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皮膚がんのリスクを高める意外な生活習慣 - お酒との関係を専門医が解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【アルコール摂取量と皮膚がんの関係 - メタアナリシスが明らかにしたこと】

2017年に英国の医学雑誌「British Journal of Dermatology」に掲載された研究では、アルコールの摂取量と非メラノーマ皮膚がん(NMSC)の関係について、これまでの研究データを統合して分析するメタアナリシスが行われました。NMSCとは、メラノーマ以外の皮膚がんの総称で、日本人に多い基底細胞がん(BCC)と有棘細胞がん(cSCC)が含まれます。

その結果、1日あたりのアルコール摂取量が10g増えるごとに、BCCのリスクが7%、cSCCのリスクが11%上昇することが明らかになりました。アルコール10gは、ビール中瓶1本(500ml)の3分の1程度に相当します。つまり、飲酒量が多いほど皮膚がんのリスクが高まるということです。

さらに、BCCについては非線形の用量反応関係も示唆されました。アルコール摂取量が1日9gまでは皮膚がんリスクが上昇しますが、それ以上の量ではリスクの上昇が頭打ちになるようです。ただし、高用量のデータが不足しているため、この結果の解釈には注意が必要です。

【飲酒がNMSCリスクを高める理由】

なぜアルコールの摂取が皮膚がんのリスクを高めるのでしょうか。その主なメカニズムとして、以下の点が考えられています。

1. アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによるDNA損傷

2. 活性酸素の増加によるDNA変異の蓄積

3. アルコールによる光感作作用で紫外線の影響が増大

4. 飲酒による免疫抑制作用

特に、日本人に多いBCCとcSCCについてアルコールとの関連が示されたことで、皮膚がん予防の観点からも節度ある飲酒が重要だと改めて認識させられました。

【皮膚がん予防のために心がけたい生活習慣】

この研究結果を踏まえ、皮膚がんのリスクを下げるためには、以下のような生活習慣を心がけることが大切です。

1. 飲酒量を控えめにする(1日平均10g以下を目安に)

2. 日光をあびすぎない、日焼け止めを使用する

3. 皮膚の変化をこまめにチェックし、早期発見に努める

アルコールはほどほどが肝心ですが、完全に避ける必要はありません。適量であれば、ストレス解消やコミュニケーションの潤滑油としての効用もあるでしょう。体質に合わせて、賢く上手に付き合っていきたいものです。

以上、アルコールと皮膚がんの関係について研究知見をご紹介しました。単に飲酒を控えるだけでなく、生活習慣全般を見直すことが、皮膚の健康維持につながります。「ほどほどの飲酒」と「きちんとしたスキンケア」を心がけて、健やかな毎日を過ごしましょう。

【参考文献】

・Yen H, et al. Alcohol intake and risk of nonmelanoma skin cancer: a systematic review and dose-response meta-analysis. Br J Dermatol. 2017 Sep;177(3):696-707.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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