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アスレチックス、オークランド50周年記念の無料試合は単なるキワモノ企画ではない

豊浦彰太郎Baseball Writer
マックスウェル捕手の人種差別反対を訴える国歌演奏中の起立拒否も歴史の一コマだ(写真:ロイター/アフロ)

オークランド・アスレチックスからこんなメールが届いた。

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4月17日の地元でのホワイトソックス戦は、同球団のオークランド移転50周年を記念して無料試合として開催される。ぼくはそのゲームの無料チケットを持っているのだけれど、「ホントに見に来ますか」という問いかけだ。

本拠地のオークランド・コロシアムはいつもガラガラなのだが、この日だけは別だ。球団HPで申し込みを受け付けた無料チケットは、日本でも飲食店で話題の?No showを考慮してキャパシティの4倍近い20万人分が発行されているからだ(申し込みはすでに打ち切られ、HPは現在ウェイティングリストへの登録を呼びかけている)。そんなに濫発してどうするの?と思っていたら、それを個別フォローで精査しようということのようだ。

もちろんぼくは直ちに「1名で参加」と返信した。球団は参加意思を表明した顧客の実際の来場率を弾き出しているのだろう。それに応じて、現在ウェイティングリストに登録されているファンのうち何割かが「来場いただいても結構です」に移行するのだろうから、行くなら行く、行かないなら速やかにリリースしますと回答をする、というのは無料チケット保有者の義務だ。

本来、ぼくは無料チケットというプロモーションには懐疑的だ。1940〜70年代にインディアンス、ブラウンズ(現在はオリオールズ)、ホワイトソックスでオーナーを務め、突拍子も無いプロモーション策(その中にはア・リーグ初の黒人選手採用という画期的なものから観衆に采配を委ねるという荒唐無稽?なものもあった)で知られるビル・ベックですら「チケットの無料配布だけはやってはいけない」と語った。しかし、チケット販売が主たる収入源だったベックの時代とは異なり、テレビ放映権やMLB内の収益配分、スポンサーシップやグッズ販売など収入源が多様化した現代では、とにかく話題になることが中長期的には必要だ。「空席はホットドッグを買わない」という言葉もある。ここはこのプロモーションの成否を見極めたい。

球団が個別にヒアリングを掛けてくれているにしても、ぼくが首尾よく入場できる保証は必ずしもない。場内の盛り上がりは?混乱は?と怖いもの見たさも含め興味は尽きない。

もちろん、このゲームを無料試合という単なるキワモノ企画のみとして捉えてはならない。1972〜74年のワールドシリーズ3連覇や89年の世界一という栄光の反面で何度も繰り返されたスター選手の切り売りや記録的な不入りという悲劇、マネーボールの台頭、富裕層も多い対岸のジャイアンツへのアンチテーゼとしての労働者層に支えられた球団としてのアイデンティティ(あくまでイメージの問題だ)、老朽化する本拠地と出口の見えない新球場問題というこの球団の永遠のテーマである「約束の地」探求など、あまりに濃いオークランドでの50年の歴史を讃え、悔い、愛おしむ記念試合なのだ。おそらく、17日は球場内外で球団の歴史を飾った多くの元選手たちが姿を現し、記念セレモニーが催されるはずだ。

ぼくがメジャーリーグに興味を持ったのは70年代初頭で、オークランド・コロシアムは当時から存続する数少ない本拠地球場だ。それがフェンウェイ・パークやリグレー・フィールドのような記念碑的な建造物でもなく、全球団中最低の本拠地と揶揄されながらでの超寿命であることに何とも言えないシンパシーを感じる。

そんな訳で1泊3日の超弾丸スケジュールで渡米する。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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