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大谷翔平は「50点」どころか「150点」

豊浦彰太郎Baseball Writer

今季ここまで大活躍の日本ハム大谷翔平だが、残念ながらそれでも栗山英樹監督によると「50点」らしい。

確かに7月24日の西武戦では11勝目こそ挙げたが、6回5失点は「50点」かもしれない。しかし、それでも大谷はここまで、防御率(1.79)、勝利(11)、奪三振(124)、の投手三冠王で、勝率(.917)、WHIP(0.83)もリーグ1位だ。しかも、これが高卒3年目の若者の成績だ。年俸が推定1億円ということを踏まえても、50点どころか満点を超過し200点をあげても良いと個人的には思う。

たったの50点しか与えられない理由は、「13試合に登板しながらまだ10勝」(7月24日の登板前の時点で)だからだという。

これでは身も蓋もない。打者として打率.185、3本塁打、12打点と不振なのも評価を下げている理由かもしれない。しかし、それなら投手100点+打者50点で150点だろう。

栗山監督によると、後半戦のノルマは「彼自身の勝敗ではなく、自分が投げた試合でのチームの勝敗」だそうだ。これは前述の「13試合に登板しながらまだ10勝だから50点」というロジックと矛盾している。また、先発投手がいくらがんばっても、打線の援護がなければ勝利には繋がらない。自分の力だけではコントロールできない領域まで「ノルマ」とされては、選手は可哀想だ。

おそらく栗山監督は、本当に「大谷は50点しか値しない」とは思っていないだろう。それどころか、ここまでの活躍を心から評価・感謝しているに違いない。

ならば、なぜそれを素直に伝えてあげられないのか?人前で身内を持ち上げることを良しとしない日本古来の文化もあるだろう。しかし、いまやどの業界でも人材育成やコーチングに関しては、「脅迫・追い込み」型は時代遅れで、しっかり褒めて正当に評価し改めるべきところは客観的データや事象をもとに対策を提案してあげることが大切だと認識されつつあると思う。

栗山監督の様に進歩的に見える人物ですら「オールドスクール」的思考の持ち主なのかと思うとちょっと残念だ。上司は褒めると部下は堕落すると考え、部下は叱られているのが期待されている証と安心する、そんな風土から野球界は一日も早く脱して欲しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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