“キング”やWBC優勝を支えた名参謀も加わり、吉報続きのフォルティウスが3年ぶりの王座奪回を目指す
1月27日に開幕する第41回全農日本カーリング選手権大会まで2週間だ。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪レースがいよいよ始まるとあって、各チームは最終調整に入っている。
3連覇を狙うロコ・ソラーレの対抗馬にはフォルティウスが挙がる。
2021年の優勝以後、22年は4位、23年はコロナ禍でのレギュレーションに泣き日本選手権には不出場と、不遇の数シーズンを過ごした印象でもあったが、今季はいいニュースが続いた。
まずスキップで看板選手である吉村紗也香が妊娠。昨季途中から新戦力として加わった小谷優奈をスキップに据え、同時期に船山弓枝がコーチに専念することが決まった。
小林未奈ー近江谷杏菜ー小野寺佳歩ー小谷というポジションで今季を迎えると、初戦のどうぎんクラシック、稚内みどりチャレンジカップでそれぞれ連覇するなど最高のスタートを切った。
16年のキャリアの中で「人生初のスキップ」と言う小谷は「やったことないことがありすぎて、正直、最初は緊張しました」と振り返るが、シーズン頭から結果が出たことで「安心できた」とスムーズに新しい役割に就くことができた。
また、北海道ツアーと並行する時期にカナダ遠征の費用をクラウドファンディングで募ったが、目標金額の770万円を大幅に超える1095万円が集まった。この資金で2ヶ月超の遠征に向かい、8大会に参加。優勝1回、準優勝2回を含む7度のクオリファイ(予選突破)を記録するなど安定した成績を残した。国内を含む3勝は日本勢として今季最多だ。
「たくさんのご支援を寄せていただいたおかげで、カナダで多くの経験を積むことができました。戦術面やチームワークも順調に準備が進んでいる実感があります。特にスキップ小谷は1大会ごとにメキメキと成長していて、本当にスポンジみたいです」
近江谷がそう語るように小谷の成長がそのままチーム力に還元される好循環のもと、今季を過ごしている。
11月には過去にもメンタルコーチとして契約していた元日本ハムファイターズで、WBCでは侍ジャパンのヘッドコーチを務めた白井一幸コーチと再契約。続く12月には加茂川啓明電機株式会社とトップスポンサー契約を締結し、同時にまだ所属のなかった小谷、小林の勤務先も同社と発表された。さらに12月14日には吉村が男児を無事に出産するなど、立て続けに吉報が舞い込んだ。
しかし、追い風はそれだけにとどまらない。チームは1月13日に「第41回全農日本カーリング選手権における海外コーチの就任のお知らせ」というリリースを配信し、海外からコーチを招聘したことを発表した。
ニコラス・エディンだ。
スウェーデン代表として15シーズン以上を過ごし、6度の世界選手権優勝を誇り、2022年の北京五輪では悲願の金メダルも獲得した。愛称というよりも、ニュアンスとしては敬称としてカーリング界で“KING”と呼ばれるトップ・オブ・トップカーラーである。
リリースでは「チームの才能と競技に対する熱き思い、そしてポジティブなエネルギーには感銘を受けます」というコメントがあったが、12月の軽井沢国際ではコーチボックスの一段上からフォルティウスの試合を熱心に観戦する姿も確認されている。
日本カーリング選手権史上、世界選手権王者や五輪金メダリストがコーチボックスに座るのはもちろん初めてだ。エディン自身も初の来道ということで、歴史的な大会になることは間違いない。試合前練習、タイムアウトやハーフタイム、ナイトプラクティスなども含め、エディンコーチの動向に注目が集まる。
小林、近江谷、小野寺、小谷となった新たな布陣に、経験豊富な船山をヘッドコーチに据え、キングも援軍に駆けつける。アイスの外では白井コーチがメンタル面でサポート。母となった吉村もリモートなどで積極的にミーティングに参加しているという。会場はホームリンクのどうぎんカーリングスタジアムだ。
もちろん勝負事は蓋を開けてみなければわからない。それでも近江谷が「目標達成のために必要なチーム体制も整ってきていて、そのぶん私たちもより強い決意を持って日々の練習に取り組めています」と手応えを得ている。準備は万全に近づいてきた。3年ぶりの王座奪回なるか。フォルティウスの初戦は29日13:30に開始される。