鳩山由紀夫氏「北海道の地震はCCSによる人災」はなぜデマなのか?
鳩山由紀夫元首相が、2月21日の北海道厚真町の地震が起きた21分後に「地震は苫小牧での炭酸ガスの地中貯留実験CCSによるものではないか」、「CCSによる人災だ」とツイートしたことが北海道警察によりデマと認定されました。
鳩山氏はデマとの指摘に対し、「決して惑わすつもりはない。客観的な経験に基づいてCCSは地震を引き起こしていると述べた」と反論しています。
しかし、日頃からデマについて調査している筆者としては、今回のツイートはデマだと思います。
不確かな情報を災害直後に発信するのはデマ
なぜなら鳩山氏は「事実かそうでないかも分かっていない不確かな情報を、人々が正常に判断ができない災害の直後に発信している」からです。
鳩山氏が言う「CCSよって地震が引き起こされている」という説は、たしかに存在します(参考:1、2)。
しかし「今回の北海道地震がCCSによって引き起こされた」かどうかはまだわかりません。それは今から調べることであって、地震直後にわかるようなものではないからです。
鳩山氏は「論文がある」ことを根拠にしていますが、北海道胆振東部地震と苫小牧CCSの影響を調べた検討報告書では、「圧入地点(深さ約1.0~1.2km)と震源(同37km)が離れていること」、「圧入している堆積層と震源のある基盤岩層は連続性がない別の地層」であることなどを理由に関係がないとしています。
こちらの報告書を重視するのであれば、CCSは北海道地震と関係がありません。
このように関係があるとする話と、ないとする話の両方が存在しています。そのなかで苫小牧CCSが今回の地震を引き起こしたかどうかは、これから時間をかけて調査していくべき話です。
にもかかわらず鳩山氏は、「今回の地震はCCSによるものではないか」、「CCSによる人災だ」とツイートしています。
災害直後で人々が混乱している状況のなか、たとえ善意からであっても不安を煽る発言はデマと認定すべきです。
「長岡のCCSは中止になった」は間違い
また、鳩山氏はデマと認定されたことへの反論ツイート内で「国会論戦で中越地震・中越沖地震はCCSによって引き起こされた可能性があるとされ、長岡のCCSは中止となった」とも語っています。
こちらに関しては、明らかに間違っています。
というのも長岡のCCSは2005年1月11日をもって、予定されていた1万トンの圧入を終了しているからです。
長岡のCCSは2003年7月7日より圧入が開始され、2004年10月23日に発生した新潟県中越地震で商用電源を喪失したことで圧入が自動停止されました。その後、12月6日より圧入を再開。2005年1月11日に予定していた貯留量1万トンを達成したため、圧入運転を終了しました。
つまり予定の貯留量を達成したため終了したのであって、中止ではありません。
なお、新潟県中越沖地震が発生したのは2007年7月16日と、CCSの圧入終了から約2年半後であることも書いておきます。
時系列にするとこうです。
- 2003年07月07日:圧入開始
- 2004年10月23日:新潟県中越地震発生、圧入停止
- 2004年12月06日:圧入再開
- 2005年01月11日:予定の貯留量1万トン達成、圧入終了
- 2007年07月16日:新潟県中越沖地震
「中越地震・中越沖地震はCCSによって引き起こされた可能性があるとされ、長岡のCCSは中止となった」では流れが合いません。
おそらく鳩山氏のなかでは「地震はCCSによるもの」との考えが固まってしまっています。
それはそれで個人の考えなので構わないのですが、人々のためを思って行動しているのであれば災害直後に不安を煽ったり、調べればすぐにわかるような誤った情報を流すことはやめて欲しいところです。