秋山、筒香の2021年シーズンを占う! 日本人野手のMLBシーズン1年目の傾向とは?
【通常シーズンを体験できない新加入の日本人選手】
国内で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、今もシーズン開幕の目処が全く立たないMLB。米メディアからMLBが検討中の様々な実施案が報じられている通り、すでに通常のシーズン開催は100%不可能な状態になってしまった。
今シーズン自分たちの夢を実現させ、山口俊投手、秋山翔吾選手、筒香嘉智選手の3人がMLBに移籍したが、彼らにとっては本当に不運なスタートとなった。
特に秋山選手と筒香選手は、2013年の田中賢介選手以来の日本人野手のMLB挑戦(大谷翔平選手は二刀流選手なので除外)であり、彼らに注目していたファンも多かったはずだ。
だが彼らが新しい環境で、どの程度活躍できるかを確認するという意味では、異例措置で実施されることになりそうな今シーズンは参考になりにくく、もう来シーズンに目を向けるしかないだろう。
【野手にとって重要な2つの大きな相違点】
これまでも日本人選手がMLB挑戦する度に、MLBとNPBの環境の違いが指摘されてきた。
使用球の違い、球場のほとんどが内野天然芝球場なども相違点ではあるが、野手にとって最も重要なのが、162試合の長丁場シーズンと、パワー重視かつ手元で動く変化球を駆使する投手傾向ではないだろうか。
ほとんどオフ日もなく6ヶ月間試合が続く過密スケジュール下でのコンディションづくりはNPBでは絶対に経験できないし、160キロ前後の球速でしかも手元で動く球種を駆使する投手もNPBにはほとんど存在しない。
そんな違いを経験しながら、NPB時代のような打撃を披露するのは決して簡単なことではない。
【過去の日本人野手の傾向を考察する】
そこで過去の日本人野手たちは、どのようにMLB1年目のシーズンを過ごしていたのだろうか。個人的に気になり、シーズンを通してどのように打撃が推移しているのかをチェックしてみた。
今回チェックしたのは、シーズン1年目からレギュラークラスとして活躍し、最低でも公式戦に100試合以上出場した日本人野手10人に絞った。大谷選手も指名打者として100試合以上出場しているので、彼もここに加えている。
これら10選手のシーズン1年目の月間打率の推移を示したのが、以下の表になる。
【シーズン前半戦は好調で後半戦は苦しむ?】
表を見てもらえば分かるように、青で表示されているのがシーズン最高打率で、赤が最低打率を示している。これである程度、各選手の好不調の波が確認できるだろう。
もちろん各選手によって差があるものの、大きな流れとして確認できることは、10人中7選手がシーズン前半戦の6月までに最高打率を記録している一方で、7月以降のシーズン後半戦に最低打率を残している選手も7人いるという点だ。
しかもシーズン終盤の8月、9/10月で最高打率を残している選手はイチロー選手と青木宣親選手の2人しかいないのだ。
ちなみに岩村明憲選手は5月に最高打率を記録しているが、負傷のため3試合の出場に留まっている。ただ5月を除いても最高打率は3/4月なので、いずれにせよ7人の1人に変わりはない、
つまり日本人野手のシーズン1年目は、シーズン前半戦で活躍できるものの、後半戦で落ちてくる傾向が強いといえる。
ところでこうして比較してみると、シーズン1年目で首位打者、盗塁王、最多安打のタイトルを獲得しMVPと新人王をダブル受賞したイチロー選手が突出した存在なのが浮き彫りになってくる。
彼がそのシーズンに旋風を巻き起こしたのも、十分に納得できる。
【シーズン終盤のコンディション維持がカギ?】
こうした傾向になっているのは様々な理由が考えられるが、シーズン前半戦は日本人選手の打撃スキルが高い一方で、まだ対戦相手が十分なスカウティングレポートを入手できない中での対戦が続き、日本人選手に有利に作用している傾向が強いからではないだろうか。
その一方で、開幕からレギュラーとして試合に出場し続ければ、シーズン前半が終了する7月くらいから必然的に疲労が蓄積しはじめる。また対戦チームも徐々に日本人選手の傾向と対策を考案できるようになり、シーズン後半戦になると苦しむようになってくると推察できる。
いずれにせよ日本人野手のMLBシーズン1年目は、いろいろな経験を積まなければならない大変なシーズンだということだ。秋山、筒香両選手にとっても、シーズン後半戦をどのように乗り切るかが、成功のカギを握ることになりそうだ。