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知っているようで知らないドイツの街(3) 来年建都800周年を迎える港町ロストックの魅力探訪

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
夏の恒例行事ハンザセイルは大好評(c)Fotoagentur Nordlicht

バルト海から内陸に遡った街ロストックは、メクレンブルク・フォアポンメルン州にある人口20万人ほどの旧東独最大の港湾都市。日本ではあまり知られていないロストックの魅力とは?

ヴァルノウ川沿岸から眺めるロストック旧市街・中ほどに見えるのはマリエン教会(C)Hansestadt Rostock _Fotoagentur Nordlicht
ヴァルノウ川沿岸から眺めるロストック旧市街・中ほどに見えるのはマリエン教会(C)Hansestadt Rostock _Fotoagentur Nordlicht

中世後期、欧州の経済圏を支配したハンザ同盟の需要な地点として、バルト海地域の貿易で栄え発展を遂げたロストックは、港町独特の雰囲気を持ちつつ、長い歴史や伝統を誇る街だ。

旧市街の魅力

ロストックを知るには、まず旧市街を探訪するのが一番手っ取り早いだろう。旧市街は、東西1,5キロ、南北1キロのこじんまりとした地区で、一日でも十分に散策できるからだ。ここでは市庁舎、ノイアー広場、市庁舎、聖マリエン教会など、歴史ある建造物をじっくり見学したい。

旧市街はヴァルノウ川の河口から15キロほど離れた下流地点に位置するため、海辺の街と言う雰囲気はあまりなく、ハンザ都市のイメージとは少し異なるかもしれない。とはいえ、港町として栄えた中世の魅力を多く残している。

7本の塔が目印のピンクの市庁舎。同舎前ノイヤーマルクトは市民の憩いの場(c)TZRW_Joachim Kloock
7本の塔が目印のピンクの市庁舎。同舎前ノイヤーマルクトは市民の憩いの場(c)TZRW_Joachim Kloock

まずはロストック中央駅から路面電車に乗って、3駅目のノイヤーマルクトで下車。観光はこの広場に面する市庁舎からスタートしたい。絢爛豪華な切妻屋根の市庁舎は、外観も素晴らしいが、舎内1階(日本式)では展示会が催されていることもあるので、覗いてみるのもいいだろう。

クレペリナー通りの市立図書館は見事なレンガ造り(c)norikospitznagel
クレペリナー通りの市立図書館は見事なレンガ造り(c)norikospitznagel

市庁舎前のマルクトでは月曜から土曜日まで野菜や肉、魚、生花などのマーケットが開催されている。ここでドイツソーセージやハムなどを挟んだパンを口にすれば、胃も心も満足すること間違いなしだ。

ロストックで目にする建築の特徴は、ゴシック様式のレンガ造りといわれる。かって北ドイツ地方では、石は貴重な建材だったため、レンガを多く用いたという。

例えば、ロストック市立図書館。15世紀の牧師館だった後期ゴシックのレンガ造りは、歴史の重みを感じさせる華麗な建物だ。

旧市街には三つの大教会がある。その一つは高さ117メートの塔が目印聖ペトリ教会。ここの展望台に登れば、ロストックの街並みやバルト海が見渡せる。

二つ目のニコライ教会は、音楽ファンにはお薦めのスポット。ここでは定期的にコンサートを開催しているので、時間が上手く合えば是非どうぞ。

市中心部にあるマリエン教会堂内の中世天文時計は今も時を刻んでいる(c)norikospitznagel
市中心部にあるマリエン教会堂内の中世天文時計は今も時を刻んでいる(c)norikospitznagel

三つ目はマリエン教会。市庁舎の向かい側に見えるレンガ造りの同教会は、ロストック最大で最も美しいと言われる13世紀頃から400年に渡り修復されてきた様々な建築様式が特徴だそう。

マリエン教会で見逃せないのは、1472年製の歴史を刻んだ豪華な天文時計。特別許可を得てこの時計を撮影したが、画像で見ただけでもうっとりするに違いない。

オリジナル時計の前ではしばしたたずんで見入る訪問客が絶えなかったが、静寂な堂内でこの時計を目のあたりにすれば、当時の職人の高い技術に思わずため息が出るほど感激することだろう。

ロストックは大学都市としても有名な街で1万4千人ほどの学生が同市周辺で生活している。同大学は2019年、創立600周年を迎える。ヨアヒム・ガウク独大統領は、ここで神学を学んで牧師になり、その後2012年3月、連邦大統領に選出された。ガウク独大統領任期は、ご本人の希望により今年3月18日まで。

ルネサンス様式建築のロストック大学は北欧最古の歴史を誇る(c)Frank Hormann_nordlicht
ルネサンス様式建築のロストック大学は北欧最古の歴史を誇る(c)Frank Hormann_nordlicht

ノイアーマルクトの市庁舎から西に伸びるクレペリナー通りは、カラフルな建物や美しい切妻屋根の落ち着いた建物が立ち並び、活気に溢れている。

大学広場界隈のクレペリナー通りは人だかりが絶えない歩行者天国(c)norikospitznagel
大学広場界隈のクレペリナー通りは人だかりが絶えない歩行者天国(c)norikospitznagel
市壁の名残リクレペリナー門をくぐると旧市街へ続く(c)norikospitznagel
市壁の名残リクレペリナー門をくぐると旧市街へ続く(c)norikospitznagel

旧市街を囲む市壁の名残りシュタイン門やクレペリナー門も見逃せない。高さ54メートルの城壁門クレペリナー門は、なんと6階建て。

今は都市防衛糀を展示する都市歴史集会センターになっている。

クレペリナー門の界隈や大学広場前から市港まで、個性的な歩行者天国が設けられている。新鮮な魚介類や国際的な名産品販売店、カジュアルなレストランやバー、カフェなどが軒を連ねる市民に人気のエリアだ。

バルト海のリゾート地ヴァルネミュンデ

ヴァルネミュンデ駅から左折すると徒歩で数分、潮風たっぷりのリゾート地に到着(c)Angelika Heim
ヴァルネミュンデ駅から左折すると徒歩で数分、潮風たっぷりのリゾート地に到着(c)Angelika Heim

ロストックからSバーンで20分程で到着するヴァルネミュンデは、13世紀頃から漁業の村として発展し、19世紀以降には保養地となった漁村の趣が潮風と共にたっぷりと感じられる港町だ。

水着着用、ヌーディスト用、犬用などのビーチを提供するここの海水浴場は、特に7月から8月にかけて周辺の住民だけでなく観光客も続々と集まる話題のスポット。

遊歩道フェルレーク沿いにはファッションやお土産店、コーヒーショップや鮮魚のフライを挟んで提供するパンなどの店がところ狭しと並んでおり、みるだけでも楽しい一角だ。

ヴァルネミュンデから北欧へフェリーで行くこともできるのがこの港町の魅力のひとつ。港に頻繁に出入りする大型船やヨットのレガッタを眺めるだけでも、ここに来る価値がある。

豪華客船の停泊地としても知られる異国情緒たっぷりの港(c)Hansestadt Rostock _Fotoagentur Nordlicht
豪華客船の停泊地としても知られる異国情緒たっぷりの港(c)Hansestadt Rostock _Fotoagentur Nordlicht

この港町の歴史を知るのに最適のヴァルネミュンデ郷土博物館は、1767年に建てられた漁師の家だった建物。240平方メートルのスペースに、ヴァルネミュンデの漁師や船員、水先案内人の生活様式や労働に関する展示が行われ、海水浴場としての発展が紹介されている。

ロストックで発明された屋根付きビーチチェアの立ち並ぶ海岸(c)TZRW_Joachim Kloock 
ロストックで発明された屋根付きビーチチェアの立ち並ぶ海岸(c)TZRW_Joachim Kloock 

また海岸にある高さ37メートルのヴァーネミュンデ灯台は今も灯台として機能しており、上に行くとヴァルネミュンデを一望することができる。

Am Strom53番地・ムンクハウスは緑の前面が目印(c)norikospitznagel
Am Strom53番地・ムンクハウスは緑の前面が目印(c)norikospitznagel

ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクは1907年5月から08年10月までヴァルネミュンデのこの家に滞在した。

現在、この家はムンクハウスとして芸術家のアトリエ、集会所、現代美術の展示会場として利用されている。

ムンクは1902年から08年の間、ドイツで生活した。ミュンヘン、ベルリン、ワイマーなどで過ごし、ドイツで最後の逗留地がここヴァルネミュンデだった。ムンクハウスはノルウェーとドイツ両国の寄付により1998年、大改修がなされ文化財保護指定建造物となった。

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ロストックは2018年、建都800年を迎える。さらに2019年はロストック大学600周年記念を控えており、様々なイベント準備が着々と進んでいる。ハンザ同盟都市、そして大学都市としてどのように発展を遂げてきたのか、この機会に歴史と活気の溢れるロストックとヴァルネミュンデを訪ねてみたい。

冒頭の画像説明

ハンザセイルは、ロストックとヴァルネミュンデにて毎年8月に開催されるこの地方最大のイベント。大小のヨットやクルーズ船、博物館船やクラシック線など300隻に上る船舶が集結するバルト海岸部屈指の祭典である。今年は8月10日から13日まで開催される。

取材協力

歴史古都連盟

ロストック市

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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