能登半島地震 「大切なのは経済を止めないこと」神田の老舗・近江屋洋菓子店の取り組みに胸アツ
能登半島地震からちょうど1か月目の2月1日、東京・神田にある老舗洋菓子店『近江屋洋菓子店』がエコバッグの予約販売を開始しました。被災地の復旧・復興に向け、官民問わずさまざまな支援策を打ち出しているなか、近江屋さんの取り組みがとても興味深いので、紹介いたします。
その前にまず、政府による支援策で注目されている「北陸応援割」について。トラベルジャーナリストとして、筆者はやはり被災地の観光産業のことが気になります。観光庁が北陸4県(石川、富山、福井、新潟)を対象に、1泊以上の旅行(宿泊)に対して割引がなされるプログラム。最大で代金の50%(上限あり)を支援してもらえるとあって、なかなかお得です(開始日は3~4月になる見込み)。
えっ? 被災地に旅行⁇ と思うかもしれませんが、家屋倒壊など深刻な被害があった場所は一部であって、北陸地方すべてが壊滅的な状況に陥っているわけではありません。被害が軽微であった場所では、人々はいまも私たちと同じように経済活動を伴う”普通の生活”を送っています。とはいえ、被災し大切な人を失った方、避難所での生活を余儀なくされている方々の様子を報道で知るにつけ、「被災地でレジャー旅行をするなんて不謹慎では」という気持ちになり北陸旅行することを自粛してしまう人が多いことが懸念されます。東日本大震災では被災地だけでなく、日本全国がこうした自粛モードに陥り、経済が一時的にストップしてしまうという”二次災害”が起きました。地震の影響がなかった人々は経済活動を続けるべきであり、被災エリアであっても被害が軽微で営業可能な企業であれば、利用することでむしろ被災エリアの復興に一役かうことにもなります。大切なのは経済活動を止めてしまわないことなのです。
同じように、近江屋洋菓子店のチャリティバッグも「経済を止めない」がテーマとなっていて、1月7日にはいち早くチャリティバッグを製造・販売することを発表。デザインから生地製造まで石川県内の企業で行いたいと募集をはじめました。ここで発生する材料費や作業料などは適正価格を支払い、バッグの売上はすべて義援金として寄付する計画です。
5代目店主・吉田由史明氏によると「私自身に能登半島と直接的な繋がりはございせんが、同じ世界に住むものとして強い繋がりを感じています。
東日本大震災の際、当時私は大学生で、できることが少なく葛藤を感じていました。あのようなことが再び起こらなければいいと願いつつも、もしあった場合には力になりたいと常々考えておりました」とのこと。素早い決断と対応だったのにはそんな想いがあったのですね。吉田氏の発信に呼応し主に石川県の企業が集まり、エコバッグ(1,650円)が完成。2月1日から同店のオンラインショップにて予約を受け付けています。
※店舗での予約・販売はありません
予約受付開始の初日だけで1000以上の予約があったといい、5日の月曜日には2000を超えるなどなかなかの反響。4月末の時点で一度製造数を確定し、5月から順次発送の予定となっています。
また、吉田氏は石川県内でこのエコバッグを提示するとサービスや特典を得られる仕組みができないかと、参画企業を募集したいと考えているそう。「ひとりでも多くの人々に石川県に行っていただければ」と、継続的・かつ広く支援できる方法を模索しています。もっと拡散できるよう、バッグを販売してくれる企業も募集中です(連絡先:omiyayougashiten@gmail.com)。
制作の段階から被災エリアの企業を直接サポートし、さらに購入者が増えればその分現地への義援金も増える。加えて、石川県に旅行しようかな、というモチベーションアップにも貢献できるかもしれないエコバッグ。「北陸応援割」と一緒に利用するのもよさそうです。
<近江屋洋菓子店>
住所:東京都千代田区神田淡路町2-4
電話:03-3251-1088
営業時間:月~土/9:00~19:00
日・祭日/10:00~17:30