若者の4マス離れ…年齢階層別に見た4マス接触時間の実情と過去からの変化をさぐる(2024年公開版)
紙媒体はいくぶん能動的なところもあるが、4マスと評されるテレビ・ラジオ・新聞・雑誌から成るマスメディアは、プライベートな時間を受動的に過ごすのに用いる主要な手立てである。昨今ではインターネットの普及をはじめ、生活環境が大きく変化したことから、この4マスへの傾注度合いが減っているとの指摘もある。総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果から、その実情を確認する。
今調査では生活様式に関して「睡眠」「身の回りの用事」「食事」「通勤・通学」「仕事(収入を伴う仕事)」「学業(学生が学校の授業やそれに関連して行う学習活動)」「家事」「介護・看護」「育児」「買物」「移動(通勤・通学を除く)」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「休養・くつろぎ」「学習・自己啓発・訓練」「趣味・娯楽」「スポーツ」「ボランティア活動・社会参加活動」「交際・付き合い」「受診・療養」「その他」の20に区分している。今回はこの中で「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」、つまり4マスとの接触時間の動向を確認する。なおいわゆる「ながら行為」による時間は含まれない。あくまでも主行動の時間であることに注意が必要。
まずは直近2021年の男女別・年齢階層別動向だが、若年層は女性、中年層以降は男性の方が長くなる。男女間の長さが逆転するのは30代後半からで、いくつかの属性で再び男性が長くなることもあるが、60代後半以上ではずっと女性の方が長くなる。
30代前半まで女性が長いのは、専業主婦にしても共働き世帯の主婦にしても、勤め人であることが多い男性と比べると、在宅時間が長いから。とはいえ、パートなどに出る人の割合が増え、自宅でも家事や育児で多忙になる30代から40代にかけて男性と比べて増え方は大人しくなっていく。
男女ともに50代後半までは伸び方が比較的ゆるやかだが、60代に入ると急激に伸び、男性は70代後半・女性は80代前半でほぼ天井となる。定年退職などで時間に余裕が持てるようになるとともに、心身の衰えに伴い受動的な時間の過ごし方を好むようになり、その対象として4マス(恐らくは特にテレビやラジオのような、より受動性の高いもの)を積極的に選ぶ様子がうかがえる。また60代後半以降で男女に大きな差が生じるのは、男女間における自由時間の過ごし方の根本的な認識の違いによるものだろう。
今回調査結果の2021年だけでなく、過去のデータも併せて動向を確認したのが次のグラフ。過去の調査では年齢階層の区分が直近分と異なる場合があり、その部分は空白となっているため、1986年と1991年では断片的な値しか反映されていない。
50代後半~60代後半を境目として、それより若い層(現役世代)は少しずつ4マスへの接触時間を減らしている一方で、上の層ではむしろ逆にわずかずつだが接触時間は長くなる動きを示している。特に若年層から中年層までの、今世紀に入ってからの短縮ぶりは劇的で、今世紀直後の2001年と比べて2021年では、おおよそ40代前半までは半分前後にまで短くなっている。そして逆に60代後半以上では長くなっている。
1日は24時間しかないので、何かに注力する時間が増えれば、その分他の時間を減らす必要がある。現役世代にとって4マスへの接触は、優先順位が低いと認識されつつあるのだろう。4マスを用いて情報を取得するか否かの観点では、高齢層と若年層のギャップが昔と比べて大きくなるのも無理はない。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
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