富良野は”第二のニセコ”なのか? 富良野初の外資系ホテルの挑戦
「第二のニセコ」を探せ!?
国内外の旅行者に大人気の”勝ち組”デスティネーションといえば北海道。中でもニセコは戦略的に海外富裕層にターゲットを絞り込み、富裕層に向けた不動産投資物件の著しい開発、そして外国人向けに特化した施設の数々が観光客にもアツい視線を注がれていることで知られています。シーズンによってはまったく宿の予約が取れないというオーバーツーリズムに陥る人気ぶり。物価も地価もぐんぐん上がっているため、観光客にも不動産投資家にも「第二のニセコ」を求める声が高まってきています。
そこで注目されているのが、富良野。ファーム富田のラベンダー畑が有名で、一面に紫色のじゅうたんを敷き詰めたようなあの絶景は”北海道の景色”の代表格といっても過言ではないでしょう。ラベンダーで有名ではありますが、富良野にはスキー場もあり、その質の高さはアルペンワールドカップほかさまざまな国際大会が開催されていることからも明らか。国際基準の施設を備え、スキーリゾートとして国際的に知られた存在です。つまりグリーンシーズンとスノーシーズンと、1年のうち2度にわたってトップシーズンがある富良野は、確かにかなりのポテンシャルがあります。
外資系ホテル第一号は?
しかしながら、富良野のナンバーワン産業は依然として農業。人口の多くを農家が占めていることもあり、自然景観を残し富良野らしさを失わずにいます。
そんな富良野に昨年12月に初めての外資系ホテル『Nozo Hotel』が誕生。スキーリフトまで歩いて3分程度という好立地にある、かつてあった別のホテルをリノベーションしてできたこぢんまりとしたホテルです。ノゾホテル? 知らないなぁという人が多いでしょうけれど、それもそのはず。マレーシア資本の同ホテル、なんとこの富良野が第一号の展開なのだそう。この先、ほかの土地にチェーン展開する予定ではあるものの、「Nozo Hotel」と名を冠したホテルは今のところ世界にこの1軒のみなのです。
いよいよ外資系ホテルが参入してきたことにより、富良野は「第二のニセコ」への道を歩み始めるのか? そのような視線を浴びつつ2年目を迎えたNozo Hotel。実際に泊まってみると――。
シンプルでモダンな4つ星ホテル
まず、Nozo Hotelはラグジュアリーホテルではなく、わりとシンプルでカジュアル。全78室のブティックホテルで、部屋タイプは8つのカテゴリーがあり、ひとり旅からファミリーまで幅広い層に対応可能。レストランにバーラウンジ、宴会場やキッズルーム、ジムや大浴場などを備え、ホテル内だけでも充実した時間が過ごせそう。こういうラグジュアリーホテルではない、でもアッパースケールなホテルって近年のブームかも。ハードを飾り立てるよりも隅々まで行き届いた細かなサービスを提供することで居心地のよさを追求しています。
土地の魅力を地域とともに発信
……と、外国リゾートっぽさと日本らしいサービスを併せ持ったホテルという印象のNozo Hotel。スタッフもミックスカルチャーで、日本語はもちろん英語や中国語、インドネシア語などさまざまな言語で対応可能な態勢を整えています。オープンしたての昨年の冬は95%が外国からのゲストだったといいますから、まぁそこは当然でしょう。
ただ、Nozo Hotelのちょっと違うところは、地域一体となって富良野の魅力をゲストに伝えようとしている点です。前述したとおり、富良野の住民の多くは農家で、北海道でも有数の農業地帯でもあります。そんな富良野らしさをホテル内で体験できるよう、ファームトゥテーブルのダイニングを備え、朝食とディナータイムに地産の食材をふんだんに味わうことができるのです。
なにがすごいって、これ本当に「Farm to table(農家からテーブルへ)」で、ホテル開業時に経営陣はじめスタッフが自ら近隣の農家を訪ね、ホテルへの食材提供をお願いしてまわったということ。地元の農家から直接、農作物を買い取りしていて、まさに採れたてを提供できる利点だけでなく、農家を支援することもできるのが、大きなポイントです。
結論:富良野は富良野!
それだけでなく、Nozo Hotelでは周辺でのアクティビティを望むゲストに、積極的に地元でできる農業体験を紹介しています。今回筆者が体験したのは、ウレシパ・フラノが提供する富良野の一次産業体験。スノーシーズンにも地元農家さんが行っている農業アクティビティを体験できるというのがおもしろいところで、地元のサプライヤーさんたちの協力を得ることで単なる観光農園訪問ではない、独特な体験を提供しています。
こうした体験を経て感じる富良野は、まさにDown to earth(地に足がついている)。これが富良野。というその姿をホテルからも発信していて、訪れるゲストにより楽しい体験と、土地への理解を深めるきっかけを提供しています。
地元のかたから、「”ニセコがいっぱいだから富良野に来た”という観光客も多い」というお話をうかがいましたが、広大な農地、そこで働く人々と触れ合い、採れた作物をいただくことによって、富良野はニセコの代わりなどではないと実感することができました。
自然に囲まれ、シンプルでのんびりしているのが富良野。「そんな富良野らしさを、ゆったりリラックスして楽しんでほしい」という”望み”をもってつけられたのがNozo Hotelの名前の由来だと、同ホテルの運営を担当するNJWインターナショナルCEO ナタリア・ウィルソン氏。旅行業界が常に直面する、地元と旅行者との隔たりを埋める。そんなミッションをも念頭に置いた事業展開に、ぐんと好感度が上がります。
富良野に参入した外資系ホテル第一号は、土地への敬意と愛情をもって応援するホテルだったというのにちょっとした安心感。「第二のニセコ」などではなく、富良野は富良野です! Nozo Hotelの提供するアクティビティを通して、そんな強いメッセージを受け取ったような気がします。
ノゾホテル
北海道富良野市北の峰町14-38
info@nozohotel.com
+81(0)167-23-1088
※11月までキャンペーン料金あり(素泊まり1人税サ込14,850円~)