ペア解消のワタガシが最後の大会へ「混合複、楽しんでもらいたい」=バドミントン
パリ五輪で2大会連続の銅メダルを獲得したバドミントン混合ダブルスの「ワタガシ」ペアが、ラストマッチを迎える。渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)は、8月16日に所属チームや各々のSNSにおいて、8月20日に開幕する国際大会ダイハツジャパンオープンを最後に、ペアを解消することを発表した。開幕前日の19日、会場の横浜アリーナで行われた記者会見で、渡辺は「日本のファンにプレーを見せられる、数少ない機会。全力で諦めずにプレーしたい。昨年の優勝の勢いのまま、2連覇を目指していきたい」とペアとして最後の大会に臨む意気込みを語った。
最弱種目から五輪2大会連続メダル獲得の強豪へ
日本の最弱種目だった混合ダブルスを、五輪のメダル獲得まで押し上げた2人の功績は大きい。日本の学生の大会では実施されておらず、実業団が重視する団体戦でも採用されていない種目のため、有力選手が本腰を入れて取り組む環境が整っていない。世界選手権では、2019年に渡辺/東野が銅メダルを獲得するまで、日本が唯一メダルを獲得していない種目だった。
2人が富岡第一中学校時代に海外遠征で初めてペアを組んでから13年。どちらも男・女のダブルスで日本代表入りを狙える逸材が、男女両チームを持つ実業団に進み、同じチームでペアを長く継続させたこと自体が異例だった。しかし、2018年1月に日本バドミントン協会がマレーシアからジェレミー・ガンコーチを種目担当として招へいすると、最も権威のある全英オープンで初優勝を飾るなど世界で台頭し、五輪でメダルを獲得するペアへと成長を遂げた。
渡辺は、記者会見で「ほかの種目よりも日本はまだ劣っている。逆に言うと、誰にでもチャンスはあり、始めやすいと思っている」と後続ペアの出現に期待をかけた。
東野「一生懸命に返して、勇大君に決めてもらう」
混合ダブルスは、男子選手が女子選手にパワーショットを打ち込んだときに得点や得点機会が生まれる可能性が高い。その特長をどのように生かすか、かわすかが、見どころの一つと言える。
例えば、相手の男子選手の強烈なスマッシュを、女子の東野が懸命にレシーブする。速い球に対応しようとすれば、プレー範囲は狭まる。その分、男子の渡辺は広範囲をカバーしながら、自分の方に球が来たときに攻守交替に持ち込めるショットを探る。東野は「思い切り楽しみたいし、混合ダブルスを楽しんでもらいたい。女子の長いラリーや、男子の早い展開がミックスされる種目。基本的に私が狙われるので、一生懸命に返して、勇大君に決めてもらう形を見てもらいたい」と見どころを話した。
ダブルスは、縦並びが攻撃陣形で、横並びが守備陣形だ。女子の東野がネット前に入り、男子の渡辺が後方から強打を打てる形に持ち込みたい。ただし、相手ペアは男子の渡辺に強打を打たせまいとして、女子の東野を後方に追いやって強打を誘って来る。スマッシュが甘くなればカウンターレシーブで崩される可能性があるが、東野は世界でも珍しく男子顔負けのジャンピングスマッシュを打てる選手。思い切りよく、相手の男子選手のラケットを弾くショットを打ち込むこともある。世界トップレベルの混合ダブルスの魅力を体現してくれるはずだ。
パリ五輪で戦った世界の強豪も参戦
大会は、世界ランク上位者に出場義務が課される、BWF(世界バドミントン連盟)ワールドツアーのスーパー750。日本で行われる国際大会の最高峰で、1982年の第1回大会から、世界の強豪を見られる貴重な舞台として、多くの選手に夢を与えて来た。渡辺/東野は、パリ五輪から8日に帰国した後、メダリストとしてテレビ番組などメディア取材に応じる日々で調整に不安要素を抱えることは否めない。28年ロサンゼルス五輪を目指す新たな勢力も台頭が予想される中、底力が試される。
大会後、渡辺は、別のパートナーと混合ダブルスを続け、東野は櫻本絢子(ヨネックス)とのペアで女子ダブルスに主軸を置き、28年ロス五輪を目指す。「ワタガシ」ペアのプレーが見られるのは、今大会が最後となる。2人の初戦は、1回戦。呉軒毅/楊筑云(ウー・シャンイ/ヤン・チューユン=台湾)と対戦する。
大会には、パリ五輪の3位決定戦で破った23年世界王者のソ・スンジェ/チェ・ユジュン(韓国)や、準々決勝で破った21年世界王者のデチャポル/サプシリー(タイ)も参戦している。日本初となる2大会連続の五輪メダル獲得を果たした、世界の「ワタガシ」は、2連覇で有終の美を飾れるか。いよいよ最後の戦いの場に挑む。
※2024年8月19日19時追記
上位シードだった上記の韓国、タイの両ペアは、大会を欠場。渡辺/東野は、第1シードに繰り上げ。初戦の相手は、プレスリー・スミス/アリソン・リー(米国)に変更となった。