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キアヌ・リーヴス、中国からボイコットされる。勇気ある行動をファンが賞賛

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 リチャード・ギア、シャロン・ストーン、キアヌ・リーヴスの共通点は?

 ハリウッドのビッグスターというのは、もちろんそのひとつ。もうひとつは、中国にボイコットされていることだ。

 この件においてギアとストーンは古株だが、リーヴスは最近加わったばかりの新入り。きっかけは、今月3日、リーヴスがチベットを支援するチャリティコンサートにアーティストのひとりとして出演したこと。今年で35年目を迎えた毎年恒例のコンサートは、ダライ・ラマが創設した非営利団体が主催するもので、リーヴスは、このコンサートの常連だった故アレン・ギンズバーグが書いた詩を朗読したという。

 リーヴスがこのイベントに参加するというニュースが出た1月下旬から、中国のソーシャルメディアには批判コメントが出回っていた。そして本当に彼が出席したとわかった今月、突然にして、中国の配信サービスからリーヴスの出演作がごっそりと消えることになったのである。

 「Los Angeles Times」が報道するところによると、ラインナップから削除された作品は最低でも19本。その中には「マトリックス」「スピード」「恋愛適齢期」などが含まれる(『ジョン・ウィック』は、バイオレンスが理由で中国では公開されていない)。これらの作品が削除されたのが正確にいつだったのかは不明だ。

中国にボイコットされるのはキャリア上、大きなダメージ

 ハリウッドにとって最も重要な海外市場でボイコットされることの影響は大きい。ギアは、自分のキャリアが低迷した理由はまさにそこにあると述べている。中国がハリウッド映画に出資するにあたり、「この人は出さないで」と言うせいで、オファーがかからなくなったというのだ。

 14年前、カンヌ映画祭でのイベントで中国人を怒らせる発言をしたストーンは、その後すぐディオールのミューズをクビになっている。ディオールにしてみれば、中国で不買運動を起こされるリスクを負うことは考えられない。昨年出版された回顧録の中でも、ストーンは中国の文化を讃え、わが子を連れて訪れたいとラブコールを送っているが、まだブラックリストされたままのようだ。

 ダライ・ラマに会ったレディ・ガガも中国からボイコットされているし、ブラッド・ピットも「セブン・イヤーズ・イン・チベット」に主演したせいで、長い間同じ扱いを受けていた。一方、昨年、インタビューの中で台湾を国と認める発言をして物議を醸したジョン・シナは、直後に謝罪声明を発表して難を逃れている。

 ただ、リーヴスの今後の公開作への直接の大きな影響は、すぐには出ないかもしれない。彼の次回作は、声の出演をするアニメーション映画「DC League of Super Pets」。アニメーション作品は、自国の俳優で吹き替えがなされる。実際、リーヴスが声の出演をした「トイ・ストーリー4」も、まだ中国の配信ラインナップに残っているようだ。その後に控えるのは「ジョン・ウィック」4作目で、先に述べたとおり、もともと中国での公開が期待されていない。

「これでもっと好きになった」とファンが賞賛

 それでも、ギアが経験したように、今後、超大作のキャスティングをする上で、メジャースタジオがリーヴスの起用に二の足を踏む可能性は十分にある。それはリーヴスにもわかっていたはずで、ツイッターにはそんな彼を褒めるコメントが多数見られる。ある人は、「彼はお金でなく自由を支持するのだ」と投稿。別の人は「これでもっと彼が好きになった」とコメントした。「彼にメダルをあげて」「スクリーンの中でも外でもヒーローだ」などという声に混じって、中国に忖度したシナを揶揄するコメントもいくつかある。

 ただ、中国で大人気の「ワイルド・スピード」シリーズの最新作に出演するシナとしては、自分が公開直前に失言をしたせいで映画に迷惑を描けるわけにはいかなかったと思われる。しかも彼はそのすぐ後に、別の大作「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」を控えてもいた。そちらの作品にもダメージを与えることになるだろうし、何より、上り調子にある自分のキャリアを台無しにしたくないという気持ちも、理解できる。

 だからこそ、リーヴスの行動は余計に際立つのだ。あるツイッター利用者は、「キアヌはジョン・ウィックより強い」と書いた。「(中国にボイコットされることなど)全然気にしていないと思うよ」と、リーヴスはそんなことに気を揉むほど小さい人ではないのだと見る人もいる。彼のクールなイメージは、この一件でさらに強まったということ。かっこいいリーヴスは、これからも世界で愛されていくだろう。そんな彼を見られない中国の人々がお気の毒だ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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