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「女性はショートパンツ禁止」北朝鮮で“死せる将軍様”の指示復活

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正日氏(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮ではかつて、約20年にわたって、女性が自転車に乗ることが禁じられていた。その理由については故金正日総書記が「みっともない」と言ったなど諸説あるが、同国では「社会主義朝鮮の良俗にそぐわない」という21世紀とは思えないような理由で、女性に対して様々な行為が禁止されていた。

 1970年代から2009年ごろまで、女性がズボンを着用することも禁止されていたが、その後も解禁と禁止が繰り返された。そして、またもや禁止令が出されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

 平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、新義州(シニジュ)市内の市場では今月に入り、安全部(警察署)の巡察隊が、ショートパンツを穿いた女性の取り締まりを行っている。

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 その理由とは、「社会主義の伝統と生活様式に合わせて、女性に服装の礼節を守らせろという中央の指示が下された」というもの。

 夏の暑さが年々ひどくなり、ファッションに気を使う女性が増えるにつれ、ショートパンツをはく女性が増えていたが、これを問題視したようだ。摘発された女性は安全部に連行され、批判書を書かされ、再び摘発されれば法的処罰を受けるとの書類にサインをさせられた上で釈放される。

 当然のことながら、市民の反発は強い。

「ショートパンツに何の思想があるのか」(市民)

 平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、平城(ピョンソン)でも、ショートパンツをはいた女性への取り締まりが行われていると伝えた。女性がショートパンツをはくのは「資本主義遊び人風」だというのだ。

 情報筋によると、昨年まで女性は家の近所に限ってショートパンツをはいていたが、酷暑の今年は、ショートパンツ姿で市場にやってくる女性が増えた。これが社会主義の美徳に反するのだという。

 数年前にはベルボトムが「日本風」だとの理由で取り締まりの対象とされるなど、当局による風紀取り締まりが手を変え品を変え行われ続けている。

 一方、男性がショートパンツをはくことに対しては、何の取り締まりも行われていない。「なぜ女性だけ取り締まるのか」(情報筋)との不満の声が上がるのは当然のことだろう。

 校則でツーブロックのヘアスタイルを禁止している理由を問われた東京都教育委員会の担当者が、「事件や事故に遭う」との答弁を行い、世間の嘲笑を買ったことがあった。こうした日本の学校の理不尽な校則と同じように、新しいものは「思想の乱れ」や「社会の混乱」を招くとの発想に加え、韓国をはじめとした外国の良からぬ影響を警戒していることが、北朝鮮の風紀取り締まりの背景にあるのだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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