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マダニ感染症 人→人へ国内初 過去に餌付けした猫に噛まれた女性が死亡

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

国立感染症研究所は19日、マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の人から人への感染例を、国内で初めて確認したと発表したと読売新聞オンラインが伝えています。

SFTSは、野山に行ったときにSFTSウイルス(SFTSV)を有するマダニに咬まれたときだけに、この病気に感染すると思っている人も多いのでないでしょうか。

しかし、日本で初めて人から人へSFTSが感染したと知ると衝撃が走りました。その辺りを見ていきましょう。

医療関係者がSFTSに感染

患者→医師への“ヒト→ヒト感染”国内初確認 マダニ感染症「SFTS」国立感染症研究所は注意呼びかけ|TBS NEWS DIG より

読売新聞オンラインの記事によりますと20代の男性医師は、SFTSと診断された90歳代の男性患者を担当し、死亡後に点滴を外す処置などを行いました。その9日後に38度の発熱などの症状が出て、この医師はSFTSと診断されました(医師の症状は軽快しています)。

SFTSの感染は、患者の血液や分泌物との直接的な接触が原因と考えられます。このような経路で感染する人は、SFTS患者と直接的に濃厚な接触する医療従事者や患者の家族などに限られています。

ペットからSFTSに感染した例

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イメージ写真写真:イメージマート

SFTSVによる感染は、ウイルスを有するマダニに咬まれたときだけに感染するものだと思われがちです。

しかし、マダニではなくペットから噛まれてSFTSになった人がわが国でもいます。動物はSFTSVに感染すると多くの場合、症状がでない不顕性であると考えられてきましたが、いままで日本ではチーターや犬や猫がSFTSVに感染して発症した事例があります。

その中で、猫に噛まれた50代の女性がSTFSで死亡しています。

いわゆる餌やりさんが猫に噛まれ死亡

国立感染症研究所の発表によりますと、猫に噛まれて死亡した人は生来健康な女性で、発熱、食欲不振、嘔吐などの症状が出て末梢血液検査で白血球減少と血小板減少が認められて症状が悪化し死亡したそうです。

病理解剖の所見からSFTSが疑われて、詳細な検査の結果SFTSが原因であったことが明らかになり、猫から感染したと考えられています。

犬や猫を飼っている人はどうしたらいいか?

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イメージ写真写真:アフロ

マダニは犬や猫などの動物に対する感染症の病原体を持っている場合もありますので、ペットの健康を守るためにも、ペットがマダニに刺されないようにしましょう。以下のことに注意してください。

・猫は外に出さない

・犬や猫が外に出ている場合はマダニを適切に駆除

ペット用のダニ駆除剤がありますので、かかりつけの獣医師に相談してください。市販のマダニ駆除薬では効果がないことがありますので、注意してください。

・犬や猫が外に出たときは、体にマダニがついていないかチェック

マダニは顔や耳や四肢についていることが多いです。目の細かい櫛をかけることも効果的です。

・マダニが咬着している(しっかり食い込んでいる)場合は、動物病院へ

飼い主が無理に取らず獣医師に除去してもらうのがよいでしょう。

まとめ

「感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要」国立感染症研究所のサイトより
「感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要」国立感染症研究所のサイトより

SFTSは、主にマダニに咬まれたことにより感染します。

特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに刺される危険性が高まります。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には以下のことに注意してください。

・長袖・長ズボンを着用(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する)

・足を完全に覆う靴でサンダルなどは避ける

・帽子、手袋を着用

・首にタオルやスカーフを巻く

・服は明るい色のものの方が、マダニを目視で確認しやすいです

・屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認しましょう

上の日本地図を見ていただくと、日本の南の方がSFTSの推定感染地域です。この流行地ではSFTSV感染症を発症した犬や猫がいるリスクがあります。

外にいる犬や猫は、この推定感染地域にいるとSFTSVに感染し、SFTSに罹患するリスクがありますので、野良犬や野良猫の世話をしている人は、特に注意が必要です。

原因不明の病気の猫や犬には、手袋などをして直接触れないようにすることがSFTSV感染予防になります。貧血しているフラフラして歩けない野良犬や野良猫は、この病気を持っている可能性があるので予防対策をすることが必要です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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