子育て支援・奨学金問題で政策比較-「子どもと若者に冷たい国」脱却できるか?参院選2019
今月21日に投開票される第25回参議院選挙。多くの人々の関心は年金や消費税であろうが、重要な争点はそれらにとどまらない。働き方や格差・貧困、子育て支援、欧州議会選挙では大きな争点となった温暖化対策などの環境問題など、NGOや有志の市民らが各政党や候補者にアンケートを行い、有権者の判断の材料としている。そこで、本稿では、子育て・若者支援についての政策アンケートの結果を紹介する。
○子育て支援策への各党の姿勢は?
みらい子育て全国ネットワーク(miraco)は「子育ての壁にぶちあたる人を1人でも減らしたい!」「日本を『子育てしやすい国』にしたい!」という思いを持った父親、母親達によるネットワークだ。代表の天野妙さんは、かつて自身の子どもが保育園に入れなかった経験があり、匿名の母親がブログで書いた「保育園落ちた日本死ね」という憤りを受けて、待機児童問題を解決したいと、活動を始めたのだという。
みらい子育て全国ネットワーク(miraco)https://miraco-net.com/
miracoは、今回の参議院選挙にむけて子育て支援策についてのアンケートを実施。以下の質問を、各候補者に送った。「幼児教育・保育の無償化」「保育の受け皿の確保への対策」「男の育休の“義務化”について」「子どもの貧困対策」など10のテーマで各設問の選択肢から、最も重視するものを選んでもらう形式となっている*。
*アンケート結果の詳細は本稿末尾を参照。
また、miracoのメンバー達がアンケート結果について、ジャーナリストの堀潤さんとともにTwitterライブを配信。その記録動画は、堀さんのアカウントで視聴できる。
miracoのメンバーの一人は「政治の話をすることが何となくタブー視されている風潮を変えて、もっと政治を身近に思ってもらいたい、という思いで仕事家事育児睡眠の合間を縫って頑張ってます!」と筆者に語った。miracoは、参院選投票日に向け、ハッシュタグ #miraco_cafe を使ってのツイッター上での子育て政策についての論議を行うという。
現在のところ、miracoのアンケートに対し、野党側は比較的、積極的に回答している一方、与党の自民党と公明党の回答率が良くないそうだ。前出のmiracoメンバーは「アンケート公開ページも夜な夜な頑張って作ってます」とのこと。与党側の候補者達は、誠実に回答すべきではないだろうか。アンケート結果の詳細は本稿末尾にまとめた。読者の皆さんにも是非参考にしてもらいたい。
○若者を貧困化させる奨学金問題への対応は?
大学などの高等教育に多額の学費がかかり、奨学金も事実上の学生ローンであるため、数百万円もの借金の返済のため、学生達はバイトに明け暮れ、学業に専念できず、卒業後も返済が生活を重く圧迫する…いわゆる奨学金問題は、若者の貧困化の大きな要因となっている。独立行政法人日本学生支援機構の取り立ても消費者金融並みの厳しさだ。
批判の高まりに政府は、返済の必要のない「給付型奨学金」を昨年から始めたものの、厳しい所得制限や低所得者層の学生達にすら十分行き渡らない規模など、抜本的な対策となっていない。背景には、日本の政治における教育軽視がある。昨年9月に公表されたOECD(経済協力開発機構)のまとめでは、GDP比での教育機関への公的支出の割合2.9%と、比較可能な34カ国の中で日本は前年に引き続き最下位であった。高等教育の学費を政府が負担しているドイツや北欧諸国などと対象的である。
こうした日本の教育軽視の風潮を変えようと、現役大学生達が立ち上げた団体が「FREE 高等教育無償化プロジェクト」だ。
FREE 高等教育無償化プロジェクト https://www.free20180913.com/
FREEは参院選に向け、各候補者にアンケートを送付。「ただちに学費の値下げに踏み出す」「授業料免除枠の拡大」「奨学金制度の抜本的な改善」「授業料減免措置の維持」「学費値上げストップ」のいずれかの2つ以上を政策として掲げる候補を、「FREEマーク候補者」に認定。公式ウェブサイトやSNSで公開している。
(了)
以下、みらい子育て全国ネットワーク(miraco)が行ったアンケート詳細。画像は同団体のウェブサイトから。各選挙区、比例区の候補者ごとの回答はmiracoのウェブサイト上で確認できる。