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首都圏新築マンションは平均8000万円とされる今、「4000万円台3LDK」を探した

櫻井幸雄住宅評論家
4000万円台で新築3LDKが購入できる「ソライエテラス」。筆者撮影

 不動産経済研究所の調査によると、昨年2023年の首都圏新築マンション平均価格は8101万円に。2024年度上半期も7677万円(2024年7月22日発表)だった。

 この数字から、首都圏は郊外マンションでも新築なら8000万円くらいすると考える人が出てきた。いやいや、そんなに高くなったら、普通の人はマイホームを買えないでしょう、という冷静な意見もあるが、新築マンションの価格が以前より高くなったのは事実だ。

 首都圏全域で新築マンションを取材していると、さすがに郊外で8000万円という事例は少ないものの、6000万円を超える新築3LDKに出合うことが増えた。6000万円台が普通で、安くても5000万円台……というのが郊外マンションの実情だろう。しかしながら、首都圏でもごく一部に3LDKが4000万円台で購入できるケースがある。

 「郊外の3LDKが4000万円台」という価格水準は昭和後期、バブル経済が始まる前と同じだ。大卒の初任給が12万円程度で、フラット35の前身である住宅金融公庫融資の金利が5パーセント前後だった時代のプライスである。

 つまり、新築マンション価格が上がったといわれる中、郊外では40年近く前と変わりない価格水準の新築分譲マンションがまだ残っている。そんな不思議な現象がある。

 とても信じられない、と思うかもしれない。4000万円台で購入できる3LDKの実例を見せてみろ、という人もいそうだ。

 なので、まとめてみた。

 2024年9月24日時点で、4000万円台で3LDKタイプ(2LDK+Sや1LDK+2Sも含む)を購入できるマンション8物件をリスト化し、建設費高騰の今でも4000万円台3LDKが購入できる理由についても解説したい。

もしや都心への通勤圏外で、安普請マンション?

 平均価格が8000万円前後なのに、3LDKが4000万円台で購入できるマンション……そう聞くと、都心から遠く離れた場所で、建物の質が低いマンションではないかと不安を抱く人もいそうだ。

 確かに、「3LDKが4000万円台」という新築マンションがみつかるのは都心部ではない。東京23区の外側で郊外部となるのだが、都心への通勤が不可能な場所というわけではない。都心の山手線駅まで30分から1時間の場所だ。そして、大手不動産会社が手がける大規模物件で、建物の質は高い。

 具体的なマンション名と間取り、価格、最寄り駅からの徒歩分数をまとめたのが、下の表だ。

9月24日時点で、首都圏通勤圏で販売中の新築マンションから、3LDKタイプが4000万円台で購入できる物件を筆者がリストアップした。
9月24日時点で、首都圏通勤圏で販売中の新築マンションから、3LDKタイプが4000万円台で購入できる物件を筆者がリストアップした。

 リストの中で、3LDKタイプが4400万円台からの設定となり、現在販売中住戸の最多価格帯が4800万円台となるのが「ソライエテラス」だ。住友不動産他が事業主となる埼玉県草加市の大規模マンションで、最寄りの東武スカイツリーライン・獨協大学前駅から秋葉原駅までの所要時間は27分。東京駅まで36分、大手町駅までは38分となる。

 その獨協大学前駅から「ソライエテラス」までは徒歩11分と12分(棟によって異なる)なので、都心への通勤は問題ない。

 「プラウドシティ豊田多摩平の森」(野村不動産)は新宿駅から38分の豊田駅を最寄りとし、同駅から歩いて9分から11分。「ザ・グランクロス多摩センター」(三菱地所レジデンス他)は、新宿駅から40分の京王多摩センター駅・小田急多摩センター駅から徒歩9分だ。

 加えて、8物件は建物の質も高い。

 総戸数196戸から796戸の堂々たる建物で、タイル張り、ガラス面の多い外観は豪華さも備える。

「シティテラス湘南平塚」の豪華なエントランスエントランス。筆者撮影
「シティテラス湘南平塚」の豪華なエントランスエントランス。筆者撮影

 「ソライエテラス」でモデルルームとして公開されている住戸を見学したが、白を基調にした室内空間はデザイナーズマンションのようにお洒落だ。ウォークインクローゼットなど収納スペースが多く、キッチンのディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)やリビングの床暖房など設備仕様のレベルも高い。

「ソライエテラス」の白を基調とした住戸内。筆者撮影
「ソライエテラス」の白を基調とした住戸内。筆者撮影

 今回取り上げたマンションは、すべて住戸内設備のレベルが高く、エントランスなど共用部も豪華に仕上げられている。

 8物件のうち、5つのマンションは最低価格が4000万円台であるだけでなく、最多価格帯も4000万円台におさまる、つまり、5000万円を切る価格で購入できる住戸が多く用意されている。

 この価格設定であれば、賃貸住宅に住んでいるファミリー世帯の場合、今の家賃と変わらない、もしくは家賃より安いというケースが多くなるはずだ。

じつは、建設費が上がる前のマンションだった

 リストに挙げた8つのマンションは、すべて建物が完成済みだ。つまり、建設工事が始まったのは2年以上前……建設費が今ほど上がっていない時期だった。

 だから、分譲価格を抑えることができたし、設備仕様のレベルを上げることも可能だったと考えられる。

「シティハウス八千代緑が丘アクアステージ」の住戸例。筆者撮影
「シティハウス八千代緑が丘アクアステージ」の住戸例。筆者撮影

 その低価格・高品質のマンションが今も購入できる理由は、時代の影響だろう。

 コロナ禍が収束に向かった2022年以降、株価が上昇し、景気が上向いた。この時流に乗って、都心マンションの人気が上昇。資金に余力のある人が積極的に都心物件を買ったこともあり、都心部では、「マンション価格が上昇しても、よく売れる」という状況が生まれた。

 つまり、首都圏では、マンション購入者の目が都心部に向き、郊外マンションの注目度が下がった。さらに、「首都圏全域で、マンション価格が上昇」ともされて、郊外で抑えた価格のマンションを買いたいと考えていた人のなかには、購入をあきらめてしまう人も出た。

 その結果、この数年、郊外で販売された大規模マンションの一部が、まだ購入可能で残っているわけだ。

 建設費の上昇で、今後、郊外でもマンション価格の上昇は顕著になるはず。そうなると、今残っている「4000万円台3LDK」は、ますます希少価値が増す。昭和時代と変わらぬ価格水準で3LDKを購入できるチャンスは残り少ない。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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