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みんなが一斉に休むことは必要なのか?

伊藤伸構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与
(写真:REX/アフロ)

今回の10連休、初日から最終日に至るまで、全国各地で「混雑」がニュースになっていた。

かなり前から「日本人は休日が少ない」と言われてきた。その一方で、プレジデント・オンライン(2017年5月15日号)の中にある「世界28ケ国有給休暇・国際比較調査2016」によると、日本は「祝祭日」が先進国で最も多い。同じ調査によれば有給休暇の消化率が日本は50%でかなり下位に位置する。

自分の都合では休みにくいから、ルールを作ってみんなで一斉に休むことを制度が推奨しているように思う(祝日は「国民の祝日に関する法律」によって決められている)。

あるニュースで、男性が「自分はサービス業だからGWはほとんど休みがなく子どもが他の家と比べて寂しがっている。ただ年間を通しての休みは少ないわけではないし、子どもの振替休日などに合わせて平日に休めるので、家族での時間も少ないわけじゃないんだけどね。」

と言っていた。

昔から比べるとだいぶ変わってきたとは思うが、まだ「みんなで休む」という集団意識があるから、そこから溢れると疎外感を持ってしまうのではないだろうか。

真の働き方改革は一律性を打破すること

昨年6月に成立し今年4月から施行されている「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の趣旨は「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、 多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずる。」(首相官邸ホームページより)とされている。

「それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」を目指すからこそ、すべてを一律に考えるのではなくて、休みたいときに休めるような文化や風潮を作ることが必要ではないのだろうか。これは休日のことに限らず、定時に帰りたい人は帰れる、逆に例えばこの1週間は徹夜してでも仕事したい人はできるような環境にすることも同じだろう。

その観点で考えると、先の働き方改革関連法により今年度からスタートした、すべての企業による年5日の年次有給休暇取得の義務化について、有給休暇を取りたくても取れない環境にある労働者にとっては必要だし良いことだとは思うが、例えば年末年始休暇の数日を出勤日にしながら有給処理する予定の企業もあると聞いているので、本質的な課題解決とまでは至っていないように思う。

私の知人の会社の経営者が、先述のように日本は国民の祝日が多いことを理由に「有給休暇が取りにくくても休みが少ないわけじゃないから(有給休暇の取得率が低いことを)深刻に考える必要はない」と言っていたと聞いたことがある。制度を言い訳にして改革を停滞させて良いわけでは当然ない。

課題解決の本質は、一つは、経営者や国民一人ひとりが休みをはじめとした働き方の多様性を認められるような意識を持つこと、もう一つは、例えば有給休暇を取るにあたって同僚との共有を密にしておくなど、多様性を認めてもらう側も仕事が円滑に進むための方策を考えることではないかと感じる。

その意味では、そもそもブラック企業かどうかを決めるのも一律基準ではなく、業種や従業員の考えによっても異なるのではないだろうか。

最後に、「働く」ことと生きることや生活そのものを一緒に考えられるような働き方をしたいと思うし、今の自分がそうできていることはとても恵まれていると思う。

構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与

1978年北海道生まれ。同志社大学法学部卒。国会議員秘書を経て、05年4月より構想日本政策スタッフ。08年7月より政策担当ディレクター。09年10月、内閣府行政刷新会議事務局参事官(任期付の常勤国家公務員)。行政刷新会議事務局のとりまとめや行政改革全般、事業仕分けのコーディネーター等を担当。13年2月、内閣府を退職し構想日本に帰任(総括ディレクター)。2020年10月から内閣府政策参与。2021年9月までは河野太郎大臣のサポート役として、ワクチン接種、規制改革、行政改革を担当。2022年10月からデジタル庁参与となり、再び河野太郎大臣のサポート役に就任。法政大学大学院非常勤講師兼務。

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