2014年の金融市場に関わる出来事
ここであらためて金融市場に関連して、2014年に起きた出来事を振り返ってみたい。
2014年1月6日にアイルランドはシンジケート団を通じ10年国債を発行した。アイルランドにとり、金融支援から脱却後はじめての国債入札であった。
1月に米国のオバマ大統領は、元イスラエル中央銀行総裁であったスタンレー・フィッシャー氏をFRB副議長に、元財務次官(国際問題担当)のラエル・ブレイナード氏をFRB理事に指名した。ジェローム・パウエル理事の任期は1月に終了するがこちらは再指名した。
1月24日に外為市場でアルゼンチン・ペソが2002年以来の大幅安となった。アルゼンチンは通貨下落を防ぐためにペソ売りドル買いの為替介入で自国通貨を買い支えてきたが、その介入の結果、外貨準備高がピークの2010年末から4割強も減少した。通貨下落を防ぐことが難しくなったとの観測が強まり、22日にはアルゼンチン中央銀行の介入が実施されず、まさにペソが狙い撃ちされたのである。
1月28日~29日のFOMCでは予想通りに量的緩和策による証券購入額を100億ドル減らし、月650億ドルにすることを全員一致で決定した。
ウクライナの問題が地政学的リスクとして欧米市場に影響を与えつつあり、日本の金融市場にも少なからず影響を与える懸念が出てきた。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのロシア系住民を保護するための軍事介入について上院に承認を求め、3月1日に上院はこれを承認した。
FRBのイエレン議長が就任後初めて開催された3月18日、19日のFOMCは、正常化に向けた道筋をさらに印象づけた格好となった。 予想されていたように毎月の債券購入額を4月からは550億ドルに減額(現状は650億ドル)することを決定した。4月からMBSの購入額を月額300億ドルから250億ドルのペースに、米国債は月額350億ドルから300億ドルのペースに減額した。
3月24日に東京証券取引所と大阪証券取引所はデリバティブ市場を統合した。3月24日以降は長期国債先物を含めて、東証のデリバティブ市場は大証のデリバティブ市場に統合された。
4月1日から消費増税がスタート。
4月3日のECB政策理事会において政策金利の据え置きを決定した。主要政策金利であるリファイナンス金利は0.25%、下限金利の中銀預金金利は0.0%、上限金利の限界貸出金利は0.75%にそれぞれ据え置かれた。ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、ECBは低インフレが長期間続くと見込んでいるとし、あまりに長期化するようなら行動する考えを示した上で、「理事会は、低インフレが過度に長期化するリスクに効果的に対処するため、責務の範囲内で、非伝統的手段も活用する決意で一致している」と発言した。
日銀金融政策決定会合後の総裁会見は、4月8日の会見からはリアルタイムで会見内容が報じられることになり、会見そのものも日経新聞のサイトなどを通じて動画配信されることになった。
4月10日にギリシャは5年債の起債で30億ユーロを調達した。中長期国債の発行は実に4年ぶりとなる。欧州の信用危機の発端となったギリシャが国債発行を再開したことで、2010年から始まった欧州の信用危機が収束してきたことを印象づけるものとなった。
4月29日から30日にかけて開催されたFOMCでは、5月から毎月の国債とMBSの購入額を現行の550億ドルから450億ドルに減額することを決めた。
5月に英国の中央銀行であるイングランド銀行は、金融政策委員会(MPC)の議事詳報を作成・公表することの是非を検討する作業部会の責任者として、ウォーシュ元米連邦準備理事会(FRB)理事を指名した。
5月30日に発表された4月の全国消費者物価指数は、コア指数が前年同月比プラス3.2%となった。4月の消費増税による影響について日銀はCPIを1.7%押し上げるとしている。つまり3.2%からその押し上げ分を除くと、プラス1.5%となる。ここがCPIのピークとなった。
6月5日のECB政策理事会では、包括的でパッケージされた追加緩和策が決定された。政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利が0.4%%に引き下げられ、注目された下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となった。マイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用される。
6月12日からブラジルでワールドカップが開催。
6月17日から18日にかけてのFOMCでは、米国債とMBSの毎月の買入額を100億ドル縮小し、350億ドルにすることを決定した。のちほど発表されたFOMC議事要旨によると、このなかでテーパリングに関し、今年10月の会合で終了させることが示唆された。
7月3日に開かれたECB政策理事会では主要な政策金利は据え置かれ、予想通りの現状維持となった。これまで毎月開催している理事会を、2015年からは6週間ごとの開催に変更するとし、理事会の「議事要旨」を公表するとした。
7月10日に3か月物の国庫短期証券の入札が実施されたが、その新発465回債が入札前にマイナス0.002%で取引が成立し、2006年の量的緩和解除後では初めてのマイナス金利の発生となった。
7月17日にウクライナ東部で乗員乗客295人を乗せたマレーシア航空機のボーイング777型機が墜落した。原因はまだはっきりしていないが、地対空ミサイルシステムによって撃墜されたのではないかとの見方も。これによりウクライナを巡る緊張はあらたな展開を迎えることとなった。
7月29~30日の会合で米国債とMBSの毎月の買入額を100億ドル縮小し250億ドルとすることを決定。
7月29日の欧州の債券市場では、ドイツの10年債利回りが一時1.109%まで低下し、2012年夏につけた1.126%を割り込み史上最低利回りを更新した。
8月14日にドイツの10年債利回りは一時1%割れとなったが、8月27日には0.9%を割り込み過去最低を更新。フランス、オーストリア、ベルギー、オランダ、フィンランド、アイルランド、イタリア、スペイン、ポルトガルの10年債利回りも過去最低を更新した。
9月2日の10年利付国債入札において利率が0.5%となり過去最低に並んだ。前回の0.5%クーポンの10年国債は2003年6月に入札された250回だけであった。
第二次安倍改造内閣が9月3日に発足した。
9月4日のECB政策理事会では現状維持との大方の市場参加者の予想に反して、利下げとともに10月からの資産買入れを決定した。主要政策金利のリファイナンス金利を過去最低の0.05%に引き下げ、上限金利の限界貸出金利を0.30%に、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%に引き下げた。ドラギ総裁は「テクニカルな調整がこれ以上は不可能な下限に到達した」とし、利下げは打ち止めとの考えを示した。そして、10月からの資産担保証券(ABS)とカバードボンドを買い入れを決定したのである。
9月16~17日に毎月の国債とMBSの購入額を現行の250億ドルから150億ドルとすることを決定。
9月17日に新発1年物TDBは、入札結果発表後の業者間取引でマイナス金利を付けた。1年物TDBがマイナス金利で取引されるのは初めて。
9月18日の住民投票により、スコットランドの英国からの独立が回避された。
9月16日に大阪取引所はLIFFEにおいて、長期国債先物取引及び東証株価指数(TOPIX)先物取引が廃止されることに伴い、当社とLIFFEとの間の移管取引を終了するとり通知を出していたが、10月1日よりLIFFEの長期国債先物の値段表示がなされなくなり、この日から日本の長期国債先物の取引は廃止された。
日本の債券先物は15日のイブニング・セッションで146円60銭まで上昇した。これまでの債券先物のザラ場の最高値は、2013年4月4日のイブニング・セッションでつけた146円44銭であったことで、ここであっさりと過去最高値を更新した。
10月23日の国庫短期証券(3か月物)の入札は最低落札価格が100円00銭0厘0毛、平均落札価格は100円00銭1厘0毛。平均落札利回りはマイナス0.0037%となり、国債の入札として初めてのマイナス金利が発生した。
10月28日、29日に開催されたFOMC後の声明において、米国債とMBSの新規の買入れを停止することを明らかにした。FRBは予定通りにテーパリングを終了させた。ただし、今後償還が来たものは再投資し、膨れ上がったバランスシートは当面維持することも明らかにした。
10月31日に日銀は金融政策決定会合で追加緩和を決定した。マネタリーベースが年間80兆円(10~20兆円追加)に相当するペースで増加するように金融調節を行う(賛成5反対4)。そのため、資産買入れを拡大し、長期国債買入れの平均残存年数を長期化する(賛成5反対4)。長期国債については保有残高が年間80兆円(約30兆円追加)に相当するベースで増加するよう買入れを行う。買入れの平均残存期間を7~10年程度に延長する(最大3年程度延長)。ETFとREITの保有残高は、それぞれ買い入れペースを年間約3兆円と年間約900億円とそれぞれこれまでの3倍に増やす。反対したのは森本、石田、佐藤、木内の4委員。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は10月31日に国内債券の保有割合を60%から35%に大幅に引き下げる一方、国内外の株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%にそれぞれ引き上げる改革案を発表した。
11月18日に安倍首相は消費増税を延期し、21日に衆院解散総選挙すると表明した。衆院選の日程は12月2日公示、14日投開票となる。安倍首相はアベノミクスの是非が最大の争点になるとの見通しを示した。2015年10月の8%から10%の消費増税は、1年半延期され2017年4月からとなる。消費増税の延期には法改正が必要となるが、この際に現行法にある「景気弾力条項」は撤廃される方向であり、そうなれば2015年10月からの消費増税の再延期もしくは撤廃は考えづらくなる。
11月28日に日本相互証券で2年国債の新発債が、マイナス0.005%で取引された。日本で2年債の利回りがマイナスとなるのは初めてである。
12月1日にドル円は2007年8月以来の119円台まで上昇した。同日のアジア時間の取引で、米原油先物が2009年7月以来の安値となる64.10ドルまで下落した。
12月1日に格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、日本の政府債務格付け、つまりは日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」へ1段階引き下げたと発表した。その理由として、財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり、デフレ圧力の下での成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性、それに伴う中期的な日本国債の利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下をムーディーズは指摘した。
12月14日の衆院選挙で自民・公明両党は法案の再可決や憲法改正の発議に必要な全議席の3分の2を上回る326議席を獲得した。自民党は291議席と事前に予想された300議席には届かなかったものの、公明党の35議席を合わせると2年前の325議席を上回った。
12月17日のFOMC後に公表された声明文では、「金融政策の運営姿勢の正常化開始において辛抱強くいられる(can be patient)と判断する」との表現が加わった。さらにこのガイダンスはゼロ金利政策を「相当な期間(considerable time)維持することが適切になるだろうとした前回の声明と合致する」とし、市場が注目していた「相当な期間」との表現を残す格好となった。
12月25日の2年国債(利率0.1%、348回)の入札は最低落札価格100円20銭0厘(最高落札利回り0.000%)、平均落札価格100円20銭7厘(平均落札利回りマイナス0.003%)となった。最低落札価格はほぼ予想通り。平均落札利回りは利付き国債の入札において初のマイナス金利となった。
12月25日に日本の10年国債の利回り(長期金利)は0.310%に低下し、2013年4月5日につけたこれまでの最低となっていた0.315%を下回り過去最低を記録した。