FRBはゼロ金利政策を解除
FRBは16日のFOMCで短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げると賛成多数で決定した。セントルイス連銀のブラード総裁は反対し、利上げ幅0.5%を主張した。利上げは2018年12月以来となる。
約9兆ドルに膨らんだFRBの保有資産を減らす量的引き締め(QT)については、声明で「来る会合で削減を始めることを期待する」とした。パウエル議長は「早ければ次回5月の会合」で計画を決定する可能性を予告した。前回のQTは利上げ開始から2年近くたってから始めたが、今回はQTについても急ぐ姿勢を示した。
声明では、ロシアによるウクライナへの侵攻について、米経済への影響は極めて不透明だが、短期的にはさらなる物価上昇圧力を生み、経済活動の重荷となる可能性が高いと指摘した。
しかし、パウエル議長は会見で「米国の景気は非常に強く、金融政策引き締めに対応できるとし、リセッション(景気後退)の確率は特に高まっていない」とコメントした。
正副議長や理事、地区連銀総裁ら参加者16人がそれぞれ示す中期の経済・政策見通し(SEP)では、2022年は今回を含め計7回利上げするとの予想が中央値となった。前回予測を示した21年12月は計3回を見込んだ。
これはあくまでメンバーの予測であり、FRBの今後の予定ではない。しかし、淡々と毎回のFOMCで0.25%の利上げを今後続けるだろうというのが市場のコンセンサスとなりつつある。
量的引き締め(QT)については、5月の会合で詳細を決定し、こちらも徐々に進めることが予想される。
ロシアによるウクライナへの侵攻については、先行き不透明感は強いが、ウクライナのゼレンスキー大統領が16日のビデオ演説で、ロシアとの停戦に向けた対話について「交渉に現実味が出てきた」と述べるなど、停戦交渉への期待も強まりつつある。
ロシアによるウクライナへの侵攻によってさらなる物価上昇圧力が加わったことで、17日のイングランド銀行のMPCでも3度目の利上げが決定される予想となっている。
ECBも利上げのタイミングを計っているとみられる。
日本の国内企業物価指数が二桁に乗る可能性も出てきており、4月以降の消費者物価指数は前年2%を超すとの予想が強まってきている。
エネルギー価格の上昇を背景とした物価上昇には金融政策は効かないとの見方もあるが、少なくとも非常時対応で身動きができなくなっている日銀の異次元緩和から「異次元」との文字を外すタイミングが近づいているように思われる。