U-19日本代表、ブラジルとドロー。「本気の王国」と戦って手にした課題と、一つの手ごたえ
王国相手に2点のリード
「プレU-20ワールドカップ」と言うべき「SUWON JS CUP」。日韓両国にブラジルとフランスの各U-19代表による争覇戦は、20日に大会第2日を迎えた。日本の相手は王国・ブラジル。威厳と伝統を備えるユニフォームを身にまとった若きカナリア軍団に、第1戦でフランスに悔いの残る黒星を喫した東京五輪世代の日本が挑んだ。
日本が注力したのは、まず「第1戦の反省を生かす」(DF町田浩樹=鹿島)こと。立ち上がりの不用意な失点から一気に流れを奪われたフランス戦を踏まえて試合に入った。と言っても、慎重に戦うということではなく、むしろその逆。徹底したのは「行かない守備ではなく、行く守備」(内山篤監督)であり、アグレッシブに球際で競りに行って相手にプレッシャーを掛けることを心掛けた。第1戦で悔いを残した選手たちも奮起した。右SBに入った小島雅也(仙台)は見違えるような積極性で一回り太い体を持つ相手に戦いを挑み、指揮官も納得のパフォーマンス。町田もまた、187cmの大きな体を張ってゴール前で奮闘を続けていく。
全体にボール支配ではブラジルが優位だったものの、先制点を奪ったのも日本だった。33分、縦パスから裏へと飛び出したFW和田昌士(横浜FM)が倒されてPKを得ると、これを強心臓のMF伊藤涼太郎(浦和)が落ち着いて蹴り込む。さらに39分には、伊藤のパスから抜け出したFW中村駿太(柏U-18)が「本当は打ちたかったけれど、相手が2枚来ていて、しかも(和田が)見えたので」と咄嗟に高速のショートクロスを選択。フリーで走り込んでいた和田がこれをワンタッチで押し込んで、2-0。日本が2点のリードを奪って前半を折り返す、これ以上ない展開となった。
本気モードのカナリアと敢闘
ただ、ブラジルはブラジルだった。のらりくらりとしていた前半から一転、後半は剥き出しの闘志で日本イレブンに襲いかかった。
「(2点のビハインドで)プライドを刺激されたんだと思う。『このまま終われるか』という感じで、圧力も前への推進力もまるで違った」(中村)。
ブラジルはハーフタイムに一挙5人を交代。特に第1戦で絶品のプレーを見せていたMFアラン(シント・トロイデン/ベルギー)が投入されたのは大きかった。この司令塔を中心としたパスワークで日本を追い込みつつ、前半はあまり観られなかった強引な突破を交えて日本に襲いかかる。開始2分でボール奪取からの速攻でゴールを強奪すると、その後も攻勢を継続。日本はGK廣末陸(青森山田高校)のビッグセーブもあって何とか堪え忍びながらの抗戦となったが、コンタクトプレーの連続もあってか、全体に消耗が感じられるようになっていった。67分に日本はカウンターから後半唯一の決定機を迎えたが、中村のシュートは枠外に逸れてしまう。するとその3分後の70分だった。日本を押し込む流れから、最後はMFジオヴァンニ(アトレティコ・パラナエンセ)の強烈なシュートがGK廣末の手を弾き飛ばしてゴールネットを揺らし、無情の同点ゴール。その後もブラジルペースで試合は推移したが、カナリア軍団は2度の決定機を逃して熱戦は終幕を迎えた。
何とも悔しい試合になったが、まるでやりたいことを出せないままに3点を奪われて早々に試合が終わってしまったフランス戦とは異なる種類の「悔しさ」だろう。「選手のどうしても勝ちたいという気持ちは伝わってきた」と振り返った内山監督は、同時に「後半の立ち上がりにやってはいけないミスがあったし、それを見逃してくれる相手ではなかった。もう少し我慢強くやらなければいけなかった」と自身も悔しさをにじませた。ただ、「後半、ホントのブラジルがいた」と中村が振り返ったとおり、前半の奮戦から「王国の本気」を引き出したのは確かな収穫。課題が残ったのは確かだが、ホンモノを相手に課題を得られたこと自体が大きな収穫であり、一つの手ごたえだった。
U-19日本代表メンバー
(vs U-19ブラジル代表)
【GK】
廣末陸/青森山田
【DF】
小島雅也/仙台
野田裕喜/G大阪
町田浩樹/鹿島
柳貴博/FC東京
【MF】
神谷優太/湘南
市丸瑞希/G大阪
伊藤涼太郎/浦和
佐藤亮/明大
【FW】
和田昌士/横浜FM
中村駿太/柏
【交代出場】
中山雄太/柏
高木彰人/G大阪
堂安律/G大阪
坂井大将/大分
遠藤渓太/横浜FM
垣田裕暉/鹿島