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【暴言VS不倫疑惑】豊田真由子・山尾志桜里両議員の謝罪会見で見た相違点

安積明子政治ジャーナリスト
もう一度、国政へ(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

共通点が多い2人

 秘書に暴言を吐き、暴行したとして埼玉県警に刑事告発された豊田真由子衆議院議員(42 元自民党)と、9歳年下の弁護士との不倫疑惑が週刊誌で報じられた山尾志桜里衆議院議員(43 元民進党)。東京大学法学部で同期だった2人は、衆議院第一、第二議員会館の部屋番号も同じで、所属していた政党を離れたという共通点もある。また騒動の後に最初に姿を見せたのも同じ週だ。豊田氏は9月18日に埼玉県新座市で支持者に説明して謝罪会見を開き、山尾氏は9月22日に愛知県尾張旭市、瀬戸市、日進市で支持者に説明し、瀬戸市ではぶら下がりに応じた。

 いずれも次期衆院選に向けて出馬意欲を示したものが、肝心の説明責任は果たされたのか。発言内容やその様子から、彼女たちの本音とその将来を探りたい。

PR専門家に演出を依頼したものの……

 まずは6月の週刊新潮の報道以来、姿を見せなかった豊田氏だ。トレードマークのピンクのスーツと「への字眉毛」を封印し、髪も短くカットされていた。わずか数カ月前まで「ピンクモンスター」とあだ名を付けられていたのに、まるで別人のような印象だ。

 出で立ちは前日のテレビ出演の時と同じ、白のインナーに黒のスーツ。一見してしおらしく見える演出だが、左胸に付けられた議員バッヂで議員の地位への執着が伺える。

「私のことでこのような大きなお騒がせをし、ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございませんでした」

 深々と90度以上腰を曲げ、頭を下げた豊田氏は、一通りの謝罪の言葉を述べた後、涙を抑えるように顔をくしゃくしゃにした。その後で話す時も時折、涙をこらえるような様子も見せている。おそらくは豊田氏が雇ったPR専門家による演出だろう。

「楽な道であれば、議員を辞めてしまった方が楽。そういうことを言う人もいた。しかし考え抜いた結果、楽な道ではなくて恥を曝しながら、お叱りとお怒りをいただきながら、猛省して生まれ変わって、もう一度国民のために、身を粉にして働かしていただく、そのことで償いと責任を果たしていくことも大事なことではないかと。そうご理解いただけたら、また頑張っていきたいなと」

 言葉の端々ににじみ出るのは、やはり議員でありたいとのこだわりだ。それでも質疑応答で豊田氏は始終にこやかに対応し、負のイメージを払しょくすべく明るくふるまって見せた。しかしそれは、秘書への暴言・暴行を報じた週刊新潮の女性記者の質問から一転する。

週刊新潮の女性記者に負けた豊田

 女性記者から「謝罪会見の割には、はしゃいでいるように見える」と指摘された豊田氏は、服用している薬の作用だと弁明。さらに「泣いてはいけないと思って奮い立たせている。それをもって、お前は反省していないと言われるのは事実誤認だ」と半泣きで訴えた。

 しかしながら“受け身”を見せたのはここまでで、発言の矛盾を指摘されると、豊田氏はそれまでのソフトなムードを一変させ、厳しい顔で対応。一気に早口でまくしたてるように反論したが、その相当に苛立った様子からは豊田氏の素顔を垣間見ることができた。これは同時に、せっかくPR専門家を雇ったにもかかわらず、会見が失敗に終わったことを意味している。

誠実を装った山尾ぶら下がり

 一方で9月7日夜に離党表明して以来、公に姿を見せなかった山尾氏は、22日から地元である愛知7区でのお詫び行脚を開始した。

「報道についての説明と地元への感謝、そしてお詫びを申し上げた」

 瀬戸市で開かれた集会の後のぶら下がりで、山尾氏はこのように述べている。弁護士との関係を「報道」と呼ぶのは、実態を認めたくないからだろう。まるで他人事を話しているかのように感じたのは、筆者だけではないはずだ。

 山尾氏にも厳しい質問が飛んだが、正面から受け止めた豊田氏に対し、山尾氏はそれを巧妙にかわしている。

 たとえば釈明までに時間がかかりすぎた件について、相手の弁護士の家族に影響を与えたことに言及した後、「私の家族にも負担をかけた。夫をはじめ両親を含め、支えてもらっている」と述べている。ただ夫とは離婚協議中と伝えられているため、ぶら下がりの後に記者が質問しようとすると、山尾氏はそれを無視して立ち去った。

質問をはぐらかす

 離党表明の際に記者からの質問を受け付けなかった点について質問にも、正面から答えていない。

「当然みなさんの方からも、質問したいなげかけだと思う。あの会見の際には、あの報道を受けて、自分自身の中で政治家としていくつかの選択がある中で、さまざまな葛藤をかなり少ない時間日数の中で、自分自身迷い悩みながら決断した離党。そのような離党という決断を、あの時は東京にいたので、メディアを通じて国民のみなさんにお伝えすべきだという思いで臨ませていただいた」

 このように全く答えになっていないのだが、再度質問されても「さきほど言った通りだ」と述べるにとどまった。

 さらに別の記者からの「不倫報道の4日間はどこで何をしていたのか」という問いに対しては、「政治家はどこまで説明責任を負うのかを突きつけられた」と述べたものの、「私が新たな主張を付け加えたりすれば、先方の家族やこちらの家族に支障が続くと推察する」「7区の有権者に何でも聞いてくれと言って、私もできる限り述べた」とまたもや質問をはぐらかした。

 それでも山尾氏は次期衆院選への出馬に意欲を見せ、「安倍政権の問題点をしっかりと提示して、その解決策を探っていく。その仕事を引き続きやらせていただきたいと思った」と述べた。しかし自身への追及にはまったく逃げるばかりの姿勢で、果たして安倍政権を追及できるのか。そもそもそうした姿勢で、国民の信頼を得ることができるのかが疑問だ。

 ではこのまま衆議院選挙に突入するとどうなるか。

山尾氏が勝った場合でも……

 豊田氏が出馬の意欲を見せる埼玉4区では、自民党は候補を擁立する予定。すでに赤枝恒雄衆議院議員が出馬の意向を示しているが、穂坂泰志木市議を押す地元の声も大きい。いずれにしろ、豊田氏が再選される可能性は極めて小さい。

 それに比べて山尾氏は、無所属ゆえの不利があるが、再選の望みもある。

民進党の前原誠司代表は「愛知7区には候補を立てない」と明言しており、票を喰いあう相手はいない。また連合などの支援はそのままで、ママの会などの市民団体の応援も増えている。除籍処分を受けていないので、当選すれば「禊を済ませた」として民進党への復党も可能だ。

 東大で同期のこの2名の女性議員は、選挙では明暗が分かれそうだが、たとえ当選しても、騒動で付けられたそのレッテルは長らく貼られたままだろう。生き恥をさらすことは一般人には耐えがたいことだが、きっとそれを上回る充足感があるのだろう。その充足感を求める選挙戦が、間もなく始まろうとしている。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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