感染症を媒介するマダニ、「刺されない」ことが重要 野外に行く前後のチェックポイントとは
国立感染症研究所から、6月23日に、国内初かつ世界初となる「オズウイルス感染症」が報告されました。茨城県在住の70代女性が感染し、亡くなられました。現時点でオズウイルスは日本以外では見つかっていないということです。※
今回は、このオズウイルスやSFTS(重症熱性血小板減少症候群)、ライム病などの感染症を媒介する可能性のあるマダニに刺されないようにする対策をお教えします。
どんな場所に生息しているのか
マダニは、吸血源であるシカやイノシシなど野生生物が出る環境に多く生息しているのですが、民家の裏庭や裏山、畑など身近なところにも生息しています。
以前、民家がすぐ傍にある道路脇の草むらでマダニを探したことがあります。マダニは葉っぱの裏にかなりたくさん付いていました。そんなに山の中ではない草むらにもマダニは生息しています。
どうやって人を見つけているのか
マダニは潜んでいる草むらなどで、吸血できる動物や人を待っています。視力としては、暗いか明るいかぐらいしかわからないようですが、前脚2本が触角の役割をしていて、空気中の二酸化炭素を探知できます。動物や人が近づくと、呼気を感知し、草の先に移動し、動物や人に素早く乗り移ります。そして、落ち着いて吸血できるところを探すために這いまわり、いい場所を見つけると口器を皮膚に刺し吸血します。
感染症から身を守るには、「刺されない」ことがいちばん重要です。
野外に行く前と帰ったあとのチェックポイント
野外に行く時は?
・長袖、長ズボンを着用する。
・首にはタオルなどを巻く。
・ズボンの裾を靴下の中に入れる。
・マダニを見つけやすいように、白っぽい明るい色の服を着用する。
・虫よけ剤を効果的に使用する。
肌の露出をできるだけ少なくして、マダニが体の中に入ってこられないようにします。半袖、短パン、サンダルなどはNGです。
どうしても露出してしまう肌には虫よけ剤を塗りましょう。購入の際は適応害虫にマダニが記載されているかを確かめてください。製品には、スプレー以外にもシートタイプやアルコールフリーのものもありますので、肌のタイプや使用場面によって選んでください。製品もしくは製造元のホームページ等をご確認ください。
以前、飼育しているマダニ(感染症は持っていません)を使って、虫よけ剤の効果を検証したことがあります。有効成分にディート(DEET)が入っている虫よけ剤を腕に塗布し、そこに3cm角の布に乗せたマダニを置くと、その布から外に出ようとしません。明らかにディートを嫌がっている様子です。3分経っても布から出てこないので、無理やりマダニを腕に乗せたところ、嫌がって腕から落ちてしまいました。マダニは虫よけ剤を嫌がるので、肌に塗ることでマダニが付かない効果があります。
虫よけ剤を塗るコツは、ムラなくたっぷり塗ることです。スプレー後、手できちんと塗り広げましょう。また、汗などで流れるので、汗をかいたら塗り直しをしてください。
野外から帰った時は?
・上着は家の外で脱ぎ、マダニの付着がないか確認する。もし付いていたら、素手では触らず殺虫剤やガムテープなどを使って駆除する。
・帰ってすぐにシャワーを浴びるか入浴する。
マダニがまだ吸血前なら、皮膚に吸着していないので流すことができます。
・身体にマダニが付いていないかチェックする。
特に、脇の下、足の付け根、首、膝の裏、脇腹、髪の生え際などに付きやすいので、自分では見えないところは家族に見てもらいましょう。
マダニは、3~10日という長い間、皮膚の上で吸血するので、落ち着ける場所を探すのに時間がかかるようです。場所を探している間なら取り除くことができます。
もしもマダニが吸着していたら
気をつけていても、マダニに刺されてしまうことがあるかもしれません。もしも刺されていることに気付いた時は、無理に取り除こうとするとちぎれた口器が皮膚の中に残る可能性が高いので医療機関に行くことをお勧めします。また、マダニに刺された後、数週間は、体調の変化に注意し、発熱等の症状がみられた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
最後に…
ウイルスを持ったマダニに刺されないことがいちばん大事なのですが、残念ながら、マダニの見た目で感染症を持っているかどうかは判断できません。
また、何回もマダニに刺されることで牛肉アレルギーを発症する方もいらっしゃいます。
マダニに刺されても自覚症状がほぼなく、気付かないことがほとんどのようです。マダニがいそうな野外へ出かける時は、服装に気をつけて、帰った後もチェックするという習慣をつけることで、対処できます。
これから夏に向かってキャンプなどで野外へ出かけることが多い季節になってきます。自分の身を守るためには、正しい対処をしていただきたいと願います。
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