ラニーニャ現象で穀物相場が高騰、世界的不作の恐怖
シカゴ穀物相場が高騰している。CBOTトウモロコシ先物相場は8月の1Bu=320セントをボトムに、10月15日の取引では404.25セントまで急伸している。約2か月で26.3%の上昇率であり、昨年8月以来となる1年2カ月ぶりの高値を更新している。小麦は5年ぶり、大豆は2年7カ月ぶりの高値を更新しており、コロナ禍の中で穀物相場は全面高とも言える展開になっている。
背景にあるのは、ラニーニャ現象が発生していることだ。日本の気象庁によると、今年は夏からラニーニャ現象が発生しており、90%の確率で冬にかけて続くとの見通しが示されている。ラニーニャ現象とは、日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象である。海面水温が平年よりも高い状態が続くエルニーニョ現象と並び、世界的な異常気象の要因になり得ると考えられている。
今年は、このラニーニャ現象が世界の穀物生産に大きな混乱をもたらしている。例えば中国では豪雨・洪水・台風被害が頻発しており、収穫期を迎えたトウモロコシが大きなダメージを受けたと報告されている。中国政府は備蓄放出など混乱の終息を働きかけているが、中国国内相場が急騰しているため、中国がこれから世界各地でトウモロコシの調達量を増やすのではないかとの警戒感が広がっている。
また、南半球の南米ではトウモロコシや大豆の作付けシーズンを迎えているが、最高気温が40度近くに達する一方、降雨が殆ど観測されていないため、作付け作業の遅れが警戒されている。このままホット・アンド・ドライ(高温乾燥)状態が続くと、不作のリスクが高まるとみられている。
ロシアやウクライナ、フランス、米国などでは冬小麦の作付け期を迎えているが、乾燥状態が警戒されている。各国政府が生産高見通しの引き下げを断続的に行っており、予想されていた収量が得られなくなるとの警戒感は強い。
本来だと、現在は北半球で春先に作付けされた穀物の収穫期であり、ハーベスト・プレッシャー(収穫期の売り圧力)が穀物相場の値下がりを促し易い時期になる。農家が在庫を売却することで、需給が緩み易い時期になる。しかし、今年はラニーニャ現象の発生が供給不安を著しく高めていることが、収穫期の穀物相場高騰を促している。
過去にもラニーニャ現象は不作による穀物相場の高騰を数年起きに引き起こしているが、ラニーニャ現象が長期化・深刻化すると、穀物価格が更に高騰するリスクが高まることになる。特に今年はコロナ禍の影響で穀物サプライチェーンが大きなリスクを抱えているだけに、価格を安定させることが難しくなっている。