高裁で松井知事吉村市長、最高裁で松井市長吉村知事が負ける~ピースおおさか訴訟 大阪府市の敗訴確定
大阪の平和展示施設「ピースおおさか」の情報公開をめぐる裁判で、最高裁判所は24日付けで、大阪府と大阪市の上告を退ける決定を出した。原告男性への賠償を大阪府と大阪市に命じた大阪高裁判決が確定した。
維新府政市政の元で行われた「ピースおおさか」の展示見直し
ピースおおさかは、大阪府と大阪市が出資する財団が大阪城公園で運営する平和展示施設。大阪大空襲の展示などのほか、旧日本軍の加害行為とされる内容も展示していた。しかし大阪市長が橋下徹氏、大阪府知事が松井一郎氏と、大阪維新の会の2人に変わった後、展示が「自虐的だ」などとして見直しの作業が進められ、2015年4月に全面リニューアルされて再オープンした。
この見直しの過程で、設置理念が骨抜きにされると懸念する市民らの団体「ピースおおさかの危機を考える連絡会」の会員、竹本昇さん(69)が、関連する公文書の情報公開を請求した。しかし「リニューアルに向けた業務に支障をきたす」などの理由で公開を拒否される。竹本さんは異議を申し立てたが、本来諮られるはずの審査会も開かれないままリニューアルオープンを迎えた。
「歴史認識に関わることだからこそ情報公開を」高裁で逆転判決
竹本さんは、知る権利を侵害され精神的苦痛を受けたとして、大阪府と大阪市などを相手取って損害賠償を求める裁判を起こした。一審の大阪地方裁判所では訴えをすべて退けられたが、二審の大阪高等裁判所は「様々な意見がある歴史認識に関わることだからこそ情報公開すべき」と判断。一審判決を取り消し、大阪府と大阪市に対し、竹本さんにそれぞれ5万円の慰謝料を支払うよう命じる逆転判決を言い渡した。
府と市はこれを不服として上告していたが、最高裁判所は24日付けで、「上告の理由がない」として上告を退ける決定を出した。これにより大阪府と大阪市が情報公開しなかったことは違法だとする大阪高裁の判決が確定した。
「橋下氏松井氏の不当な干渉」「加害展示撤去が真の目的」
原告の竹本さんは次のように話す。
「この裁判で、展示見直しに対する橋下氏と松井氏の不当な干渉が明らかになりました。情報非公開の本当の理由は、リニューアルの目的が加害展示撤去だということを市民に知られないためでした。不当な干渉によってなされたピースおおさかのリニューアルは正当たり得ません。被害と加害の両面から戦争の実相に迫るという設置理念に則ったピースおおさかを取り戻すために、これからも展示の改善を求めていきます」
「真実を国民に知らせずに戦争。同じことを繰り返してはならない」
原告の代理人は大前治弁護士ただ1人。「勝訴」決定について次のように述べた。
「大阪府と大阪市が情報公開条例に違反していたこと、大阪高裁が『様々な意見がある歴史認識に関わることだからこそ情報公開すべき』と断じた判決が確定したことに意義があります。竹本さんに情報が隠されたことは全ての市民に情報が隠されたことに等しいんです。74年前の戦争は『国民に真実を知らせないこと』を原動力として進められました。同じことを繰り返してはいけません」
そして最後に付け加えた。
「大阪高裁では『松井知事と吉村市長』が敗訴し、
最高裁では『松井市長と吉村知事』が敗訴した、
・・・というのが痛快ですね(笑)」