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プーホルスの「再来」が現れ、ヌートバーは外野のポジションを奪われる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーダン・ウォーカー(セントルイス・カーディナルス)Feb 26, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今から22年前の春、セントルイス・カーディナルスに在籍するマイナーリーガーだったアルバート・プーホルスは、ノン・ロースター・インバイティ(キャンプ招待選手)として、メジャーリーグ・レベルのスプリング・トレーニングに参加した。

 当時のプーホルスは21歳。1999年のドラフトで、13巡目・全体402位に指名され、カーディナルスに入団した。プロ1年目の2000年は、AとA+とAAAでプレーし、19本のホームランを含む長打67本を打ち、打率.314と出塁率.378、OPS.920を記録したが、AAAの出場は3試合に過ぎなかった。プロ2年目の2001年は、スプリング・トレーニングのパフォーマンスにかかわらず、AAAで開幕を迎えることになっていた。

 けれども、プーホルスは、カーディナルスの「6番・レフト」として、開幕戦のスターティング・ラインナップに名を連ねた。その半月後に、スポーツ・イラストレイテッドのトム・バードゥッチが発表した記事のなかで、当時のGM、ウォルト・ジョケッティはこう語っている。「今年、彼をチームに入れるつもりはなかった。でも、毎週、スプリング・トレーニングでどの選手を解雇あるいは降格させるかの会議を開くたび、今週はまだ彼をカットできないってみんなが口を揃えた」

 それでも、スプリング・トレーニングの最終日には、AAAへ送られることが決まった。ところが、ボビー・ボニーヤが故障に見舞われ、プーホルスは開幕ロースターに残った。そして、殿堂への道を歩み始めた。2001年から2010年まで、プーホルスは、どのシーズンも出塁率.390以上とOPS.950以上を記録した。2001年からのシーズン30本塁打以上は、2012年まで継続した。

 今年のカーディナルスでは、22年前のプーホルスのように、ジョーダン・ウォーカーが開幕ロースターに入り、スーパースターとなっていくかもしれない。

 ウォーカーは、2020年のドラフト全体21位。今年はプロ3年目だ。5月に21歳の誕生日を迎えるので、シーズン年齢(6月30日時点の年齢)は、2001年のプーホルスと同じ。ウォーカーとプーホルスは、どちらも右打者で、もともとは三塁手という点も共通する。カーディナルスの三塁にはノーラン・アレナードがいるため、昨年の夏から、ウォーカーは外野を守っている。

 昨年、ウォーカーは、AAで119試合に出場し、19本塁打と22盗塁、打率.306と出塁率.388、OPS.898を記録した。ノン・ロースター・インバイティとして参加している、今春のスプリング・トレーニングでは、ここまで7試合に出場し、21打数9安打。ホームランと二塁打を3本ずつ打っている。ホームランのうち、1本は推定飛距離470フィートを記録した。MLB.comのジョン・デントンらによると、オリバー・マーモル監督は、ウォーカーをプーホルスに準えるような発言をしているという。

 ウォーカーがエキシビション・ゲームでどれだけ打っても、アレナードが三塁から外れることはないだろう。ただ、外野の3人は、そこまで安泰ではない。タイラー・オニールディラン・カールソンは、2021年にブレイクしたものの、2022年は不本意なシーズンに終わった。それぞれのシーズンOPSは.912→.700、.780→.695と推移している。今年がメジャーリーグ3年目となるラーズ・ヌートバーは、2021年の出場が58試合、2022年は108試合。シーズンOPSは.739→.788だが、合計しても、まだ500打席に達していない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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