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MLB 誤審による幻の完全試合記念日に考える完全機械判定時代の到来

豊浦彰太郎Baseball Writer
2010年誤審事件、当事者の2人(写真:ロイター/アフロ)

現地時間6月2日は、幻の完全試合の記念日だ。8年前のこの日、当時タイガースのアーマンド・ガララーガ投手が9回2死まで完全試合。27人目の打者を一塁ゴロに打ち取った・・・かに見えたが、ジム・ジョイス塁審はベースカバーに入ったガララーガより打者走者ジェイソン・ドナルドの一塁到達の方が一瞬早いとの判断でセーフの判定。内野安打となって、完全試合どころか無安打無得点試合も消え去った(その後、ガララーガは気落ちせず28人目の打者を打ち取り、完封勝利は記録した)。

試合後、ジョイスはみずから誤審であったことを認め、涙ながらに謝罪した。ガララーガも怒りを露わにすることなく判定結果を受け入れた。誤審で完全試合成らずとは無念の極みだが、悲劇と心温まる話がセットになったこの未遂試合は、達成された完全試合以上に後世に語り継がれることになりそうだ。球史に残る出来事だった。

しかし、これが8年目の出来事でなかったら、タイガース側のチャレンジ(異議申し立て)&ビデオリプレイで完全試合は成立していたはずだ。また、以前はノーノーや完全試合にはアウトかセーフか、ヒットかエラーか、という際どいプレーが付き物だったが、それは過去のものになった。

これをテクノロジーの進歩による進化ととるか、ドラマの欠如と捉えるかはジェネレーションに依るのかもしれない。しかし、流れは完全に機械(でもないか)判定に傾いていることは確かだ。数日前にMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは電子スポーツ媒体「アスレチック」のケン・ローゼンタル記者とのインタビューで、ストライク / ボールの判定の機械化(電子化?)の可能性にも言及している。システムの判定精度は「予想を超える速さで日々確実に進歩している」のだそうだ。前回の東京五輪のちょい前に生まれたぼくは、出来ることなら完全に自動運転化されたクルマや審判がいなくなった野球を目にしないで人生を終えたいのだが、そういう訳には行かない可能性が高い。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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