冬になると、二の腕の外側のざらざらが気になる方に。
二の腕(上腕部が正式名称です)の外側が、ザラザラした、さめ肌のような皮膚になることがあります。
冬に悪化しやすく、中学生や高校生に特に起こりやすい症状なので、小児科医のわたしも相談されることがあります。
この『二の腕の外側、肩や太ももの外側とかそういった擦れやすいところにできるさめ肌のような皮疹』のことを、『毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)』といいます。
今回は、『毛孔性苔癬』に関して、簡単に解説してみましょう。
二の腕の外側がさめ肌のようになる『毛孔性苔癬』とは
毛孔性苔癬は、毛穴に一致して1~3mmぐらいの大きさで盛り上がったような皮疹ができ、触ってみるとザラザラとした手触りになる皮疹のことで、二の腕の外側や太ももの前側によくできます[1]。
家族に持っているひとが多いなど、遺伝性がある程度あることがわかっています。
そして軽症のひとも含めると、日本の統計では10歳代の人が34.1%、20才代が47.8%、30歳代が10.1%にあったという研究結果があります[2]。
すわなち、年齢にともなってだんだん改善する方が多いようです。
女性が9割近いとされていますが、これは女性に多いというより、男性は受診されないために統計の数字に現れてこないための可能性があります。
アトピー性皮膚炎や肥満のある方、そして冬に多くなる
一般的に、皮膚が乾燥しやすいアトピー性皮膚炎がある方や、皮膚が擦れやすい肥満の方の方も毛孔性苔癬を起こしやすいようです。
私は専門の関係でアトピー性皮膚炎の方を診察することが多く、そして冬に悪化する傾向があるため、この症状を尋ねられることが多いのでしょう。
毛孔性苔癬の治療は?
一般的には積極的な治療は必要ないとされてはいるのですが、外見が気になる思春期に外から見える場所に現れるので気になる方も多いでしょう。
あくまで私は小児科医なので、皮膚科的な専門的な治療までは難しいですが、毛孔性苔癬は、角質という皮膚の一番表面の部分が過剰に作られるという角化症という病気です。
ですので、角質を柔らかくする作用がある外用薬を使うことが多いです[3][4]。
角層を柔らかくする作用がある外用薬として、一般的に『尿素軟膏』が使われます。尿素軟膏は、商品名であればウレパール、パスタロン、ケラチナミンなどが挙げられます。
サリチル酸ワセリンという外用薬も使われることもあります。
これも角層を柔らかくするような薬ですが、少し皮膚に刺激感が強かったりするので、子どもには使いにくいかもしれません。また、アトピー性皮膚炎の悪化に働くことも心配されます。
これらの外用薬を1日に数回たっぷりと塗っていくとある程度良くなってくる方がいらっしゃいますが、元々遺伝性もあるような症状ですので、また悪くなる方も多くなります。
皮膚科では、専門的な治療としてケミカルピーリングという、角層を削るような処置をされることもあるようです。
さいごに
今回は、二の腕の外側にさめ肌のようなざらざらができる病気、毛孔性苔癬に関してお話しました。
冬に特に増えますので、もしご心配であれば皮膚科の専門医にご相談くださいね。
この記事が、なにかのお役に立つことを願っています。
この記事は、筆者が音声メディアVoicyで2022年1月19日に放送した内容を、文字起こし・加筆・修正して作成しました。
参考文献
[1]小児科診療. 2015;78(11):1493-1496.
[2]皮膚. 1981;23(2):197-205.
[3]日本臨床. 1991;49(増刊 最新薬物療法manual(下)):1122-1124.
[4]小児科診療. 2019;82(11):1603-1606.