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≪いざ、逆転の秋へ≫コンクシェル、サスツルギ、リビアングラス、夏の上がり馬を総チェック!

勝木淳競馬ライター
著者撮影

いよいよ中央競馬は今週から秋競馬に突入する。開幕週に紫苑Sが組まれ、牡牝ともに三冠ロード最終章の戦いが本格化していく。

秋華賞はリバティアイランドの牝馬三冠達成なるか。一方、菊花賞はダービーが1~4着タイム差なしの接戦であり、突出した馬はいないものの、ダービー馬タスティエーラ、皐月賞馬ソールオリエンスを含め、近年になくダービーの上位陣が顔をそろえる豪華メンバーが想定されている。

そんな春の勢力に対し、一矢報いたいのが、いわゆる夏の上がり馬たち。春は上位戦線に残れなかったが、夏に古馬と条件戦で戦い、勝ち進み、最後の一冠に挑んでいく。競馬では秋は「逆転」の季節ともいわれる。特に3歳馬は人間でいうところの10代終わり、大人になるタイミングであり、この夏は成長できる大きなチャンスでもある。夏は人も馬も逞しくなる季節。トライアルを前に、夏の上がり馬について振り返ってみたい。

■昨年11頭に対し、今年は16頭

昨年の夏競馬期間(6月~9/4)で2勝クラスかつ芝1800m以上を勝ったのは11頭いる。ラーグルフのように春のクラシックに出走し、条件戦から再出発した馬もいるが、この中には春二冠不出走ながら、菊花賞2着、有馬記念2着と気を吐いたボルドグフーシュがいる。一方、今年の同期間、同条件を勝った3歳は16頭と昨年より多い。ダービー5着ノッキングポイントが新潟記念を勝つなど、比較的活発な状況にある。

■牝馬ではコンクシェル

牝馬では以下の5頭が該当する。

・7/1松島特別(牝)ソレイユヴィータ(父スクリーンヒーロー)

・8/19不知火特別 コンクシェル(父キズナ)

・8/26西海賞(牝)ピピオラ(父モーリス)

・8/27WASJ第4戦 フェステスバント(父キズナ)

・9/3釧路湿原特別 フェアエールング(父ゴールドシップ)

紫苑S出走のソレイユヴィータなどトライアル出走の場合、まずは重賞でどこまでやれるか、腕試しを見守りたい。この中で注目はコンクシェルだ。桜花賞に出走し、15着に敗れ、2勝目を7月の中京であげ、連勝で不知火特別を勝ち、3勝目をもぎとった。不知火特別は自ら先手をとり、後続を完封したが、そのラップは落ち込みが少なかった。

12.7-11.5-11.8-11.9-11.7-11.9-11.6-11.5-12.0

(前半1000m通過59.6)

序盤からほぼ一定のリズムを刻み、後半600mから仕掛け、最後は2着ジュンブルースカイに5馬身、3着はそこからさらに2馬身半と快勝だった。父キズナはディープインパクト産駒のなかでもロングスパートや緩急を問わない競馬を得意としており、コンクシェルもそれを体現した結果となった。秋華賞は京都内回りが舞台。最後に行われたのは2020年デアリングタクトが三冠を達成したレースだが、そのラップは、

12.5-10.8-11.8-12.2-12.3-12.7-12.1-12.4-11.9-12.1

(前半1000m通過59.4)

内回りで行われることもあり、秋華賞は序盤、ある程度のペースで入り、中盤以降もラップが落ち込まず、一定のリズムでレースは進んでいきやすい。不知火特別でコンクシェルが表現した「緩急のない走り」は秋華賞に向いている。リバティアイランドとの対戦では、春は大敗を喫してしまったが、この夏、小倉から再度、挑戦の狼煙をあげた。

■牡馬は2勝クラス芝2200mがキーになる

牡馬は6月の東京で勝ったキングズレインなど11頭が中距離で2勝クラスを突破した。最後の一冠は最難関の3000m戦であり、菊花賞挑戦をどのぐらい表明するか分からないが、キングズレイン(父ルーラーシップ)、サスツルギ(父ハーツクライ)、サヴォーナ(父キズナ)、ナイトインロンドン(父グレーターロンドン)、コスモサガルマータ(父ヴィクトワールピサ)、ウィズユアドリーム(父サトノダイヤモンド)などが菊花賞トライアルへの出走を予定している。

春二冠不出走の上がり馬は

17年1着キセキ(2勝クラス芝2000m1着)

17年3着ポポカテペトル(2勝クラス芝2200m1着)

18年1着フィエールマン(前走ラジオNIKKEI賞2着)

18年3着ユーキャンスマイル(2勝クラス芝2200m1着)

21年3着ディヴァインラヴ(2勝クラス芝2200m1着)

22年2着ボルドグフーシュ(2勝クラス芝2200m1着)

と菊花賞トライアル前に、2000m前後で結果を残した馬が目立つ。なかでも芝2200mを勝って2勝クラスを突破した点が特徴だ。神戸新聞杯を挟んだキセキ以外は、芝2200mを勝っていた。当てはまるのがサスツルギ、リビアングラスに、3勝クラスの芝2200mを勝ったドゥレッツァの3頭だ。ドゥレッツァは予定が出ていないが、サスツルギやリビアングラスは夏の上がり馬として菊花賞を狙ってくる。

サスツルギの前走木曽川特別は後半1000m11.7-12.0-11.9-12.1-12.5と早めにペースアップする中京らしい変則的な流れだった。ゴールに向けて失速していくスタミナ比べで2着シテフローラルに2馬身差をつけた。母のスノーパインといえば、19年スプリンターズSを勝ったタワーオブロンドンだが、シンコウエルメスの牝系はエルノヴァ(ステイヤーズS2着)など中長距離を走る馬もいる。そもそもスノーパインの父ダラカニは凱旋門賞馬で、キングジョージを勝ったコンデュイットの父。ミルリーフの血が母に入ったハーツクライ産駒といえば、リスグラシューが代表例だ。3歳秋から4歳にかけての成長も期待できる。

リビアングラスが逃げ切った前走阿賀野川特別は前半600m34.0、800m通過45.9と序盤が速かった。中盤で一旦13.0と極端にペースを落としながらも、その後は少し息を入れて走り、最後は11.6-11.8でまとめた。上記コンクシェルと同じキズナ産駒で、我慢強さが目につくタイプであり、菊花賞向きだろう。春は京都新聞杯でクビ、アタマ差3着に敗れ、ダービーへ進めなかった。反転の秋にしたい。

競馬ライター

かつては築地仲卸勤務の市場人。その後、競馬系出版社勤務を経てフリーに。仲卸勤務時代、優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)、AI競馬SPAIA、競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にて記事を執筆。近著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ(星海社新書)

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