Yahoo!ニュース

【河内長野市】搾り立て日本酒が酒蔵内で飲めます!冬の恒例行事、天野酒の酒蔵見学を体験してきました。

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

冬の季節の風物詩として、全国の酒蔵で日本酒造りが行われています。河内長野には天野酒さんという日本酒の酒蔵がありますが、今まさしく酒造りの最中です。

そして恒例行事の酒蔵見学が開催されているので、昨日土曜日に参加してきました。実際にどんな内容なのかをご報告します。

酒蔵通りです。高野街道の手前から、この日の酒蔵見学に参加する人たちの姿が見えました。

見学会の時の説明で初めて気が付きましたが、酒蔵通りの天野酒さんの建物がある一角だけは電信柱がないそうです。だからこうやって撮影すると、電線のない時代劇のワンシーンのような写真が撮れるんですね。

受付で見学料1100円を払います。天野酒さんはモックルコインが使えますが、この見学会だけは現金のみなので注意してください。参加者が集まったので予定よりも若干早くスタートしました。

まず初めに、天野酒さんの会社の歴史のお話がありました。私たちは親しみを込めて「天野酒」さんと呼んでいますが、正式な会社の名前は西條合資会社さん。江戸享保年間の創業で、かつては別の名前、「三木正宗」「波之鶴」という名前の日本酒をを醸造していました。

「正宗」は中世の時代に活躍した名刀工の名前で、日本酒の名前によく使われていたこともあって、名前が平凡すぎて同社の日本酒の人気も低迷していたのだそうです。

天野山金剛寺
天野山金剛寺

今の「天野酒」というブランド名を使うようになったのには、天野山金剛寺が関係しています。

天野山金剛寺は中世の頃には宿坊があり、そこに訪問する参拝客に僧坊酒(そうぼうしゅ)と呼ばれる寺院内で醸造しているお酒をふるまっていました。

天野酒とはその僧坊酒の名前で、豊臣秀吉も愛したとされるお酒でした。これは現在の日本酒の概念を超えた非常に甘いお酒なのだそうです。

酒蔵見学会で配られた天野酒さんの小冊子
酒蔵見学会で配られた天野酒さんの小冊子

ある時、某大手酒造メーカーが天野山金剛寺さんに「天野酒」という名前を使わせてくれないかと打診がありました。お寺側は「河内長野にも日本酒を造っている会社があるので、そこに先に話しをしたい」と、西條合資会社にその旨の連絡があったそうです。

そうして、「それではうちで」ということになり、今の天野酒ブランドが生まれたというのです。

そのブランド名を変えたタイミングで、酒造りの担い手もそれまでの丹波杜氏から南部杜氏に変え、料理の味を邪魔しない飲みやすい酒の味に変えたそうです。

その結果、主に割烹などの料飲店から高い評価を受けて、周辺の酒蔵が消滅していく中、令和の今まで生き残れたというようなお話でした。

最初の説明のあと、いったん外に出て杉玉の説明などがあり、いよいよ普段は入れない醸造蔵の中に入りました。

酒造りの最初は、酒米を洗って水に漬けます。そのあと蒸すわけですが、こちらの甑(こしき)という装置を使います。

次に、こちらに蒸しあがったご飯を置いて40度程度に冷ましてから、もやしと呼ばれる黄色の種麹を満遍なく振りかけるとのこと。これは杜氏さんでないとできないほど技術を要するそうです。

麹をまぶした酒米は、この木の扉の奥の麹室で麹を作っていきます。杜氏さんたちが夜中も含めて2時間おきに麹の状態を確認して、発酵に最適な状態にする作業をしています。

中は35度もあるそうで、汗びっしょりになりながらの作業になるそうです。麹室の中に雑菌を持ち込まないようにするため、今回の見学でも中を見ることはできませんでした。

こちらは酒母(もと)と呼ばれる酵母を作る部屋なのだそうです。

ここは中を見ることが出来ました。タンクの中で酒母を作るそうです。天野酒さんでは乳酸菌を入れて速醸酛(そくじょうもと)の方法で醸造しています。

この後、もろみ(醪)のタンクの部屋に行きました。

ここで実際に発酵しているもろみを見せてもらうことが出来ました。2つのタンクで同時に作るそうで、これは片方が失敗したときでも大丈夫なように、リスク分散の意味合いもあるそうです。

また、音響メーカーのOnkyoさんとの共同研究で、クラシック音楽を鳴らすことで、発酵にどう影響するかという試みも行われており、室内に音楽が流れていました。

梯子を登って上がってみると、画像ではわかりにくいですが、タンクの中では泡立ちが見て、日本酒の香りが出ていてここで発酵しているのがわかりました。この時点ではどぶろくのようなものとのことです。

拡大すると、泡だっているのがわかります。発酵が進んでいるんですね。

またタンクに書かれている表記の説明がありました。酒は税金の対象なので非常に細かい設定があって、コンマ5桁までの非常に細かいレベル(0.01ミリリットル)まで計測して税金が計算されるそうです。

発酵が終わったもろみがこの機械で搾られて、日本酒が完成します。搾られた粕は名前の通り酒粕で、これはこれで利用価値がありますね。

こちらは別物のようになっていましたが、品評会に提出するお酒とのこと。天野酒さんは5年連続金賞を取ったこともあるそうですが、連続して受賞するのはかなり難しいことなのだそうです。

酒蔵内を移動していきます。照明が暗くて最小限になっているのは、酒への影響を考慮しているからです。

こちらでできた酒が貯蔵されているそうですが、ただ貯蔵しているだけではないそうです。

加熱(火入れ)や活性炭を入れる作業をするそうです。炭を入れることで余計な雑味を吸着させる働きがあるとのこと。

活性炭をこちらで濾して、最後にもう一度火入れをしてようやく完成するそうです。

ということで、酒造りの見学が終わったところで、いよいよお待ちかねの時間となりました。

こちらです。試飲タイムが始まりました。左の緑のボトルが純米吟醸で、真ん中がこの時期に限定販売している濁り酒、いちばん右側が本醸造とのこと。

「ぜひ3種類とも味わってください」ということだったので、その通り飲み比べてみました。

また、酒の肴も人数分用意されていました。

最初に純米吟醸酒をいただきます。説明で日本酒はうっすら黄色になっていますとの事ですが、確かに少し黄色っぽい色をしていますね。

さすが純米吟醸酒とあって、口当たりがまろやかで非常に飲みやすかったです。

次に、本醸造をいただきました。見た目は純米吟醸酒とほとんど同じですが、味が全く違います。個性の強い味が口の中に伝わりました。

最後に濁り酒です。これは見た目から違いますね。

肴の方も2種類(酒かす入り焼きねぎ味噌、きくらげ入り生姜の酒煮)あって、日本酒との相性がばっちりでした。

とても美味しかったので何回かお代わりをさせていただき、出来立ての日本酒を堪能。そして最後にお土産までいただきました。

ということで、天野酒さんの酒蔵見学が無事に終わりました。地元河内長野の酒なので私はよく飲むのですが、やはりどうやって酒が作られているのか、その工程を楽しむと、よりお酒の良さがわかって楽しめると思いました。

実際のところ日本酒の酒蔵はどんどん廃業しており、南河内地域では恐らくもう天野酒さんしかないのではという状況です。そういう意味では本当に貴重な体験が河内長野市内にいながらできました。

天野酒さんは3月まで事前予約制で見学会をしていますので、興味のあるかたは同社のホームページから申し込んでください。

今後の酒蔵見学会開催日時:2月18日、25日、3月4日 

天野酒(西條合資会社)(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市長野町12-18
電話:0721-55-1101
営業時間:10:00~17:00
定休日:1月1日
アクセス:南海・近鉄河内長野駅から徒歩5分

※記事へのご感想等ございましたら、「奥河内から情報発信」ページのプロフィール欄にSNSへのリンクがありますので、そちらからお願いします。

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事