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大流行のインフルエンザB型「熱が出にくいって本当?」「ワクチンは?」いま知っておきたいこと

市川衛医療の「翻訳家」
インフルエンザウイルス(透過型電子顕微鏡)(写真:アフロ)

 いま、インフルエンザが大流行しています。

 国立感染症研究所が26日に発表した最新データ(1/15~1/21分)によれば、全国の医療機関から報告されたインフルエンザ患者の数は1機関あたり51.93人と、前の週(26.44人)から2倍近くに急増。1999年の調査開始以来、過去最多になりました。

 今シーズンの特徴として、例年の同時期に比べ、インフルエンザB型の広がりが早いことが指摘されています。

東京都、インフル流行警報 B型が増加 (FNN 01/25 20:19)

特徴としては、2017年は25%程度だったインフルエンザB型が、およそ4割と多く、インフルエンザが原因の学級閉鎖や休校は、今シーズンの累計で、2017年の同じ時期を大きく上回る、1,043施設にのぼっている。

出典:FNN 東京都、インフル流行警報 B型が増加 01/25 20:19

 この「多い」といわれるインフルエンザB型、一体どんなものなのでしょうか?

 ネットで「インフルエンザ B型」と検索すると色々な情報が見つかりますが、出典(どんな根拠を基にしているか)が明記されていないものがほとんどで、信頼できるか判断できません。

 そこで、いま知っておきたい素朴な疑問について、信頼できそうなソースのある情報を調べてみました。

インフルエンザB型って、そもそも何?

 厚生労働省によるパンフレット「インフルエンザの基礎知識」(※1)によれば、人間のインフルエンザの原因となるウイルスは、A型・B型・C型の3種類に分類されます。このうちA型とB型が、大きな流行の原因になります。

 私たちの体には、ウイルスなどから身を守る「免疫」というシステムが備わっています。A型とB型は、その免疫が働く際に大切な「抗原」という場所の特徴が異なっています。

 そのため、A型とB型が同時に流行している現在のような状況下では、いちどA型のインフルエンザにかかったとしても、次にB型のウイルスに感染した場合、免疫システムの対応が遅れ、また強い症状が出てしまうことがあります。

「熱が出にくい」「腹痛・下痢が多い」って本当?

 ネットで「インフルエンザB型」と検索すると「A型と比べて症状が軽め(熱が出にくい)」とか、「腹痛・下痢が多い」などの情報を記載しているページが見つかります。

 ただ2013年に発表された、インフルエンザB型に関する世界中の研究(日本を含む)をまとめた論文(※2)によれば「A型とB型で症状の出かたや重症度にほとんど違いはない」と結論されています。

 また、2015年に発表された論文(※3)でも「A型とB型で、臨床的な症状の特徴は変わらない」とされています。

 そもそも、A型に感染しても熱が出ないことはありますし、腹痛や下痢が起きることもあります。症状の違いについて、あまり気にしすぎる必要はないのかもしれません。

ワクチンはどうなっているの?

 A型とB型で性質が違うとすると、ワクチンを打っていても効果がないんじゃないの?と心配になりますが、現在のインフルエンザワクチンはB型もカバーしています

 インフルエンザB型には、大きく分けて2つの系統(山形系統/ビクトリア系統)があるのですが、以前のワクチンは、そのうち1つしかカバーしていませんでした。しかし2年前から新しいタイプに切り替わり、現在のワクチンは両方をカバーするようになっています(※4)。

かからないためにはどうすれば良いの?

 インフルエンザB型に対し、特別な予防対策はあるのでしょうか?

 厚生労働省(※5)のほか、アメリカCDC(※6)、イギリスNHS(※7)が一般向けに出している情報を確認したところ、特にB型のみに推奨されている予防対策はありませんでした。A型・B型に関係なく、インフルエンザの予防として一般的に推奨されている対策を行うのが良いようです。

 厚生労働省のインフルエンザQ&A(※5)によれば、以下の対策が推奨されています。

■ 流行前の対策

 □インフルエンザワクチンを接種

■流行時の対策

 □咳エチケットの励行

 □外出後の手洗い等

 □適度な湿度の保持

 □十分な休養とバランスのとれた栄養

 □人混みや繁華街への外出を控える

(文献5より引用)

 世界的に見て、流行時の対策の基本とされるのが「手洗いの励行」です。大人はもちろん、特に小児が手洗いの習慣をつけると効果的だとされています(※8)。

 手洗いについては、適切な方法で「ハッピーバースデーの歌を2回歌う(およそ20秒)」くらいの時間をかけると良いとされています。

 どう洗えば上手にウイルスを減らせるのか、下の動画(※9)が非常にわかりやすく示していますので、良かったら一度見てみてください。

(参考文献)***********

1)厚生労働省「インフルエンザの基礎知識」平成19年12月

2)The burden of influenza B: a structured literature review.

Paul Glezen W et al. Am J Public Health. 2013 Mar;103(3):e43-51

3)Clinical Characteristics Are Similar across Type A and B Influenza Virus Infections

Mosnier A et al. PLoS One. 2015 Sep 1;10(9)

4)厚生労働省通知 健発0508第1号(平成27年5月8日)

5)厚生労働省 インフルエンザQ&A 2018年1月27日閲覧

6)CDC Prevent Seasonal Flu 2018年1月27日閲覧

7)NHS Choices Flu 2018年1月27日閲覧

8)Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses

Jefferson T et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul 6;(7)

9)How to wash your hands NHS Choices 2018年1月27日閲覧

医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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