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STOP! コロナ離婚~妻が承諾した「不貞行為」は離婚原因になるか

竹内豊行政書士
妻から承諾を得てした「不貞行為」は離婚原因になるでしょうか。(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが拡がる中、夫婦関係が「密」になり過ぎて、妻から「浮気をしてもいいから、外に出て行って!」と言われて、本当に浮気をしてしまったら、この行為は離婚原因になるでしょうか。

「不貞行為」は離婚原因になる

民法770条1項1号は、「配偶者に不貞な行為があったとき」を離婚原因として規定しています(民法770条1項1号)

民法770条(裁判上の離婚)

1 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

これは、婚姻の効果として「夫婦間に貞操義務がある」ことを前提として、その義務違反としての不貞行為を離婚原因とする趣旨です。

「不貞行為」とは

では、何をもってして不貞行為にあたるのでしょうか。

不貞行為という概念をどのように理解するかは、多分に社会的倫理観によって左右される面があり、必ずしも確定したものではありません。

「判例」では

判例は、不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」とし、被告配偶者の自由意思にもとづく姦通(配偶者以外の異性との性交)に限定しています(最高裁判決昭和48年11月15日)。現在では、通説も判例と同様の立場に立っています。

妻が夫に不貞を許していたら

では、夫が妻の承諾のもとに不貞をしていたら、夫の行為は離婚原因としての不貞行為には該当しないでしょうか。

裁判例には、妻の承諾があった場合、夫の不貞について「(妻に対する)裏切り行為と目すべき背信性を阻却する」として、「不貞行為」には該当しないとしたものがあります(東京高等裁判所昭和37年2月26日)。ただし、この裁判では「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚自体は認めています。

妻からの事前の不貞行為の承諾は「不貞の義務違反性を減殺する」といった考え方に結び付くことにはなるかもしれません。しかし、妻が夫に不貞行為を許すという夫婦関係は、そもそも夫婦関係自体が修復できないところまで行き詰っていると言わざるをえません。そこで「現に婚姻関係が破綻しているかどうか」を重視するとすれば、事前の承諾に特別な意味を持たせるべきではないでしょう。

万一、「浮気をしてきてもいい」と妻に言われても、結婚生活を続ける意思があるのなら、そのような言葉を真に受けるべきではありません。それよりも、そのように言わしてしまったことを猛省して、夫婦関係の修復に努めるべきでしょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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