マンガやアニメの世界で、いちばん速いのは誰か? マッハ20の『暗殺教室』殺せんせーが第4位だが……。
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
2023年5月現在、100mの世界記録はウサイン・ボルトの9秒58。
人類で初めて10秒を切ったのは、1983年のカール・ルイスで、記録は9秒97だった。
そしてボルトが世界記録を出したのが、09年8月。
以降、世界記録はもう13年以上更新されていない。
現実世界における速さへの挑戦はきわめて難しいのだ。
だが、アニメや特撮の世界では、驚くべき速さが次々に達成されていく。
たいへん清々しいので、ここで筆者が知る限りのベスト9を発表しよう。
第9位は、ソニック・ザ・ヘッジホッグ
ソニック・ザ・ヘッジホッグ。
日本語に訳せば、「音速のハリネズミ」で、その名のとおりだとしたら、走るスピードはマッハ1。
それは秒速340m=時速1224km。
前述のウサイン・ボルトは時速37.6kmで、マッハでいえば0.031だから、ソニックの速さにはびっくりする。
第8位は、エイトマン
エイトマンは、もともと東八郎という刑事だった。
ある事件で死亡したため、その人格と記憶を電子頭脳に移植され、スーパーロボットとして甦った。
このエイトマンの能力の一つが、キャッチフレーズなどで「弾丸よりも速く」と謳われたように、超高速で走れること。
ピストルの弾丸は秒速200〜600m台、ライフル銃の弾丸は秒速600〜900m台だから、エイトマンは秒速1000mくらいで走るのではないだろうか。
その場合、時速3600km=マッハ2.94という計算になる。
100m走のタイムは0.1秒。
第7位は、サイボーグ009=島村ジョー
『仮面ライダー』の石ノ森章太郎先生が、それより7年も前に描かれた『サイボーグ009』の主人公が島村ジョーだ。
彼の奥歯には加速装置のスイッチがあり、最速マッハ3で走ることができる。
先ほどのエイトマンと比べると、時速72km=マッハ0.06分だけ速い。
2人が並んで100m走に出場すると、009のほうが0.02秒速くゴールを切ることになる。
第6位は、ピット星人
ピット星人は『ウルトラセブン』に登場した宇宙人で、その特色は大きく3つ。
①宇宙怪獣エレキングを操る、②人間の少女に化けている、③マッハ5で走る。
このうち「マッハ5で走る」は、怪獣図鑑などでおなじみだった項目だが、科学的に注目したいのはこの能力だ。
少女の姿をしているピット星人だが、本来の姿に戻っても身長2m。
こんな小さな体で、マッハ5で走ると、77tもの空気抵抗を受ける。それに対抗できるのだから、エレキンングに頼らなくても充分に強い。
第5位は『走れメロス』のメロス
こんな、中学校の国語の教科書にも載っているような国民的名作のどこに、ピット星人を上回る走りが出てくるのかというと、それは物語の終盤。
故郷の村で妹の結婚式を無事に済ませたメロスは、その帰路、川の氾濫、山賊の襲撃、自らの熱中症と、トラブルの連続に見舞われる。
太陽はほとんど西に傾き、王との約束の時間まであとわずか。
このままでは、親友セリヌンティウスが自分の代わりに処刑されてしまう、と焦ったメロスの猛ダッシュがスゴかった!
このときの走りについて、小説には「少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った」とある。
太陽が西に沈むのは、地球が西から東へ自転しているから。舞台となったイタリアのシラクスは北緯37度にあり、ここで太陽の動きについていくには、時速1300kmで走る必要がある。
メロスがその10倍も速く走ったとすれば、時速1万3千km=マッハ11だ。
第4位は『暗殺教室』の殺せんせー
刺激的なタイトルだけど、とってもハートフルだった学園マンガ『暗殺教室』。
みんなが殺せんせーを暗殺できなかったのは、その移動速度があまりにも速いからだった。
殺せんせーはマッハ20で動けるのだ。
この能力を使って、殺せんせーは朝のホームルーム前にハワイで飲み物を買ってきたり、昼は中国の四川に本場の麻婆豆腐を食べにいったり、放課後はニューヨークへメジャーリーグの野球観戦にいったりしていた。
計算すると、マッハ20で飛べれば、東京からホノルルまで15分、中国・四川省まで8分、ニューヨークまで27分ほど。
このマッハ20というのは、ウルトラマンAやウルトラマンタロウの飛行速度と同じだが、殺せんせーは、地上でもマッハ20で移動できるのがスゴイ。
第3位は、仮面ライダー555
『仮面ライダー555』は、平成仮面ライダーシリーズ第4作。
555は、変身後も他の姿に再変身できて、その一つのアクセルフォームになると、通常の1千倍の速さで動ける。
555の通常の走力は100mを5.8秒だから、アクセルフォームになると100mを0.0058秒で走れることに!
時速6万2千km=マッハ51で、これは、東京から新大阪まで新幹線の線路に沿って走っていっても、わずか30秒というスピードだ。
ただし、アクセルフォームが持続できるのは10秒のみ。
静岡駅をちょっと通り過ぎたあたりで通常モードに戻る計算になる。
名古屋まで行きたいときは、555は新幹線に乗ろう。
第2位は『SPEC』の一十一
『SPEC〜警視庁公安部公安第5課 未詳事件特別対策係事件簿〜』で、刑事たちを苦戦させた犯罪者が一十一(にのまえ・じゅういち)だ。
彼が指をパチンと鳴らすと、それまで動いていた周囲の人たちや、発射された弾丸までもが、凍りついたように静止する。
その能力は「周囲より速く流れる時間を生きる」で、周囲から見ると、ニノマエはとてつもない速度で動けることになる。
劇中のある人物が「僕たちの1秒間で、彼は何日も過ごしていたりする」と言っていた。
「何日も」というのが5日のことだとしたら、それは43万2千秒だから、おそらく40万倍ほどのスピード。
ニノマエが時速4kmで歩くとしたら、その40万倍とは時速160万km=マッハ1300だ。
100mを15秒で走れるとしたら、40万倍ならマッハ7800!
第1位は、仮面ライダーカブト
『仮面ライダーカブト』の世界では、地球外生命体「ワーム」がクロックアップ=超高速移動という技を使って人を襲っていた。
そこで、ワームのクロックアップへの対抗措置として仮面ライダーカブトに付与されたのが、同じく「クロックアップ」という能力。
カブトがクロックアップの能力を使うと、あまりの速さに、まわりのものはすべて止まって見える。
劇中、ざあざあ降っている雨のなか、敵と戦うシーンがあった。
クロックアップ能力を使っているから、雨粒が完全に止まって見える!
雨粒静止状態のまま、敵と戦っていた時間を測ると、45秒間。
実際には、雨粒は秒速10mで落ちるから、この間に1mmしか落ちなかったとすると、スピードアップ率は45万倍だ。
カブトの普段のスピードは100m5.8秒だから、クロックアップすると、なんとマッハ2万3千!
この速さだと、東京からニューヨークまで1.4秒しかかからない。
100mを走るタイムは0.000013秒。
もう速すぎて、速さがイメージできません。