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結局、オミクロン株に新型コロナワクチンは効くのか?ファイザーとモデルナで効果や副反応に違いは?

忽那賢志感染症専門医
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

当初、オミクロン株が出現した際に「ワクチンの効果が大きく落ちる」ということが注目されました。

オミクロン株の出現から2ヶ月以上が経ち、オミクロン株に対する多くの知見が集まってきました。

オミクロン株に対してワクチンはどれくらい有効なのでしょうか?

オミクロン株に対しても2回のワクチン接種はある程度感染を防ぐ

ワクチン接種歴別の新規感染者数(1/24-1/30、厚生労働省 第71回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)
ワクチン接種歴別の新規感染者数(1/24-1/30、厚生労働省 第71回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より)

オミクロン株に対しては、ワクチンによる感染予防効果は大きく落ちることから、第6波では2回ワクチン接種を完了している人も多く感染しています。

しかし、オミクロン株では感染を防ぐ効果が全く期待できないというわけではありません。

2022年1月24日から1月30日までに感染した人の中で、ワクチン未接種の人、2回接種済みの人との10万人当たりの新規陽性者数を比べてみると、全ての世代においてワクチン未接種者の方がワクチン2回目接種済みの方よりも3倍〜20倍ほど多くなっています。

つまり、ワクチン未接種者よりは2回接種者の方が感染する頻度は低くなっています。

日本では約8割の人が2回のワクチン接種を完了しているため、感染者に占める2回ワクチン接種済みの人の割合が高くなっていますが、ワクチン未接種者と比べれば感染しにくいことは間違いありません。

海外でも、ワクチン未接種者がオミクロン株に感染する頻度は、2回ワクチン接種済みの人の2倍(ブースター接種後の3.6倍)と言われています。

ブースター接種によって感染予防効果をさらに高めることができる

2回ファイザー接種後、および3回目ブースター接種後の発症予防効果(UKHSA publications gateway number GOV-10924より)
2回ファイザー接種後、および3回目ブースター接種後の発症予防効果(UKHSA publications gateway number GOV-10924より)

例えば、ファイザーのmRNAワクチンを2回した2週間後くらいにはオミクロン株に対する発症予防効果(概ね感染予防効果と同じ)は60%ちょっとと報告されています。

当初、流行初期の新型コロナウイルスに対しては95%の発症予防効果と言われていたものが60%にまで落ちているということになります。

そして、これは時間経過とともにさらに低下し、半年ほど経つと発症予防効果はほとんど期待できなくなります(ぴえん)。

しかし、ブースター接種をすることによって発症予防効果は再び60%以上と高くなります。2回ファイザーを接種した後、3回目にファイザーを接種するよりも、モデルナを接種した方が多少発症予防効果が高くなるようです。

2回モデルナ接種後、および3回目ブースター接種後の発症予防効果(UKHSA publications gateway number GOV-10924より)
2回モデルナ接種後、および3回目ブースター接種後の発症予防効果(UKHSA publications gateway number GOV-10924より)

ちなみに、2回モデルナのmRNAワクチンを接種した人は接種直後の発症予防効果は約70%とファイザーよりも少し高くなっています。

また2回のモデルナ接種後に、3回目にファイザーを接種した場合、3回目にモデルナを接種した場合の発症予防効果は概ね変わらないようです。

いずれにせよ、ワクチンだけで感染や発症を防ぎ切ることは難しいため、ワクチン接種後もマスク着用、3密を避ける、こまめな手洗いといった基本的な感染対策は続ける必要があります。

特にマスクを外した状態での会話は感染リスクが高いため、食事の際は黙食・マスク会食を徹底するようにしましょう。

ワクチンの重症化予防効果はオミクロン株に対しても保たれている

ロサンゼルスにおけるワクチン接種歴ごとの入院率の推移(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7105e1)
ロサンゼルスにおけるワクチン接種歴ごとの入院率の推移(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7105e1)

ワクチン接種による効果には感染・発症を防ぐだけでなく、重症化を防ぐ効果もあります。

オミクロン株に対しては、ワクチン接種による重症化予防効果は保たれています。

図はロサンゼルス州におけるワクチン接種歴ごとの入院率の推移を示したものです。

オミクロン株が主流になった後も、ワクチン未接種者と比べて2回接種済みの人の入院率は低く、3回接種済みの人はそれよりもさらに低くなっています。

ワクチン未接種者と比べて、2回接種済みの人の入院リスクは5分の1、ブースター接種済みの人は23分の1にまで低くなった、と報告されています。

特に高齢者においては、2回接種から時間が経つと重症化予防効果も落ちてくることから、2回接種後でも重症化している高齢者が増えてきています。

3回目のブースター接種によって、重症化予防効果を再び高めることが重要です。

3回目の副反応はファイザーもモデルナも大きな差はない

ファイザーのmRNAワクチンの1回目、2回目、3回目接種後の副反応の頻度(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7107e1)
ファイザーのmRNAワクチンの1回目、2回目、3回目接種後の副反応の頻度(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7107e1)

モデルナのmRNAワクチンの1回目、2回目、3回目接種後の副反応の頻度(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7107e1)
モデルナのmRNAワクチンの1回目、2回目、3回目接種後の副反応の頻度(DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7107e1)

ブースター接種が進んでいない理由の一つとして副反応を懸念してモデルナを避けていることが報道されているようです。

確かに2回目の接種まではファイザーのmRNAよりもモデルナのmRNAの方が発熱、倦怠感、頭痛などの副反応が多いことが分かっていました。

では3回目の副反応についてはどうでしょうか。

3回目の副反応についてファイザーとモデルナとでの頻度の違いについての報告がアメリカから発表されました。

モデルナはブースター接種の際は投与量が半分になっていることから、2回目と比べて3回目の副反応の頻度が大きく下がっています。

それでも3回目同士を比べるとファイザーよりも少し副反応は多いようですが、大きな差ではないと思われます。

よく「ブースター接種はファイザーとモデルナのどちらが良いか?」と聞かれますが、私は「どちらでも良いのでとにかく接種することが大事」とお答えしています。

高齢者では若い人と比べると副反応が少ないこと、また心筋炎のリスクも極めて小さいことから、多少効果の高いモデルナを自分の親には勧めています。

第6波はピークを超えたようにも見えてきましたが、オミクロン株やまた別の変異株による流行はこの後も繰り返す可能性が高いと考えられます。

特に基礎疾患のある方や高齢者の方はぜひともブースター接種をご検討ください。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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