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「牧場物語」新作の“濃密”スローライフ体験してみた 【開発者インタビューあり】

河村鳴紘サブカル専門ライター
牧場物語 オリーブタウンと希望の大地(C)2021 Marvelous Inc.

 今年に25周年を迎えた「牧場物語」シリーズの最新作「オリーブタウンと希望の大地」(マーベラス)が25日、発売されました。ニンテンドースイッチ向けソフトの有力ソフトの一つとして注目されていた一作です。そこで実際に遊んで同作を体験してその魅力を紹介しつつ、開発者にも注目点を尋ねました。

 同シリーズは「牧場」と名前が付くだけに、牧場を運営するゲームです。最新作では、広大な森を開拓して牧場を復興しながら、牧場のとなりにある港町「オリーブタウン」を盛り上げていきます。

◇深夜まで働くと……

 プレーヤーは、祖父の牧場を復興させるという目的で、荒れ果てた牧場を切り開いていきます。町長のアドバイスを受けて、「オノ」で木を切り、「ハンマー」で石を壊し、「カマ」で雑草を刈るところから始まるのですが、ボタンのレスポンス(反応)も含めて開拓が楽しいのですね。木や雑草は翌日に生えることもあり、農場を美しく保つには日々のメンテナンスが大事です。

 なお、あえて木が荒れ放題のエリアを作っておいても、それはそれで森のようで味があります。極端に言えば放っておいても構わないわけで、それも自由なのです。

 ゲーム中は時間が経過する仕組みで、一日もすぐ終わり、四季の変化が早く楽しめるのもポイントです。またプレーヤーは体力があるので、マシンのように無制限に労働できません。夜に寝るのが遅いと、翌朝に起きる時間が遅くなっていました。また食事を取ると体力を回復できたので、ブラック企業張りに調子に乗って深夜まで開拓作業を続けていると、キャラクターが突然倒れてしまい、気付いたらベッドで翌朝(しかも午前10時起床)なんてこともありました。「ゲームの中でも深夜まで働いちゃダメ」と怒られているようです。

 ゲームを進めていくと、次にできること、やれることがどんどん広がっていきます。開拓に慣れてハウツーを手に入れてルーチンワークができたころ、さまざまなアイテムが作り出せるクラフト、ニワトリやウシなどを飼う牧畜、鉱山での採掘、釣りなどができるようになります。また壊れた橋を修理して次の開拓できる場所が広がったり、不思議な生き物に出会ったりします。特に開拓できる場所が広がる瞬間は、ゾクゾクしてしまいます。

「オリーブタウン」では道具を強化したり、種を購入したり……。桜の花びらも舞います
「オリーブタウン」では道具を強化したり、種を購入したり……。桜の花びらも舞います

◇大切な牧場経営 資金は大切に

 スローライフとはいえども、経済の“呪縛”からは逃れられません。牧場経営のためにも金を稼ぐのは当然でして、(大げさにいえば)資金繰りもあります。

 作物を作るには、店で買える種が必要で、まとめて植えるにはある程度の資金を確保し、作物が育つには時間も手間もかかります。また大量に収穫した作物を売却しても瞬時に現金化されず、ゲーム内時間で1日待つ必要があります。大金を持って翌日に種を買いに店に足を運ぶとちょうど「定休日」だったりするのは“お約束”。そして、お金の使い道ですが、施設の拡張、道具の強化、作物とのバランスが問われてきます。

 まあ、「すぐお金は手に入らないんだよ」と「社会の厳しさ」をほんの少しだけ見せてくれるところが個人的には気に入っています。ゲームには難易度調整があるので、資金繰りを楽にすることもできます(途中変更も可)。

 “待機”になった日でもやることはたくさんあります。町の人とお話をしたり、採掘をしたり、釣りをしたり、他のこと(新規事業?)に手を伸ばすと次のアイデアがひらめいたりします。

 繰り返しになりますが、時間に追われず、のんびり遊ぶのが良いと思うのです。「どうぶつの森」をプレーした人にはお勧めできますが、違いもかなりあります。ゲーム内の時間の流れが早いので、四季の移ろいをすぐ感じられるのもそうですし、ゲーム内のキャラクターと結婚したり、パートナーにしたりできるのもポイントでしょうか。

 なお一部で「(ゲームの)ロード時間が長い」という声もありましたが、プレーした限りで言えば、遊んでいくと、さほど気にならなくなりました。また公式ツイッターでも告知されている通り、より快適に遊べるための更新データが配布されています。

◇開発者の“本音” ウシさん「ちょっと大きかったかな…」

 同作の魅力について、ディレクターの中野魅さんに尋ねました。

ーー牧場物語シリーズ誕生の経緯は

 第1作のプロデューサーは、私の上司だった和田康宏という人物で、初期のコンセプトは、「戦わないゲーム」であるということでした。当時は、自分が主人公で敵と戦うというゲームが主流でしたので、こうしたほのぼのとしたコンセプトが、新しさとしてユーザーの目に映るのでは?というアイデアであったと聞いています。

ーー「牧場物語」シリーズの魅力とは?

 基本的には、どうぶつや作物を育て、牧場主として生きていくことをテーマとしているのですが、それをしなければいけないわけではなく、牧場をほったらかしにして釣りや採掘などに邁進(まいしん)したり、街に入り浸って気になるキャラクターにアプローチすることもできます。自分のペースで自由なプレーができる点が、牧場物語シリーズの魅力だと考えています。

ーー最新作「オリーブタウンと希望の大地」の特徴は何でしょうか

 開拓がテーマになります。今回の牧場は、最初森が広がっていて、それを開拓していくことで使える土地を広げていき、また森の中で様々な発見をすることになります。しかし、だからといって開拓をしなければならないわけではなく、ある程度にとどめておくこともできるし、すべての土地を使うこともできる、そういった開拓するかしないかも含めて、開拓がテーマになっています。

ーー開発中に大変だったことは

 特徴的なキャラクターとして、ウシさんのデザインがあるのですが、人間と比較してのウシさんの大きさをどのくらいにするのか、については開発中何度も調整を行いました。結局「ウシさんを大きく見せたい」という私の意見が採用されて今の大きさになっているのですが、改めて見てみると「ちょっと大きかったかな……。」と反省しています。

ウシさんは可愛いのですが、確かに大きい気が……
ウシさんは可愛いのですが、確かに大きい気が……

ーー最後に「ここは見て」というポイントがあればぜひに

 ウシさんを筆頭に、牧場物語に出てくるどうぶつたちは、丸くてほのぼのとしたデザインになっています。仕草も可愛いですから、ぜひどうぶつたちを育てて頂きたいと思います!

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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