低調な米雇用統計を受けて、先行き不透明感強まる金相場の考え方
9月6日に発表された8月米雇用統計は、中途半端な内容に留まった。9月17~18日にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見付きの米連邦公開市場委員会(FOMC)開催が控える中、ここで強めに数値が出てくれば、同会合での債券購入縮小から米金利上昇・ドル高・資産価格低下の流れを起点に、金価格に対してはダウンサイド・プレッシャーが強まる可能性が高い情勢になっていた。
しかし、肝心の雇用統計では、非農業部門就業者数の伸びは前月比+16.9万人に留まり、一部で期待されていた+20万人を大きく下回るのみならず、市場予測の+18.0万人にも届かなかった。また、前月分も速報の+16.2万人から+10.4万人まで下方修正されており、「本当に雇用情勢は緩和策の縮小を支持する程に良好なのか」、疑問を投げ掛ける内容になっている。
それでも、9月の緩和縮小の流れには変化が生じない可能性が高いとみているが、850億ドルの債券購入を大胆に削減することが難しい情勢になったことは否めない。まずは50億~150億ドル程度の小幅な縮小に留め、金融市場や実体経済が「緩和モルヒネ」を無くしたことに対してどの程度の禁断症状を見せるのかを慎重に見極めながら、08年から続く量的緩和政策の終了時期を探ることになるだろう。
米金利上昇・ドル高・資産価格低下の流れが大きく修正されるリスクは低い以上、ファンドが金市場における売りポジションを縮小する動きは徐々に限定されることになる。実際、6日に発表されたCOMEX金先物市場の建玉報告(COTレポート)によると、9月3日時点でファンドの売り残高は前週比+1,975枚の7万3,760枚と「増加」に転じている。ファンドの売り残高は7月9日時点の14万3,657枚をピークにその後は7週連続の減少になっていたが、8週間ぶりに増加に転じたことは、ようやく加熱気味になっていたファンド売りのポジション整理が一巡した可能性を示唆している。
ここで米金利上昇・ドル高・資産価格低下圧力を手掛かりにファンドが再び売り込む動きを見せれば、金価格は2ヶ月にわたる調整高を経て、戻り売り再開となる。FOMCに向けての各種米経済指標やシリア情勢などが、緩和縮小開始を支持する内容になるのか、一歩一歩慎重に見極めるステージになろう。
もっとも、原油価格の高止まりが続く中、金市場が独歩安となって急落するような可能性も低い。シリア情勢を背景とした原油価格の急騰局面にはブレーキが掛かった形になっているが、WTI原油が平均で1バレル=105ドル前後に留まる間は、COMEX金先物相場は1オンス=1,300~1,330ドル水準が下値目処になる。緩和縮小議論を背景に各マーケットはボラティリティを増しているが、CRB商品指数は総じて戻り歩調を維持しており、この状況下で購買力指標としての金価格のみが急落するのかは疑問視している。当面の戻り高値を確認した可能性が高まるも、まずは少しずつ売りアクセルを踏む段階になるだろう。