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「え、あると思ってたんですか?」最強ギャルタレント・みちょぱの痛快な一言

ラリー遠田作家・お笑い評論家

人気タレントのYouTube進出が相次いでいる昨今、ついにバラエティ界の大物同士がタッグを組んで動き出した。平成ノブシコブシの吉村崇とモデルの「みちょぱ」こと池田美優が、YouTubeチャンネル「みちょぱ吉村のマブマブTV」を開設して、9月19日に1本目の動画を公開したのだ。テレビの世界で活躍する2人がどんな化学反応を起こすのか注目が集まっている。

テレビのバラエティ番組に出演することは、一種のスポーツのようなものだ。自分のところに来た球を正確に打ち返す技術と反射神経が求められる。

スポーツの世界で「天才」と呼ばれるアスリートがいるように、バラエティの世界にも天才がいる。「2021上半期テレビ番組出演本数・女性タレント部門ランキング」で5位にランクインしたみちょぱも、間違いなくそんな天才の1人である。

茶髪でギャルメイクのみちょぱは、テレビに出始めの頃は一種の「おバカキャラ」として扱われていた。若くて社会経験の少ないギャルがピント外れのことを言うのが面白がられていたのだ。いわば、ボケとツッコミの役割分担で言うと、最初はボケ役を担当していたことになる。

ボケには大きく分けて天然型と計算型の2種類がいるのだが、みちょぱはどちらにも当てはまらない。ギャルらしくとぼけたことを言うこともあったのだが、天然と呼べるほどの爆発力はない。だからといって、計算して面白いことを言うタイプでもない。

それでも彼女がボケ役として重宝されてきたのは、本人がなにげなく素直に発言したことがバラエティタレントとして大正解であることが多かったからだ。

この第一段階を経て、バラエティ番組への適性があることが共演者たちに認められると、第二段階としてツッコミ役を期待されるようになる。話題を振られて何か返すという「フリ→ボケ」の関係の次は、ボケを振られてツッコミを返すという「ボケ→ツッコミ」の関係に移行する。

ギャルタレントは「強気に本音を言う」というイメージがあるので、ボケだけではなくツッコミにも親和性が高い。みちょぱは期待に応えて、有吉弘行などの芸人たちが繰り出すボケに対して的確なツッコミを返していった。

「的確なツッコミ」というのは、合格点が80点のときにきっちり80点台を出すという意味ではない。むしろ、80点で十分とされている場面で、ときに120点を叩き出してしまうのが彼女の非凡なところだ。

2020年4月2日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日)で「みちょぱスゴイぞ芸人」という企画が行われたときに、それを象徴する場面が紹介されていた。

『アメトーーク!』の過去の企画で、50歳前後の男性芸人たちが「(みちょぱは自分たちのことを)男として見ることはないの?」というふうに尋ねたところ、彼女はこう返した。

「え、あると思ってたんですか?」

文句なしの一刀両断。「ないですよ」や「あるわけないでしょ」というオーソドックスな返しでも及第点は取れるところだが、みちょぱはその上を行き、男性芸人たちに自分から問い返すことで彼らの淡い期待を打ち砕いた。

このコメントは、「中年男性が、自分の年齢をわきまえずに自分がまだ若い女性に愛されるかもしれないと勘違いしているのが気持ち悪い」と思っている世の女性にとっては、この上なく痛快な一言である。

一方、当事者である中年男性にとっても、ここまでバッサリ斬られること自体に爽快感がある。誰もがうなるしかない最高のコメント芸だった。

個人的には、みちょぱが大嫌いだと公言している安田大サーカスのクロちゃんと共演するときの、本当に不快そうな冷たいリアクションが印象的だ。クロちゃんのようなクズキャラ芸人に対して、通り一遍の悲鳴を上げて不快感を示すだけなら誰でもできる。

だが、みちょぱは容赦なく心底気味が悪いという表情を見せる。そのことでクロちゃんの異常さが浮き彫りになり、クロちゃんもますます躍動してみちょぱに迫っていくことになる。一流のレスラー同士が、試合の中でお互いを高め合っていくような理想的な関係がそこにはある。

今のバラエティ番組で最前線にいる若手の女性タレントというと、第一にフワちゃんであり、第二にみちょぱである。過激発言と暴走が売りのフワちゃんを「剛」の達人女性タレントだとすると、相手に合わせて変幻自在の技を見せるみちょぱは「柔」の達人だ。

「柔よく剛を制す」の流儀で共演者を虜にするみちょぱのバラエティ対応力は、これからますます洗練されていくだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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