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PS5の年間出荷計画 2500万台→2100万台に 大幅減の意味は

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:ロイター/アフロ)

 ソニーグループの2024年3月期第3四半期が発表され、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」の年間出荷計画(2023年4月~2024年3月)が、当初の2500万台から2100万台前後に下方修正されました。三つのポイントを挙げて考えてみます。

 ゲーム機の年間出荷台数ですが、基準になるのは「2000万台」です。累計1億台を売ったゲーム機は、この数字に一度は届いています。

 従って一つ目のポイントは、PS5がまず年間2000万台を死守できるかです。今年度の9カ月の出荷台数は計1640万台。つまり第4四半期(1~3月)で360万台を売れば大台に届きます。これまでの四半期出荷数の実績に加え、経営陣は1月の販売動向を把握しているわけで、大きく外すことはないでしょう。仮に外れたら、ゲーム事業はソニーの稼ぎ頭でもあるため、投資家の見方も厳しいものになるかもしれません。

 二つ目のポイントは、なぜ当初計画の2500万台という、ハードルの高い数字をはじいたのかです。年間2500万台は、かつて大ヒットした任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」の全盛期レベルの売れ行きで、累計1億台を突破したPS4でも、年間2000万台が最高でした。PS5の前年度(2022年4月~2023年3月)のPS5の年間出荷台数は1910万台で、当時の第3四半期(2022年10~12月)だけで710万台を達成しましたから、当時はかなりの勢いがあったにしても、少し強気すぎた感じはします。

 不幸だったのは、世界的に物価高が続いており、特に2023年秋にPS5の実質値上げをせざるを得なかったことでしょう。業績の振れ幅が大きいゲームビジネスの難しさが出たとも言えます。

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 ただし、年間出荷台数の予想を大きく外すのはゲームビジネスではありうることで、任天堂でもありました。ニンテンドースイッチの3年目の年間出荷計画は2000万台でしたが、実際は1695万台。300万台以上の未達でした。なおスイッチの5年目は、当初1900万台の計画に対して、二度の上方修正をして2650万台に設定したのですが、最終的には2883万台を売りました。振れ幅の大きさが分かってもらえるでしょうか。

 最後のポイントは、PS5の「値下げ」が少なくとも直近は期待できない中で、台数を売り続けられるのか……ということ。背景には、半導体の価格上昇、世界的な価格高騰があります。PS4がそうだったように、ソニーのゲーム機は時期の経過とともに値下げをして、普及の後押しをしていたのです。今回はその手が使えない……と決算で経営陣も認めています。

 となると、ビジネスでの工夫はもちろんですが、日米欧のゲーム機の主要市場以外の開拓が、長い目で見ると重要になるでしょう。新たな有力市場を育てられると先々有利になります。

 ともあれ、まずは目先の話でして、下方修正した年間出荷計画を死守できるかです。売上高、営業利益とも大きいゲーム事業は、グループの“要石”であるだけに、プレッシャーがかかりそうです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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