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英国、ロシア軍のイラン製ドローン対策に対空防衛システム提供・スナク首相「民間人が爆撃に晒されてます」

佐藤仁学術研究員・著述家
スナク首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

スナク首相「地上の戦場ではロシア軍を後退させることに成功。しかし民間人は空からのドローンの無残な爆撃に晒されています」

イギリスのスナク首相が2022年11月に初めてウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と面会した。イギリス政府はウクライナに対して5000万ポンド(約83億円)の軍事支援を供与することを発表した。

今回の英国のウクライナへの支援パッケージには、対空砲125門、ロシア軍が使用しているイラン製軍事ドローンを迎撃するためのレーダー、ドローン迎撃システムが含まれている。ほかにウクライナ軍へのトレーニング支援、軍医や技術者をウクライナに派遣する。2022年11月上旬にはベン・ウォレス英国防大臣が新しい対空ミサイル1000基を提供することを発表していた。

スナク首相は声明文の中で「ウクライナ軍は地上の戦場ではロシア軍を後退させることに成功しました。しかし民間人は空からのドローンやミサイルの無残な爆撃に晒されています。そのような空からロシア軍の攻撃に備えてイギリス政府は、対空砲、レーダー、ドローン迎撃システムなど新しい対空防衛システムを提供します。また冬の寒さに備えた人道的な支援を行います(While Ukraine’s armed forces succeed in pushing back Russian forces on the ground, civilians are being brutally bombarded from the air. We are today providing new air defence, including anti-aircraft guns, radar and anti-drone equipment, and stepping up humanitarian support for the cold, hard winter ahead.)」と語っていた。

▼キーウを訪問したスナク首相とゼレンスキー大統領

キーウを訪問したスナク首相とゼレンスキー大統領
キーウを訪問したスナク首相とゼレンスキー大統領提供:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ

英国提供の兵器でロシア軍のドローンを徹底的に破壊

ロシア軍が2022年2月に一方的にウクライナに軍事侵攻してから、英国政府はウクライナへ軍事支援を行っていた。当時のジョンソン首相もキーウを訪問してゼレンスキー大統領と面会していた。2022年8月に、ジョンソン元首相(当時)は首都キーウを電撃訪問して、最新型ドローン2000機、弾薬など5400万ポンド(約88億円)の追加の軍事支援をゼレンスキー大統領に約束していた。その軍事支援のなかで、イギリス政府はウクライナ軍に対して「Black Hornet」という超小型のマイクロドローンを850機提供していた。

他にもイギリス政府は軽量多目的ミサイル「マートレット」や近距離防空ミサイル「スターストリーク」、ストーマー装甲車などを提供している。これらの兵器は上空のロシア軍のドローンの破壊には有効であり、実戦においても多く使用されている。

▼英国が提供した軽量多目的ミサイル「マートレット」によるロシア軍のドローン破壊

▼英国が提供したストーマ―装甲車でロシア軍の偵察ドローンを撃破

▼「スターストリーク」でロシアの偵察ドローン「Orlan-10」を破壊

攻撃ドローンは上空で速やかに破壊を

今回のスナク首相が表明した支援パッケージでは、ロシア軍が使用しているイラン製軍事ドローンへの防衛が強く表れている。

2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃していた。国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物、社会インフラに対して攻撃を行っている。スナク首相がコメントしていたようにウクライナの一般市民の犠牲者も出ている。

イラン製の軍事ドローンを使用してロシア軍はウクライナ軍の戦車や軍事施設だけでなく民間施設や社会インフラにも攻撃を行っている。

上空の攻撃ドローンはかなりのスピードで標的をめがけて突っ込んできて爆発する、いわゆる「神風ドローン」のタイプである。そのため、探知したらすぐに地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで上空で破壊しておく必要がある。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。英国が提供してきた対空防衛システムのほとんどが、ハードキルのタイプである。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】ロシア軍のイラン製軍事ドローンによるウクライナ軍への攻撃

提供:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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