一般政府歳出の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)
日本は対GDP比において国民負担率が低く、結果として一般政府(中央政府だけでなく地方政府や公的な社会保障基金を合わせた公的機関の総体)の金銭的な規模が小さなものとなっている、いわゆる「小さな政府」との指摘がある。今回は一般政府の支出、つまり歳出側からその実情をOECD(経済協力開発機構)のデータベースOECD.Statの公開値を用いて確認する。
次に示すのは主なOECD加盟国における一般政府歳出の対GDP比。収録されている実データの年次最新値は2018年なので、2018年分の値を用いる。
「主な」との表記があるのは実のところ、データベース上ではOECD加盟国のうちチリ、メキシコ、トルコの3か国はデータが未収録のため。これらの国では一般政府歳出の対GDP比が低めであることが予想されるため、OECD平均値も実情としてはもう少し低いものになるはずだ。
そのOECD平均値は40.2%。つまり平均として国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値の総額の4割ほどが、国の維持発展のために一般政府から供出されていることになる。
値がもっとも高いのはフランスの56.0%、次いでフィンランドの53.1%、ベルギーの52.1%と続く。ユーロ圏の平均も併せ、一般政府歳出の対GDP比が高い国は欧州圏に集中している感はある。他方、アメリカ合衆国やオーストラリアのような非欧州圏では低め。日本は37.9%でアメリカ合衆国の次に高い値。OECD平均よりは低く、G7平均(43.8%)よりかなり低い。日本が「小さな政府」であることが改めて確認できる次第。
G7該当国であるカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ合衆国、そして国民負担率の上で租税負担率と社会保障負担率の関係が特異な国としてオーストラリアとデンマーク、さらに日本の近隣国である韓国、OECDの平均値とG7の平均値について、取得可能な値をグラフに描き起こしたのが次の図。
比較できる限りでは日本は昔も今も、一般政府歳出の対GDP比は低い、「小さな政府」状態が続いていることが分かる。1970年代と1990年代の2度にわたり大きな上昇があったものの(もっとも1990年代の上昇はその後20年近くの間の下落で帳消しとなり、2010年前後で再び上昇に転じている)水準としては低いまま。
日本の「小さな政府」状態は昨日今日に始まった話では無く、昔から継続しているまでのお話に違いない。もっともアメリカ合衆国やニュージーランドも似たようなものなので、国の特性によるところが大きいのだろう。カナダは例外で、1990年代に大きく下落するまでは上昇の一途にあり、欧州圏と似たような「大きな政府」状態だっだのだが。
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