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不倫した女性は、なぜ不倫暴露に走るのか?

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:Paylessimages/イメージマート)

1 不倫を暴露する女性の心理とは?

 昨今、有名人の不倫が次々と話題になっています。

 そんな中、不倫が発覚したきっかけは、不倫相手がみずから週刊誌にリークしたというケースが目立ちます。

 最近では、小川彩佳アナウンサーの夫である豊田剛一郎氏の不倫騒動。これも相手の女性が、不倫の顛末を週刊誌に告白し、世間を騒がす事態になりました。

https://www.jprime.jp/articles/-/20092

 では、「悪いことだとはわかっていたんです」と言いながら、自ら週刊誌にリークし、写真を公開する女性の行動には、いったいどのような心理が働いているのでしょうか?

 私は離婚弁護士として年間300件を超える離婚相談をお受けしていますが、中には相手の不倫暴露が原因の発端となったご相談も一定数あります。

 現在の離婚理由のうち、不倫が原因の離婚は約15%を占めています。

 不倫が継続中に、相手の妻に対し、別れてくれと直接電話、メールなどでコンタクトするようなケースもあれば、不倫が破局を迎えた後に、相手に打撃を与えようと、妻や相手の勤務先に対し不倫事実を公表しトラブルとなった事案も実際にありました。

 今回はこれらの事案も参考にしつつ、なぜ不倫した女性は暴露に走るのか?という点について、離婚弁護士としての見解を述べていきたいと思います。

2 キーワードは、マウンティングと復讐

 まず、不倫した女性が暴露に走るのは、妻に対するマウンティングという一面があります。

 「私の方が愛されていた」―この事実を、妻やできれば世間に知らしめたい、という一心からなのです。

 その背景には強い「承認要求」があると言えます。

 彼は私に夢中になり、「妻とは別れて、君と結婚する」と熱く語っていたのに、妻は夫が浮気しているなど思いもせず、何も知らないで幸せそうにしていた。

 そうすると、不倫をしていた側は、彼にものすごく愛されていたのは私だということを妻に思い知らせたい、真に愛されていたのは、妻ではなく私なんだと、自慢したくなるのです。

 「本当に奥様には申し訳ないと思っています。心から謝罪します。」と言っておきながら、いかに彼が自分に夢中だったか、何度も旅行に連れて行ってくれたり、高価なプレゼントをくれたか、などと言ったりするのはその現れです。

 つまり、彼により愛されていたのは私、という妻に対するマウント取りの心理が働いているのです。相手は妻という地位にはあるけれど、実質的に女性としての魅力に優っているのは私だと声を大にして言いたくなるのです。

 さらに言えば、どうすれば、妻が一番傷つくのか本能的に知っているのです。

 他方、不倫した女性が不倫暴露に走るもう一つの理由は、当然ながら、不倫相手である男性に対する復讐心です。

 暴露した時点で男性との関係は完全に終わるでしょうが、すでに男性の心は不倫相手の女性から離れているケースがほとんどです。つまり、暴露した時にはすでに男性から別れを告げられたり、一方的に捨てられたりしているのです。

 男性の気持ちがまだ自分にあれば、女性は暴露などには走りません。

 あんなに「好きだ」、「愛してる」、「君と結婚して妻とは別れる」と言ってくれていたのに、奥さんにバレそうになったら一方的に捨てられた……。

 私はこんなに苦しんでいるのに、相手は楽しむだけ楽しんで、あっさり奥さんの所へ戻って幸せな結婚生活を満喫している……。

 つまり、女性は身も心もズタズタに傷ついているのに、男性側にはなんら痛手はない。

 そんなとき、女性に復讐心が芽生えるのです。

 不倫というのは、表に出してはいけない恋です。ひっそりと始まり、ひっそりと終わる。

 黙って身を引き、相手の幸せを祈る……。

 昔から小説や映画でも、そんな女性の姿が美しいと描かれてきました。

 ですが、現代になって、女性は気付いたのです。「それって、男性だけが得をするんじゃないの?」と。

 男性側の別れ方が悪かった場合には尚更です。

 そんな時、「男性にとって一番のダメージは何だろうか?」と女性は考えます。

 それは、社会的地位や名誉であることが多いです。こと有名人であれば尚更。

 不倫を暴露すれば、男性側の社会的なイメージは、今の世の中、壊滅的に破壊されます。

 特に週刊誌に不倫をリークしたとしても、匿名や仮名でプライバシーが守られますから、男性に痛手を与えるには最大の方法だと女性が考えるのはいわば当然とも言えることなのです。

 このように不倫の暴露に走る理由は、主として不倫相手の妻に対するマウンティングか、不倫相手に対する復讐心と言えるでしょう。

3 不倫暴露は罪に問える?

 ここで、「不倫を暴露する」という行為は、刑事上の罪になりうるのでしょうか。

 不倫を暴露する行為は、名誉棄損罪や侮辱罪といった刑事上の罪に問われる可能性があります。

(これらの犯罪は、「親告罪」にあたり、被害者が刑事告訴する必要があります。)

 ただ、暴露行為自体は罪にならない場合でも、妻側から損害賠償請求される可能性は大いにあります。

 不倫の暴露は、闇雲にしない方がいいと言えるでしょう。

 あくまで私の個人的な意見ですが、不倫を暴露して男性の社会的立場を破壊することに成功した女性がその後、幸せになることは難しい気がします。

 「因果はめぐる」と言いますが、妻から夫を略奪した女性が、いざ結婚してみれば、浮気される側になったという例は実際によくあります。

 ましてや、不倫のみならず、不倫の暴露までしたような場合には、妻や子供をはじめ、関係するかなりの人間を不幸にして迷惑をかけています。

 また、不倫した相手を社会的に破滅させたという事実を知られれば、周りは間違いなくドン引きでしょうし、そのような女性と付き合いたいという男性は少ないでしょう。

4 不倫相手に、不倫を暴露されて、自分の社会的な地位を破壊されない法律的な対処法とは?

 それでは、不倫相手に暴露されて、自分の社会的な地位を破壊されない方法はあるのでしょうか?

 そもそも、結婚をしている以上、不倫をしている時点で、かなりのリスクを背負っていると言えます。

 男女ともに、不倫相手というのは、いつ豹変するかわからず、最大の脅威になる存在であることを肝に銘じましょう。

 男性の前ではものわかりのいい顔をしていても、結婚もしてもらえず、不倫相手という二番目の地位に甘んじている女性は、ひそかに恨みを募らせているかもしれないのです。

 あえて「対策を」と言えば、当然そのようなリアクションがあることをはっきり認識しておくことです。

 相手に対する敬意を忘れずに、相手の心をケアするにはどうすべきかを真剣に考える必要があります。

 また、自己顕示欲が強く承認要求の強い女性を選ぶと、不倫を暴露される危険性が高まります。

 なお、別れる際にはお金をケチらないことも大事ですが、一方で、相手の弱みにつけこんで多額のお金を取ろうとする女性もいます。

 その場合は、早い段階で専門家に相談することが大切です。 

 仮に不倫相手との関係をお金で解決する場合には、和解合意書を交わし、お互いに不倫交際の事実を口外しないこと、和解合意書を開示しない旨の秘密保持条項を入れておくとよいと思います。

 仮に条項を破った場合の違約金も決めておくと(違約条項)、不倫暴露の抑止力になるでしょう。

5 最後に

 以上、不倫を暴露する女性の心理に対する見解、そして起こり得る問題点やその法的な解決法を述べました。

 不倫をしたのは、いくら相手から熱烈なアプローチがあったとしても、あくまで自分が決めたこと。

 相手を恨む筋合いではないですし、いわば不倫に対する覚悟が足りません。

 男性の場合はやはり家庭を大事にし、最後には妻の元に帰る人が非常に多いのです。

 つまり不倫は、女性にとって割に合わないものなのです。

 自分だけが傷つき、損をする覚悟もなく、うまくいかなかったからと言って相手に復讐するのはいかがなものでしょうか。

 それが、フェアな方法でしょうか?

 少なくとも素敵な女性とは言えないように思いますし、不倫を暴露するという行為は、自分の価値を下げることにもなりかねません。

 そこはぐっと堪えて、次の新しい恋を見つけた方がいいと思います。もちろん、独身の男性と!

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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