高齢の親の衰えや変化にどう気づく? 年末年始の帰省時に確認したい5つのこと
親の気持ちに配慮しながら、生活や心身の状態をチェック
今年末は、新型コロナの感染が落ち着いているからと、久々に帰省する人も多いだろう。高齢の親は元気なようでも、徐々に心身が衰えていく。久しぶりに会うと、その変化に驚くことがあるかもしれない。ここでは、コロナ禍での新しい生活様式による影響も考慮しつつ、気をつけたいチェックポイントを5つ紹介したい。
その前に伝えておきたいことがある。
親子であっても、親の気持ち、生活に土足で踏み込まない配慮が必要だということだ。親にもプライドがある。子から気にかけてもらえるのはうれしくても、心配される=能力が衰えたと思われている、と感じ、受入れがたく思う人もいる。
子の配慮が足りず、プライドを傷つけられたと感じた親が態度を硬化させ、子の言うことに耳を貸さなくなるケースは、実は多い。子から見ればサポートが必要でも、いつまでも親らしくありたい、威厳を保ちたいと思う親もいる。そういう親には、その思いに配慮した対応を心がけたい。
では、チェックポイントを見ていこう。
【1】家の中の様子に変化はないか
きれい好きでいつも家の中をきちんと整えていた親だったのに、部屋が雑然としている。そう感じたら、片付けようという様子は見られるのに片付けられないでいるのか、片付ける気がないのかを見極めよう。
知人友人との交流が多かった親も、コロナ禍で人を招き入れるのを控えていたかもしれない。他者との交流が減ったことが、心身に影響を与えている可能性もある。
「家の中の様子、ちょっと変わったね」など、やんわりと声かけをして、親がどう答えるか反応を見るのもいい。「そんなことはない!」と拒否的な反応なら、そのときは無理に踏み込まないことだ。「困っていることがあったら力になりたいと思っているから、声をかけてほしい」と、サポートしたいという気持ちだけ伝えておこう。そうすれば親の方からも相談しやすくなる。
【片付けられない場合】
膝が痛い、腰が痛い、手が上がらないなど、体の不調によって片付けられない場合がある。体の具合を聞いてみよう。体の機能の低下がある場合、介護保険の要介護認定を申請すれば、要介護度がつくかもしれない。申請の方法などについては、実家の近くの「地域包括支援センター*」に相談してみよう。
片付け始めたと思ったら、すぐに別のことに気が行って集中できず、片付けられないこともある。以前はそんなことはなかったのに、と感じたなら、もしかすると認知機能が低下して、集中力が続かないのかもしれない。
認知症の可能性を考えて受診するなら、まず、かかりつけ医に相談してみよう。より詳しい検査が必要なら、「神経内科」「老年精神科」などへの紹介状をもらうとスムーズだ。認知症かもしれない親への対応については、こちらの記事も参考にしてほしい。
かかりつけ医が特になく、最寄りの受診先がわからない場合は、「地域包括支援センター」に相談するといいだろう。
*地域包括支援センター……中学校区に1カ所ある、高齢者の介護や困りごとについての総合相談窓口。エリアごとに担当のセンターが決まっているので、インターネットの検索サイトで、実家がある市町村名と「地域包括支援センター」を入力し、担当のセンターを調べるといい。
【片付ける気がない場合】
認知機能が低下し、散らかっているという感覚が乏しくなっているのかもしれない。やはり、認知症の可能性を考えた方がいいだろう。
いずれにせよ、部屋が散らかり、雑然としていると、家の中での転倒・骨折のリスクが高くなる。できるだけものを減らして、つまずいて転ぶことがない環境にしておきたい。
【2】心身の状態はどうか
感染を恐れ、極力外出しないようにしているという高齢者は多い。散歩もしていないなど外出機会の減少が、高齢者の心身に与える影響は大きい。活動量の低下でフレイル(虚弱状態)になっていないか、歩行や立ち上がりの様子をよく見てみよう。家の中でもあちこちにつかまりながら歩いているようだと、転倒リスクが高まっている可能性がある。
また、他者との交流の減少によって日々の脳への刺激が乏しくなり、認知症になったり症状が進行したりしている場合もある。同じことを何度も聞いたり言ったりしないか、つじつまの合わない話をしていないか気にかけながら会話しよう。
とはいえ、心配な様子があっても、くれぐれも「ぼけたんじゃないの?」などとは言わないことだ。認知症の初期は、実は本人が一番物忘れを気にし、不安に思っていることが多い。子から指摘されたら傷つくし、「そんなことはない」と否定に躍起になるかもしれない。前述のこちらの記事を参考に、穏やかに対応してほしい。
親に持病があるなら、今、体の状態はどうなのか、医者から何に気をつけるよう言われているか、まず本人に確認してみよう。そのとき、あやふやな答えしか返ってこないようなら、一度かかりつけ医の受診に付き添うといい。
しっかりしているようでも、年齢が高くなると、医師の説明を十分理解できていないこともある。本人が子どもに付き添われるのをいやがる場合は、事前に医師に連絡の上、本人とは別に挨拶に行って状態を確認するといいだろう。
【3】近所づきあい、趣味の活動はできているか
新型コロナの感染が広がってから、近所づきあいや趣味の活動はどの程度できているかを聞いてみよう。
今も、「ずっと友だちとは会っていない」「趣味の講座も行けていない」というならちょっと心配だ。活動的だった人ほど、外出や人との交流を控えざるを得ないコロナ禍の状況は心身に堪える。せめて、友だちと電話でのおしゃべりを楽しむよう促そう。前述の地域包括支援センターでは、感染対策を施した体操教室など、交流の場を設けているところもある。そうした外出の場を探して、親に紹介してあげたい。
また、パソコンやスマートフォンを使える親であれば、Zoomなどのビデオ通話システムを活用したい。使い方を教えて設定し、友だちとビデオ会話を楽しめるようにしてあげるといい。子が自宅に帰ってからも、子や孫とのビデオ通話を楽しめれば、離れて暮らしていても気分が明るくなるだろう。
【4】冷蔵庫に消費期限切れ食品がたまっていないか
外出機会を減らしている高齢者には、買い物にもあまり出かけずまとめ買いにしているという人も多い。まとめて買ってきた食品をうまく使い切れればいいが、気がついたら消費期限切れということも。そしてそれが捨てられないまま、冷蔵庫に入ったままになっていることもしばしばある。
帰省したら、冷蔵庫の中を確認して、消費期限切れの食品を処分しておきたい。調味料などであれば、それほど大きな問題はないかもしれないが、生鮮食品などは食中毒の恐れがある。
「もったいない」といって処分したがらない高齢者も多いので、見つけたときはこっそり処分した方がいいかもしれない。同じ食品がいくつも入っている場合は、認知症の可能性もあるので注意しよう。
【5】処方薬の飲み忘れがないか
処方薬がきちんと飲めているかどうかも確認しておきたい。処方された日から計算して、大幅に薬が余っているようなら飲み忘れが多いということだ。医師に相談すると、1日3回服用の薬を、朝晩の1日2回や1日1回の薬に変更してもらえることもある。
また、複数の薬を服用している場合は、特に飲み間違いが起こりやすい。医師に相談し、飲み間違いが起こらないよう「一包化*」してもらおう。
*一包化……朝昼晩それぞれに飲む薬を、包装から出した錠剤やカプセルの状態で小袋にひとまとめにすること。医師の指示により、薬局で「12月31日 朝」など、服用1回分ごとに日付などを印刷した小袋にまとめて出してもらえる。ただし、薬が包装から出されているので、指示通りに飲みきらずに取っておくと、薬が変質する恐れがある。注意したい。
【飲み忘れが多い場合】
飲み忘れ、重複服用を防止するグッズに、月~日の各曜日×朝・昼・晩・寝る前の28のポケットが付いた「お薬カレンダー」というものがある。ポケットに服用1回分の薬を入れ、飲み終えたら薬の飲み殻を入れておけば、飲み忘れも重複服用も避けやすい。薬局などに売っているので、活用したい。
【番外】できれば家計、資産の状況の確認を
帰省した際に、聞きにくいけれど聞いておきたいのが、家計や資産の状況だ。貯蓄額や年金受給額、負債額、生命保険、月々の生活費、通帳や印鑑、保険証の保管場所などは、できれば親がしっかりしているうちに把握しておきたい。
親が急に倒れたり、認知症の症状が出てきたりしたとき、家計の状況、通帳等の保管場所がわからないと、医療費や介護費をどうやって支払うかなど対応が難しくなるからだ。
しかし、お金の話はデリケートだ。聞こうとすると、「今から遺産目当てか!」など怒る親もいる。そう言われると、つい言われた側も腹を立ててしまいがちだが、親の怒りに過剰に反応しないことが大切だ。
少し時間をおいてから、「何かあったときに支えていきたいと思っているから、元気なうちに教えてほしい」と、冷静に誠意を持って話してみよう。一度の帰省では、教えてもらえないかもしれない。しかし、親を思う気持ちが伝われば、いずれは理解してもらえるだろう。
以上、帰省時に確認しておきたいことをまとめてみた。
電話で話したりビデオ通話をしたりしていても、実際に実家に戻り、家の状態を見たり親と話したりすると気づくことは多いものだ。親に何かあってから、「もっと気にかけておけばよかった」と嘆く子世代の声は多い。そういう日がいつ来るかはわからない。オミクロン株の流行次第で状況がどう変化するか見通せない今、せっかく帰省できるこのチャンス、後悔することがないよう行動したい。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】