選手は来る必要はないし、日曜日に登板した先発投手もそれでも球宴に投げる気があれば参加、そうでない者は「来なくて結構」とすべきではないか。球宴改革はこのあたりから着手して欲しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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