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元E-girlsから裏社会を取材する役で女優デビュー。杉枝真結が演技に活かしたアーティスト時代の経験

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)映画「コネクション」製作委員会

元E-girlsで、グループ脱退後はモデル中心に活躍してきた杉枝真結。女優デビュー&主演の映画『コネクション』が公開された。暴力団、薬物、風俗、オカルトと裏社会を果敢に取材するルポライター役で、様々なトラブルに出くわしながら飄々と突き進むキャラクターを好演。初の本格的な演技で、いきなりの大役にどう取り組んだのか? アーティスト経験が意外な形で活きたという。

お芝居は歌に似てると思ってました

――ダンス&ヴォーカルからモデルと活躍されてきましたが、演技にはいつ頃から興味を持っていたんですか?

杉枝 アーティスト時代から、すごく興味ありました。歌で4分くらいの中で感動していただいたり、笑顔になってもらったり、泣いてくださる方がいるのは、お芝居と似ていると思っていて。そういう表現をするのが好きなんです。

――映画やドラマも観ていたんですか?

杉枝 王道の『花より男子』とか、めちゃめちゃ観ていました。でも、私の中で一番刺さったのは、映画の『僕の初恋をキミに捧ぐ』です。私が中学2年のときに公開されました。幼い頃は命の大切さを表現した作品は、感情移入して1日じゅう苦しくなるので、なかなか観られなかったんです。でも、『僕の初恋を~』は青春恋愛ものの何気ない日常の中で、命の尊さに触れられていて。今でも年に1~2回は観ています。

――好きな女優さんもいました?

杉枝 ずっと好きなのは石田ゆり子さんです。女優さんがおきれいないのは言うまでもありませんけど、石田さんは何歳になっても愛らしい印象があって。誰でも年齢は重ねるもので、年相応にかわいらしく生きられたら一番素敵だと思うんです。石田ゆり子さんには、そういうイメージがあります。

撮影/風間直人
撮影/風間直人

感情を込めすぎると映像で伝わらなくて

――演技に関しては、レッスンを受けたりはしていたんですか?

杉枝 全然受けてなくて、お芝居が中心の会社さんとご一緒するようになってから、ワークショップに参加させてもらいました。でも基本的には、良いのか悪いのか、自分の感覚で演じています。あとは小さい頃から小説が好きで、よく読んでいるのも役立っているかもしれません。

――基本は現場で磨く派?

杉枝 そうですね。いろいろなやり方があると思いますけど、私は若い頃から、大きいステージでも本番にボンと突っ込まれることが多かったので。練習もたくさん積みつつ、すべては本番から。練習を10回やるより、本番の1回で学べる感覚があって、それは今、お芝居の現場でもよく感じます。

――アーティスト時代の経験は、演技でもバックボーンになっていますか?

杉枝 MVを撮っていたときの感覚で、「このアングルだとこの画角で、こんな感じで撮っているんだろうな」というのは意識します。「ここで目線が動くと違う感情が乗ってしまうから、まばたきをやめよう」とか。自分の感覚なので、合っているのかわかりませんけど。

――女優さんでも新人のうちは、映り方をそこまでは意識できないと思います。

杉枝 昔、歌の先生に教わったのが、一生懸命に感情を込めて歌おうとすると、かえって伝わらないと。それより、口の開き方によって感情が乗った音が出る。お芝居も映像になると、同じことがある印象を私は持っています。気持ちの強さが動作の大きさに出がちですけど、余計な力がこもると、伝えたかった感情と違うところに視聴者の方の目線が行ってしまう。そう感じて、意識するようになりました。

(C)映画「コネクション」製作委員会
(C)映画「コネクション」製作委員会

ダンスのように形から役を作って

――映画や本に感情移入しやすいとのことでしたが、演技でも役に入りやすいタイプですか?

杉枝 『コネクション』の綾乃に関しては、気になったことにどんどん向かっていくとか、自分の性格と近い部分があって、すごく入りやすかったです。でも今、他の現場で自分と真逆のキラキラした女の子をやらせていただいて、難しさを感じていて。そこでダンスの動きは活きているかもしれません。

――どういう形で?

杉枝 綾乃のようなライターだったら、これくらいの姿勢とか、キャピキャピした女の子なら、こんな態勢で手はこう動くとか。最初は形からディテールを作っていったんです。

――なるほど。綾乃が記事を書く『実話ボンバー』のような裏社会を扱う雑誌に、触れたことはありました?

杉枝 なかったです。だから脚本を初めて読んだとき、暴力団とか薬物とかオカルトとか知らないことばかりで、どうしようかと思いました。でも、読んでいると楽しくなって、遠い世界の話かと思っていたことが、どこか近くの現実のように感じていました。

――綾乃は面白いキャラクターですね。危ない取材をしてビビリながらも、どこか楽しんでいるような肝の据わったところがあって。

杉枝 そうですね。やると決めたことには猪突猛進で、みんなを巻き込んでいく。カメラマンの半沢さん(上田堪大)とか周りも嫌な顔をしないのは、綾乃が本気で仕事に挑んでいるのが伝わるからだと、私は思いました。

何でも飛び込むのが自分と似てました

――綾乃のそういうところが、杉枝さんと似ているんですか?

杉枝 私も好奇心旺盛で、知らないことにチャレンジするのが好きです。何でも飛び込んでいくのは、綾乃にかなり近くて。今回も映画の現場のことはわからないままで、上田さんに「初めてでこんなに台詞が多くて大変だね」と言われましたけど、私からしたら初めてだから、多いか少ないかもわからず、ただ頑張ろうと。撮影時期が他の仕事と重なっていて、バラエティを撮りながら楽屋に戻ったら台本を読んだり。1日に16ページくらい、一気に覚えました。

――それはすごい。綾乃のように、根本的に楽天家なところもありますか?

杉枝 そこは私と全然違うかもしれません。綾乃はいつも「何とかなる」と思っているタイプで、本当に何とかしちゃいますけど、私は結構気にしぃなので。でも、綾乃の大胆なところは好きで、だから愛されるのかなと思います。

――杉枝さんが劇中の元ヤン社長みたいな怖い人を取材することになったら?

杉枝 飛び込んじゃうと思います。聞きたいことを全部聞いちゃいそう。劇中みたいに怒鳴られたら、綾乃のように立ち向かうことはできなくて、「スイマセン!」とか言って走って逃げちゃいます(笑)。

役の感覚になって生きられたのが嬉しくて

――「撮影中に綾乃が自分に降りてきた」とのコメントがありました。どこかのシーンで、そういう感覚になったんですか?

杉枝 どこかでというより、意識しないうちに徐々にですね。撮影の最後のほうには、ライターとして取材相手に話を聞くとき、机を挟んだ距離感が遠い気がしたり。私自身が綾乃の感覚になって現場で生きられているのが、ちょっと嬉しくなりました。

――初の本格的な演技でも、あまり悩むことはありませんでした?

杉枝 そこまではなかったです。綾乃の楽観的な感じをどう表現するか、ちょっと考えたくらいですね。半沢さんに甘える感じで協力してくれるように仕向けるのは、私自身にない部分だから、どうしようかと。

――元ヤン社長に絡まれて魔除けの塩をかけるシーンは、スムーズに撮れたんですか?

杉枝 現場で合わさせていただいて、流れで撮りましたけど、ポケットから取り出した塩を操るのが難しかったです。カメラの角度的に、どうしたらフワッといっぱいかかったように見えるか。まっすぐかけすぎると塩がガサッと出ちゃうから、画的にきれいに見えなかったりもして、何度かやらせていただきました。

(C)映画「コネクション」製作委員会
(C)映画「コネクション」製作委員会

細かい仕草を入れるだけで本物っぽくなるなと

――今後も女優活動は積極的に続けていくんですか?

杉枝 ご縁があれば、どんどんやっていきたいです。アーティスト時代からMVとか映像の仕事は好きでしたし、いろいろなステージに立たせていただいた経験も活かしていけたら。お芝居は歌とは違いますけど、表現方法として、すごく楽しくて。でも、私もアーティストを本気でやっていた分、ノリでお芝居をしている感じには絶対したくありません。やるからにはこちらの畑の方たちに失礼のないように、本気で取り組みたいと思っています。

――女優に転身、までは考えてない感じですか?

杉枝 お芝居も好きですし、今だと朝の情報番組のレギュラーもやらせていただいて、大阪出身だからおしゃべりも好きなんです。ひとつに特化するのでなく、いろいろなジャンルで表現をしていきたいです。

――演技力を付けるために、日ごろからやるようになったことはありますか?

杉枝 どこに行っても、人の動作を見るようになりました。たとえば、カフェの店員さんはどんな動きをしているのか。今までは普通に目に入るだけでしたけど、トレイにドリンクを乗せたり、エプロンで手を拭いたり、細かい仕草がちょっとあると、演じるときに本当の店員さんっぽく見えるのが面白くなってきて。

――大事なことかもしれませんね。

杉枝 動きだけでなく、CAさんだったら姿勢がスッとされていたり、カフェ店員さんなら背中をちょっと丸めたほうがらしく見えたり。そういうところも観察するようになりました。

(C)映画「コネクション」製作委員会
(C)映画「コネクション」製作委員会

中途半端な20代後半を楽しみたい

――杉枝さんはSNSに「遠回りすることが一番の近道」と、深い言葉を書いていたことがありました。

杉枝 皆さんにどう映っているかわかりませんけど、私は今まで、どちらかというとコツコツやってきたんです。15歳でアーティストデビューしてから、器用なタイプでないので、失敗しては次はこうしようと。人から見たら「そんなの、どうでもいいよ」と言われたことまで、ひとつひとつ積み重ねてきました。それで何かのゴールに辿り着いたとき、他の人より遅かったとしても、私には細かく進んできた経験が活きたと思った日があったんです。

――そういう進み方が実際に実を結んだことも?

杉枝 以前に番組でご一緒したスタッフさんに、何年か後にまた呼んでいただいて。それがディレクターさんからならわかりますけど、映像のカメラマンさんの推薦だったことがありました。前のお仕事のとき、私のしゃべりを見ていただいて、「ああいうトークが合いそうな案件だったから」ということだったんです。ちゃんと見てくださっていた方がいて、別のお仕事に繋がったのが嬉しかったです。

――これから20代後半に、身に付けたいこともありますか?

杉枝 語学です。もともと中国語は勉強していて、ちょっと話せるんですけど、英語は学校のテスト勉強しかしたことなくて。人と話すのは好きなので、世界を広げるために英語を頑張ろうと思っています。

――英語と中国語が話せたら、世界で会話できる場所がだいぶ増えますね。

杉枝 そうなれたらいいなと思います。あと、26歳は若いだけでもなければ、30代になったわけでもない、中途半端な年代ですけど、そういう時期を楽しみたいです。このご時世で暗いニュースも多い中、落ち込んだ方々が少しでも明るくなれるようなお仕事をたくさんできたら、一番いいですね。

Profile

杉枝真由(すぎえだ・まゆ)

1996年1月2日生まれ、大阪府出身。

2009年にHappinessに加入。2011年よりE-girlsとしても活動し、2014年に脱退。2016年より『SHe』でレギュラーモデル。『おはよう朝日です』(朝日放送)、『すもももももも! ピーチCAFÉ』(読売テレビ)に出演中。主演映画『コネクション』が公開中。

『コネクション』

監督/井川楊枝 出演/杉枝真結、上田堪大、窪田美沙、川上将大ほか

池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー

公式HP

(C)映画「コネクション」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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