リブゴルフの詳細を示す「極秘書類」が明かされた。PGAツアーとは異なる記述、驚きの記述も。
今年6月に創設されて以来、ベールを被ったままで「極秘」扱いだったリブゴルフの詳細を記した書類の一部が明かされ、米ゴルフ界では大きな反響を呼んでいる。
この書類は、PGAツアーを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した際、リブゴルフが北カリフォルニアの連邦裁判所に提出した書類のうちの1つで、ファイルには「極秘」「非公開」の文字がしっかりと記されている。
しかし、裁判を担当するベス・ラブソン・フリーマン判事は、この書類を極秘扱いで非公開にする必要性はないと判断し、これを開示。さっそく米スポーツイラストレイテッド誌がその書類を入手し、内容を報じた。
31ページにおよぶ書類には、PGAツアーには見られない規定もあれば、驚かされる記述もあった。
【PGAツアーに準じる規定】
「リブゴルフのプレーヤーは、リブゴルフとそのプレーヤーに関する秘密を明かしてはならない。ツアーとプレーヤーの名誉やイメージを損なうことを語ってはならない」という、こうした契約書における「決まり文句」には、別段、驚かされることはない。
「ラウンド中のアルコール摂取の禁止」「グリーン・リーディング・ブック使用の禁止」「ドーピング禁止」などは、PGAツアーの規定に準ずるものと考えられる。
ただし、ドーピング禁止と書かれてはいるものの、具体的な詳細は付されていない。
「ラウンド後はすみやかにメディアの取材リクエストに応じる」とも書かれているが、そのための具体的な詳細も明記されていない。
【PGAツアーと異なる規定】
「プレーヤーはいかなるゴルフトーナメントにおいても、直接的にも間接的にもギャンブル禁止。リブゴルフの試合も他のイベントも含む」という厳格なギャンブル禁止を謳っているところは、ある意味、目新しいと言っていい。
そして、PGAツアーと明らかに異なるのは「選手にサスペンション(出場停止)などの処分を科した場合は公表する」というくだりである。
PGAツアーは出場停止も罰金も一切公表しないことになっており、それが「不透明だ」というメディアや周囲からの指摘が以前からあることは事実ゆえ、リブゴルフでは、その事実を受けて、その逆を定めたのではないかと推測される。
米ゴルフ界で最も取り沙汰されているのは「プレーヤーにメディアライトを認める」という記述だ。
長い間、フィル・ミケルソンがPGAツアーに対して「僕らの一打一打によってPGAツアーは大儲けしているが、僕らには一切還元されず、(映像などを)使う場合は逆に支払いを求められるのはおかしい」と批判し続けていたことが、リブゴルフでは最初から認められたということ。「プレーヤーが名前や肖像、映像を使用、販売する権利を認める」とされている。
ただし、「リブゴルフのプレーヤーは、リブゴルフのロゴマークが入ったウエアを“メイン”とすること。第三者(スポンサー)の露出は限定的にとどめ、ロゴマーク1つのみとすること」という記述には、「潤沢なオイルマネーが湧き出すリブゴルフでは、もはやスポンサーなど不要ということか?」などと、ゴルフ用品メーカーや長年のゴルフ関連企業等から早くも驚きと批判の声が上がっている。
【さらなる驚き】
米国のゴルフファンや米メディアがさらに驚かされたのは、「元PGAツアー選手」テーラー・グーチの主張との矛盾点だ。
グーチは、6月にロンドンで開催されたリブゴルフの初戦に「リブゴルフがどんなものか見てみたかっただけ。だからリブゴルフとは契約を交わさずに試験的に出た。一度体験したら、その後はPGAツアーに戻るつもりだった」と語り、即座に資格停止処分を科したPGAツアーの「一方的な強硬姿勢によって、僕はPGAツアーに戻る気がなくなった。リブゴルフに移籍しようと決意した」と明かしていた。
そんな経緯を経て、プレーオフ第1戦への出場を求める仮処分を申請したのもグーチを含む合計3名だった。2024年1月に控える「本番」の裁判の原告組にもグーチは当初から含まれている。いわば「反PGAツアーの筆頭」のような存在だ。
しかし、開示された書類には、グーチがリブゴルフと5月末に交わした契約書が含まれており、グーチの主張との明らかな矛盾が露呈された。
リブゴルフが選手たちの主張を採り入れている点は、もしかしたらプロゴルファーとプロゴルフ界にとっての「一歩前進」なのかもしれない。PGAツアーとは異なる視点で定めた規定が、逆にPGAツアーの改良につながることもあるのかもしれない。
しかし、不明瞭な点も多く、矛盾点も見られ、あたかも既存のゴルフ界との協調性を求めないかのごとき姿勢を示しているこの書類が、今後、どんな影響を及ぼすのかが注目される。