イエメン情勢緊迫化で、原油と金価格が3週間ぶりの高値更新
中東情勢の不安定化を受けて、原油価格が急伸している。NYMEX原油先物相場は、3月17日に1バレル=42.63ドルまで値下がりし、今年最安値を更新していた。しかし、26日のアジアタイムには一時51.98ドルまで値位置を切り上げ、3月6日以来となる約3週間ぶりの高値を更新している。
中東のアラビア半島に位置するイエメンでは、2011年の「アラブの春」でサーレハ大統領が退陣を迫られ、当時副大統領だったハディ氏が暫定大統領に就任していた。しかし、イスラム教シーア系の派武装勢力であるフーシ(ザイド派)が今年2月には事実上のクーデターに成功、更に3月25日には暫定大統領の拠点である南部都市アデンに進撃し、ハディ氏は大統領宮殿からの退避を迫られている。
イエメンは、疲弊した産油量で辛うじて国内の原油需要をカバーしている状態に過ぎないため、こうしたイエメン情勢が国際原油供給体制に及ぼすインパクトは限定的である。中東にありながら、石油輸出国機構(OPEC)に加盟している訳でもなく、原油市場における重要性は必ずしも高いとは言いがたい。
しかし、イエメンは中東地区におけるサウジアラビアとイランの覇権争いの最前線になっているだけに、今後の状況次第では中東地区全体の原油供給に何らかの影響が生じる可能性もある。サウジアラビアは、イエメンのクーデターの裏ではイランが暗躍していると非難しており、この混乱はイエメン一カ国に留まらない可能性があるのだ。
こうした中、サウジアラビアは日本時間26日午前8時に、イエメンに対する軍事介入を開始したと発表した。この攻撃に際しては、米軍も後方支援を行うと表明しており、原油相場は中東情勢の緊迫化に敏感に反応している。安全資産である金価格も同じく約3週間ぶりの高値を更新しており、これまで水面下でくすぶっていた「地政学的リスク」が一気に表面化した格好になっている。
マーケットでは、イエメン情勢の混乱は早くもピークを確認したとの見方が優勢である。実際に、原油価格も高値からは既に1ドル以上も下落しており、サウジの軍事介入を受けて断続的に値位置を切り上げるような状況にはなっていない。しかし、サウジの介入によってイランの動きが活発化したり、サウジを含めた周辺国でも武装勢力の活動が活発化すれば、原油相場は新たな供給不安に怯えることになる。
イエメン情勢をこのまま沈静化させることができるのか否かは、日本のガソリン価格動向にも大きな影響があることを確認しておきたい。
NYMEX原油先物相場(5分足、3営業日分)
(画像出所:Bloomberg)
COMEX金先物相場(5分足、3営業日分)
(画像出所:Bloomberg)