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ある女性医師が「荒井総理秘書官の発言よりも許せない」ことは?

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
武藤ひめさん(撮影:マツバラミチヒサ)

荒井総理秘書官が、性的少数者や同性婚について記者団の質問に「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「見るのも嫌だ」と発言したことに波紋が広がっている。総理も更迭する意向を示した。

差別的で、断じて許されない発言だと私も思うが、これに関して愛知県名古屋市の繁華街・錦で「ヒメクリニック」の院長をしている武藤ひめさんが今の心境を手記にして寄せてくれたのでそのままご紹介したい。

・・・以下、武藤さんの手記・・・

この報道への注目が集まってる。この発言は、問題となって当然だとは思う…

だけど…私は、もっと嫌な思いをしてきたから…思うことが沢山ある。

荒井秘書官が、なぜ責められるか?それは、ジェンダー問題を否定する発言を口にする出したからだ…

このように口に出してくれる人は、初めから意見が違うとか、争いを避けるために近づかないようにすることができる。

そして、ジェンダー差別を否定しても、ジェンダー問題を抱える人を、面白おかしく扱ったり、無知なメディアが視聴率のために利用しようとしたり…

そんなことに比べれば、荒井秘書官の発言は、差別発言だけど、人の思想は自由だから…

本当は、ジェンダー差別をしてたり、そのことを利益に変えようとして、表立って、ジェンダー差別を口に出さない人たちより、荒井秘書官は、正直な人だと感じる。

過去のNHK紅白歌合戦は、ジェンダー問題を歪んで誇張して表現した。あたかも、ジェンダー問題に取り組んでいる正義のように見せかけて…世間に誤解を与えた。私は、それに激しく疑問を感じて、記事を寄稿した。

私が、激しく記事を書いたあと…ジェンダー問題は、しばらく慎重に扱われていたと思う…

だけど、最近になってまた、当事者への配慮を欠く内容を、よく目にするようになった…

トランスジェンダーの当事者たちは、みんな過去がある。だけど、皆んな、そんな過去が真っさらになるくらいの覚悟というか、道を選んで進んでいる。

自分本来の性別として、普通に生活することを1番にして、沢山の人が新しい人生を歩んでいる。

自分の過去を売りにするようなことは、当事者にとっては大きな屈辱感だったり、新しい人生を歩んでいる当事者への人権侵害にもなるし、それを支える家族や身の回りの大切な人たちが、どんな気持ちでいるか?その周りの家族や身の回り大切な人たちも、トランスジェンダーが新しい人生を送るために、新たな価値観を持って新たな人生をスタートさせているのかもしれない。

人の気持ちや人権を守るためには、他人の好奇心よりも大事にしないといけないことがある。

現に…新たな人生を送っている人たちを応援するのであれば…

過去の生活や性別から…今はこんな風に変化している…って、一見、聞こえは良く見えるけど、そんな興味本位の当事者たちを傷つけかねない…そんな見方ではなくて、現に新しい人生を歩んでいる…その新しい生き方を応援していただきたい…

過去や他人と比べるのではなくて、人それぞれ人種も言語も宗教もポリシーも個性も違うのは、当たり前のことで…ジェンダー問題のことも、そんな当たり前の違いであって欲しい…

最後に…

この荒井秘書官は、正直に口に出したから非難を受けた…口に出さずにジェンダー問題を差別したり、お金儲けに利用したりするような人たちには、たくさん会ってきた。そのたびに、世の中の生き苦しさを感じてきた。

だけど、そう言うことを正直に口に出さない人たちは、非難もされず、当事者たちを傷つけても、誤った表現でも美化して受け止められれば、賞賛される…そこに甚だ疑問しか感じない…

武藤ひめさん(撮影:マツバラミチヒサ)
武藤ひめさん(撮影:マツバラミチヒサ)

以上、武藤さんの手記をそのまま紹介させていただいた。

武藤さんには最近よく、テレビなどの大手メディアから取材依頼があるという。しかし、武藤さんはそのどれも「興味本位でしか描こうとしていないので、憤りを感じる」ということで取材を断っているそうだ。

ジェンダーに関する差別的な発言をする人だけではなく、メディアのジェンダーに対する取り上げ方にも怒りを感じている当事者がいる、ということを真摯に受け止めるべきではないだろうか、と私は思う。

テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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