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生まれつきの赤あざ(単純性血管腫)に週1回のレーザー治療が有効 - 早期治療のメリットとは

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【生まれつきの赤あざ「単純性血管腫」とは?】

単純性血管腫は、別名「ポートワインステイン」とも呼ばれ、生まれつきの赤いあざの一種です。低流量の先天性血管奇形で、孤立性の病変として現れることが多いですが、まれに症候群の一部として現れることもあります。

未治療の場合、経過とともに淡いピンク色から濃い赤紫色に変化し、あざの部分の皮膚が分厚くなったり、皮膚の下の組織が盛り上がってきたりすることがあります。そのまま放っておくと、ぶつぶつとしたイボのようなものや、化膿を伴う肉芽腫と呼ばれる赤く盛り上がった塊を形成し、出血を繰り返すこともあるのです。

【パルス色素レーザーによる早期治療の有効性】

米国では、パルス色素レーザー(PDL)が単純性血管腫の標準治療とされています。PDLは肥厚した病変や増殖性結節の治療には効果が低いため、早期の斑状期に治療を開始することが重要です。

ニューヨークのLaser & Skin Surgery Centerの医師らは、生後6ヶ月未満の乳児10名に対し、週1回のPDL治療を行いました。その結果、2ヶ月時点で7名(70%)が著明改善(76~95%の消退)または完全消退を達成。残る3名も追加治療により著明改善に至ったそうです。

従来は2~6週間隔の治療が一般的でしたが、今回の結果から、週1回という短い間隔でPDLを照射することで、より迅速かつ高い治療効果が得られる可能性が示唆されました。

【早期治療のメリットと課題】

生まれつきの赤あざは、放置すると精神的苦痛にもつながります。記憶が定着する前の乳児期に、短期集中でPDL治療を行うことで、患者のQOL向上が期待できるでしょう。

ただし本研究は症例数が少なく、比較対象群がないため、週1回治療の優位性を断言するには限界があります。また、長期的な再発リスクも不明です。より大規模な比較研究と長期経過観察が求められます。

さらに、一般的な皮膚疾患との鑑別も重要です。単純性血管腫は、乳児血管腫や他の血管奇形との区別が難しい場合もあります。確定診断には、皮膚科専門医による慎重な視診が不可欠と言えるでしょう。

参考文献:

Bajaj S, Tao J, Hashemi DA, Geronemus RG. Weekly Pulsed Dye Laser Treatments for Port-Wine Birthmarks in Infants. JAMA Dermatol. Published online April 17, 2024. doi:10.1001/jamadermatol.2024.0293.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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