沖縄の避難所で感じたこの国のデジタル化による災害強靭化。デジ庁主導のオープンデータ化が必須!
KNNポール神田です
筆者は、沖縄県北部の名護市で台風6号の中、現在暮らしている。今回の台風6号では想像を絶する暴風雨の中、停電、断水で公民館の避難所に避難していた(現在は復旧)。今回、デジタル化における防災強靭化における提言をしたい。
まずは、現在の『台風』の状況を把握するためにオススメのサイトだ。
■台風の影響を感覚的に把握できる『nullschool.net』
ネットやテレビだけの情報だけでなく、実際に自分で『台風』の規模を視覚的に体感できるのが、この『nullschool.net』のCGだ。台風の場所だけでなく、その台風が起こす気流の流れで今吹いている風がどのように影響を受けてきているのかを『地球』レベルの視点で体感することができる。
■気象庁 台風情報で今後を予測する
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#6/27.682/128.113/&elem=root&typhoon=all&contents=typhoon
今回の台風6号は大きいだけでなく、時速10kmと自転車で走るほどの速度で動いているから被害は大きくなる。気象庁のサイトでは5日先までの予測がグラフィカルに見て予測することができるので、飛行機などでの移動の際には早めに判断することが可能だ。
■インフラ事業の『停電』情報はオープンデータ化で公開を!
2023年8月2日水曜日、台風6号における影響で、沖縄県では、総戸数63万のうち、22万戸で停電となり、停電率が34.8%に至った。
特に、ライフラインの停止は、自然災害だけでなく、生活がまったくできなくなってしまう。特に電気が停まると、夜だと身動きができなくなる。テレビもない、ラジオもそういえば、ネットラジオだ。W-Fiも動かず、スマホのテザリング対応のみとなる。
沖縄電力停電情報
https://www.okidenmail.jp/bosai/info/index.html
沖縄電力のサイトでは、グラフィックを多用し、エリアごとにより細かな現在の復旧状況がわかる。しかも、ほぼリアルタイムに更新情報がアップデートされている。これは停電の規模観がわかりやすい。長期化する可能性を感じる。
さらに X.com(Twitter)においても随時情報がアップデートされている。
夜を徹しての停電復旧作業も公開されている
https://twitter.com/OKIDEN_Official
ウェブのチャットで、郵便番号を入力すると停電地域もわかる
■停電でも役立つ防災アプリ群
筆者宅も、8月2日水曜日より、頻繁に停電と復旧が繰り返していたが、停電が続き、クーラーが停まった。暴風雨で窓が開けられないので、湿度は90%を超える状態となった。冷蔵庫も停まり、冷凍庫の氷も溶ける…。そしてさらに電気が停まると、水道も断水となってしまった。電気と水道がなくなると、本当に何もできなくなる…。
停電となると、テレビがつかないのでネットのアプリで台風情報を得る。
■NHKニュース・防災
https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/index.html
NHKのニュース・防災アプリで、『警報』『避難指示』が発令されていることはわかるが、『警戒』してくださいと言われても、それ以上は何もできない。
『停電』になって、テレビの『NHK』が視聴できないので、『NHK』のアプリでは、サイマル放送で『テレビ放送』に対応すべきだと感じた。東北大震災の時は提供されているので物理的に可能なはずだ。
一方、『TBS NEWS DIG』アプリでは、沖縄のRBC放送のトップニュースが地域を選ぶと連動している。LIVEニュースも動画で確認できる。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/180161
■Yahoo!天気・災害
エリアの情報を共有できる防災アプリ
https://emg.yahoo.co.jp/notebook/
Yahoo!は防災アプリがいつしか、専用アプリとなっていた。
https://weather.yahoo.co.jp/weather/
『ヤフー!防災速報』アプリ
Yahoo!防災速報アプリの『災害マップ』は、近隣のユーザー同士で状況を共有できる。ライフラインの状況などもわかるが、地域のインフラ事業会社とデータを共有できるようなデータ基盤がほしいものだ。
自然災害のときにしか使わないものは、万一の時に利用されにくいので、普段のアプリと同じレイヤーにあったほうが良いだろう。
むしろ、このようなユーザー投稿は、同じグループ系列の『LINE』からの投稿機能を使えば、より細かいエリアごとの情報を共有できるはずだ。
利用者が許せば、日時と地図データをマッピングするだけで、スマートフォンの数だけセンサーとして有効に活用できることだろう。
エリアがわかる写真が投稿されればそれも時系列で被害の状況が可視化されることだろう。
『LINEヤフー』としての2023年10月からの統合化は、こんな防災面でこそ、先に協力を望みたい。
■『災害オープンデータ』の必要性
前出の『沖縄電力』の『停電』がベースとなるデータなどをエリア別に時系列でCSVなどで公開してくれれば、いろいろと状況を分析することができそうだ。
『東京電力』や『関西電力』も独自のデータとしてバラバラに持っている。
気象庁の降水量や気温との関連性も出てきそうなものだ。地図データとの関連性がない。市町村別のデータと日付のデータがあるので、国土地理院と共有すべきではないか?
気象庁の令和5年度予算は542億円
一般会計で物件費200億4400万円(前年度予算比1・05倍)、人件費341億8100万円(同1・00倍)の542億2500万円(同1・02倍)、うちデジタル庁一括計上(政府情報システムに係る経費)56億5300万円となった。
地図のデータならば、国土地理院の情報の上に、それらがレイヤーで重ねられれば、切り出した情報で分析ができる。
なんといっても、個々の事業者がよかれと思ってデータを作成するだけでなく、広く誰もが利用でき、共有できるデータの基盤が必要だ。
国土地理院のデジタル地図
重ねるハザードマップ
津波や土砂災害などを個別で見るよりも、すべてのリスクを重ねて見ることができる。
国土地理院の令和5年(2023)度予算案額は、86.7 億円(対前年度比1.01倍)
■GoogleEarth 予算0円
APIも公開されているのでハザードマップのレイヤーを被せるのはそう難しくはないはずだ。
■マイナンバーだけではない、デジタル庁の仕事
マイナンバーでばかり耳目を集めている『デジタル庁(年間予算4,951億円 1日あたり13.5億円)』だが、本来、このような自然災害大国ニッポンにおいて、インフラ事業者と地方自治体、そして、そこで暮らす人々のスマートフォンからのセンサーで集められた情報こそ、デジタルで統合すべきだろう。
ヤフーやLINEのような民間企業で集められたデータや、インフラ企業などを利用するだけでなく、デジタル庁が用意した、データフォーマットを利用させないことには、データの統一作業などとてもできそうにない。政府がすぐに情報をキャッチし、判断を下すにも重要な鍵となる。
地図データなどは、ハザードマップもあわせて作り直し、Googleストリートビューなどの協力を仰げば、より多様性のある地図のデジタルデータ化が可能となりそうだ。独自規格でははなく、世界的な規格で地図データは作成しておくべきなのだ。東日本大震災の時や阪神大震災の時を考えれば、英語での地図データやハザードマップは、必ず作成しておかなければならない。それができてこその自然災害大国の準備段階だ。
■『避難所』ですら、避難利用のリストは手書き書類のみ
筆者は、阪神大震災、ニューヨーク911、そして、今回の台風6号でも、避難所のお世話になってきた。
現在の避難所では、WI-FIもハイスピードで利用でき、電源も確保でき、クーラーのある暮らしが確保できた。そして、調理室も利用することができた。非常食も用意されている。
一方、停電で冷凍食品が廃棄されているニュースを聞き、ここで、廃棄される食材があれば、避難している人の食料に活用できる。巨大な調理室も開いている。
自宅の冷凍庫の食品だけでも相当、一人では食べきれない量である。
停電でどこのお店も閉店してしまっているからこそのコミュニティの活用となるのではないだろうか?
公民館の巨大キッチンが利用できるのではないか?とSNSで提言したところ、Yahoo!エキスパートの井出瑠美さんに記事化いただけた。
バスが動ける状態となると避難所のサービスは停止になるという。タテ割り行政のルールに疑問を感じた。もしも、窓ガラスが割れて、暴風雨が流れ込み、生活できない状況にある人がいても、バスが動いた状態で避難所から追い出してしまうのか? 阪神大震災の時も、避難所から抜け出せなくなる人もおられたのでどこまで自立を支援するのかというのは永遠の避難所の課題だろう。
現在の避難所では、利用者を『マイナンバー』で管理することもなければ、『本人確認』もされていないのが現状だ。
また、『避難指示』が出ている以上、予想以上の人が訪れた場合なども含めて、自然災害だけでなく、人災という二次災害に対してのクリティカルな対応が必要な気がしてならなかった。
今夜から、また沖縄に台風が戻ってきている。一昨日とは、逆の方向から風雨が当たる…。大事にいたらないことを心から望む。