大学昼間部では49.6%が奨学金受給中
学費に教材費、交通費、そして交友費など、高校までと比べると大学生としての生活には桁違いのお金が必要となる。一人暮らしを始めるとなれば生活費も多分に上乗せされる。実家の仕送りや大学生自身のアルバイトだけでは足りそうにない場合、奨学金の給与・貸与を受ける選択肢も用意されている。今回は独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月に発表した「令和2年度学生生活調査」(※)などを基に、大学生の奨学金受給状況の確認をする。
大学生の収入を確認すると、アルバイト料や仕送り額が漸減する中で、奨学金の絶対額・大学生の収入に占める比率は増加する傾向にあった。直近数年は漸減の動きに転じているが。
これは奨学金の額が上乗せされているのではなく、受給者率(対象全学生のうち、奨学金を受給している学生の割合)が増えていたのが原因。その動向を追ったのが次のグラフ。
博士課程は元々奨学金受給者率が高く6割強で安定しており、これは経年で変化が無かった。一方、修士課程や大学昼間部は漸増を続け、今世紀に入ってからは急カーブを描いて上昇していた。特に大学昼間部は不景気時における上昇率が大きく、2回の急上昇を経て1992年度から2012年度の間に2倍強に増えたことが見て取れる。
2014年度以降では大学昼間部・修士課程・博士課程のいずれも受給者率が落ちる傾向が見受けられる。申請したものの不採用となったり、希望してはいるが申請しなかった人が増えているのではなく、必要が無いと判断した人の比率が増加していることから、景況感の動向が受給者率にも少なからぬ影響を与えていることが推測される。
直近2020年度では博士課程の漸減傾向は変わらないものの、大学昼間部と修士課程では増加の動きに転じている。景況感の悪化が影響したのだろうか。
その2020年度の大学種類別動向を見ると、公立の受給率・申請率がもっとも多く、国立がもっとも少ない。希望しているが申請しなかった、申請したが受理されなかった割合はどの大学種類でも少数だが一定率は存在している。
さらに世帯年収別で区分し、受給者率を見ると次の通りとなる。この値はそれぞれの学校種類における奨学金受給者全体のうち、各世帯年収別の生徒の人数割合を示している。個々の世帯年収に属する人のうち何%が奨学金を受けているかを示したものではない。
高世帯年収層で国公立と比べると私立は高めの値が出るなど、私立は国立・公立と状況がやや異なる状況となっているのが分かる。私立大学の方が学費が高くなるため、高世帯年収層でも負担は大きく、奨学金に頼る割合も増加するのだろう。
また300万円台以下の世帯では受給者率が減っている。これは元々世帯年収が低い学生が少ないのが要因。当然、低世帯年収層の方が申請した場合の受理率は高く、高世帯年収ほど不受理の割合は増加している。それでもなお、このような結果となってしまう次第。
奨学金の大部分は給付ではなく貸付であり、就職などで定期収入を得るようになってから漸次返却する義務を負う。未来の自分への投資との観点では有益な手法であるものの、借金には違いない。学生の収入そのものや仕送り額の減少も併せ、大学生のお財布事情の厳しさを示す一つの指針として、記憶にとどめておく動きといえよう。
ちなみに直近年度となる2020年度において、大学昼間部で奨学金を受給している人における、日本学生支援機構(JASSO)からのみの受給者は84.3%、その他の奨学金のみの受給者は7.2%、日本学生支援機構とその他の奨学金の双方を受給している人は8.4%となっている(令和2年度学生生活調査資料より確認。グラフ化は略)。JASSOからの奨学金は給付と貸与の2種類だが、どれほどの割合が貸与型の奨学金を受けているかは今調査では明らかにされていない。とはいえ、奨学金を受けている人の大部分はJASSOによるものである実情には違いない。
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※令和2年度学生生活調査
2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新のデータ。
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