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マスターズ2日目、順位を上げた松山英樹と順位を下げたタイガー・ウッズ。「明日こそはビッグデー」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

マスターズ2日目は、上位陣に大きな動きが見られ、まだ2日目だというのに、まるで「ムービングデー」のようだった。

昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったタイガー・ウッズは、508日ぶりの実戦復帰を果たし、初日は1アンダー、10位タイで好発進したが、2日目は出だしの5ホールで4ボギーを喫し、あっという間にリーダーボードから滑り落ちていった。

そんなウッズとは対照的に、ディフェンディング・チャンピオンとして臨んでいる松山英樹は、イーブンパー、19位タイで2日目を迎えると、出だしの3ホールで2バーディーを奪い、あっという間にリーダーボードを駆け上がった。

ウッズは前日、「チップ&パットでスコアリングをしたい」と語っていたが、2日目序盤の大きな後退は、どれも「チップ&パット」が振るわなかったことが直接的な原因だった。

長い戦線離脱の間に試合勘が損なわれたことが目に見える形で露呈したのかもしれない。完治していない右足で戦っていたウッズにとって、強風の下でのプレーは肉体的に大きなハンディキャップになっていた。同組のルイ・ウエストヘーゼンが2日目の朝に棄権したため、ツーサム(2人)のラウンドとなって、ペースが早まったことも、肉体が万全ではないウッズにとっては厳しい要素となっていた。

だが、さまざまな苦境に直面するであろうことは百も承知で、ウッズはこのマスターズに臨んでいるはず。だからこそ、次々にスコアを4つ落としても、彼は決して諦めず、じっとチャンスを待っていた。

振るわなかったチップが8番でついに冴え、グリーン手前から見事に寄せて、この日、初めてのバーディーを奪った。その手ごたえは、その後の好打を呼び込み、10番ではピンそばにピタリと付けて、さらなるバーディーを奪った。

11番、12番は連続ボギーを喫したが、13番では前方でプレーしていたブライソン・デシャンボーとキャメロン・スミスがトラブルに陥って時間がかかっていたため、ウッズはティグラウンドで、しばし待機となった。その間、ウッズは腰を下ろし、痛みが増していた右足を休めることができた。持ち合わせていたスナック類を口にしてエネルギーも補給。

期せずして得たその「待ち時間」が転機になったのだと思う。13番はクリーク越えの3打目をピン1メートル半に付けてバーディー。14番は3メートルを沈めて、連続バーディー。一時は通算3オーバーまで後退し、予選通過さえ危ぶまれたが、ウッズは盛り返し、74で回って、通算1オーバーでフィニッシュ。

「風が強かったし、ひどいスイングもしたけど、誰にとってもタフなコンディションであり、みんな苦しんでいるんだと自分に言い聞かせながら戦った。明日は今日より寒くてタフなコンディションになる。レッド・ナンバー(アンダーパーを示す赤い数字)になることを目指して頑張りたい。サンデー・バック9でチャンスに付けられるよう頑張りたい」

一方の松山は、2番、3番の連続バーディー後は、6番でバーディー、7番でボギーの一進一退となり、そこから先は、ひたすらパーを重ねるゴルフとなった。だが、見事なショートゲームでパーを拾い続ける松山の姿には悲壮感はまるで感じられず、むしろ虎視眈々と獲物を狙う動物的な鋭さが感じ取れた。

15番(パー5)では、その鋭い感覚と感触をフル活用し、ロングアイアンを巧みに操り、2打でグリーンを捉えて、バーディー獲得。4バーディー、1ボギーの69で回り、通算3アンダー、2位タイで2日目を終え、「3アンダーは悪くないと思う」と納得の表情を見せていた。

ウッズは10位タイから19位タイへムーブダウン、松山は19位タイから2位タイへムーブアップ。まさに順位が大きく動くムービングデーの様相だったが、この日、最高のゴルフで最大の動きを見せたのは、一気にスコアを5つ伸ばし、単独首位に浮上したスコッティ・シェフラーだった。

2月と3月の2か月間で、初優勝と2勝目と3勝目を挙げ、一気に世界ランキング1位へ上り詰めたシェフラーの勢いは、とどまるところを知らない様子だ。彼の勢いは、一時的なものではなく、天才少年と呼ばれたジュニア時代からの蓄積が、ようやく花開いたものゆえ、水を得た魚の状態で、彼の勢いはさらに増していきそうな気配だ。

そんなふうに上位選手が大きく動き、目まぐるしかった2日目は、まるでムービングデーのような金曜日だった。

だが、ウッズが言った通り、気温が下がり、風も強まる予報が出ている明日3日目は「クールでタフな1日になる」。

「明日は、ビッグデーになる」

やっぱり、土曜日こそが、本当の意味でのムービングデーにきっとなる。マスターズの勝敗を分けるのは、決勝ラウンドとなる土曜日、そして日曜日だ。

「サンデー・バック9を優勝のチャンスを感じながら迎えたい」

ウッズも、松山も、シェフラーも、みなそう願いつつ、明日のムービングデーに挑む。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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